日系カナダ人作家ジョイ・コガワ氏によるオンタリオ州「南京大虐殺を記念する日制定法案」への支持表明

日系カナダ人作家ジョイ・コガワ氏によるオンタリオ州「南京大虐殺を記念する日制定法案」への支持表明 Japanese Canadian author Joy Kogawa supports Ontario’s Bill 79, Nanjing Massacre Commemorative Day Act

Joy Kogawa
(2009年5月15日、トロント大学での憲法9条についてのイベントで講演)

See below for Japanese translation of Joy Kogawa’s statement to support Bill 79. The original English version appeared in the Toronto Star on September 15. Please leave a comment in the comment section below to express your support to Joy and Bill 79.

幼いとき戦時日系カナダ人収容を体験し、戦後そのときの体験をもとに書いた小説 Obasan (日本語訳は『失われた祖国』として二見書房から1983年、中公文庫から1998年に出ている)でカナダの代表的作家の一人となったジョイ・コガワ氏。先日からこのブログで、オンタリオ州議会で審議されてきた「南京大虐殺を記念する日」を設ける法案(Bill79)について情報を提供してきているが、さる9月15日、コガワ氏は地元紙『トロント・スター』に、この法案への支持を表明する記事を発表した。

Why I Support the Nanjing Massacre Commemorative Day Act: Joy Kogawa
https://www.thestar.com/opinion/commentary/2017/09/15/why-i-support-the-nanjing-massacre-commemorative-day-act-joy-kogawa.html

ここに日本語訳を紹介する。(注:訳はアップ後微修正することがあります)。

★コガワ氏に賛同する人はこの投稿のコメント欄に賛同コメントをしてください。

なぜ私が「南京大虐殺を記念する日法案」を支持するか

大規模な歴史上の暴力は、その歴史が繰り返されない為に、

周知され研究されるべきである-

2017年9月15日

ジョイ・コガワ

私は、カナダで生まれた日系人として、カナダと日本の両国を愛している。しかし、第二次世界大戦中の幼年期、収容所のあったブリティッシュ・コロンビア州・スローカン市で、土曜日の夜にオッドフェローホールで上映されていたニュース映画を通じて、日本の残虐行為について知ることとなった。日本の数々の素晴らしい側面に対しての誇りを持ちながらも、今日でも私は、日本の軍隊の歴史の重みを感じ、それによって未だ苦しみ続けているアジア全域の被害者とその家族が求めているものに対しても重い気持ちを抱いている。私は、深い傷を負い続けている人々が癒され、その歴史の恥を代々受け継いでいる人々の心の安らぎを願ってやまない。私たちはお互いが傷つけられやすい状況にあることを認めることで、私たちを隔てる原因となる恐怖や憎しみを乗り越えることができると信じている。

Gently to Nagasaki”(仮訳:『長崎に優しく』)という著書を執筆しながら、1937年の南京大虐殺について学ぶこととなり、言葉を失うような資料画像を見て身動きが取れない様な感覚に陥った。大日本帝国軍は、数週間の間に、南京を占領し、数え切れない数の捕虜と市民を殺害したのだ。[1]今、サーベルや銃剣の世界を超えた時代において当時と同じような戦争への欲望に我々が直面するにあたり、過去の戦争の悲惨さを明確に記録していくことが重要だ。[2]

ここに、私がアジア系カナダ人と共にBill79“南京大虐殺を記念する日法案”を支持する10の理由を記す。

  • 1) 大規模な歴史上の暴力は、その歴史が繰り返されない為に、周知され研究されるべきである。欧州のホロコーストについては、その歴史は教えられ、人々の心に刻まれているが、アジアの歴史上の大規模な残虐行為についてはそうではない。
  • 2) 現在、排外主義・虚偽報道・歴史修正主義が横行し、ホロコーストの被害者でさえ再び平気で侮辱されてしまう時すらある時代において、Bill 79法案を通過させるような動きは、私達の人間性は、自らが蛮行を犯してしまう能力を有することを認められるかどうかにかかっている、という新たな喫緊の課題を提示する。
  • 3) 私は日系カナダ人として、日系カナダ人に対する補償を求めた長期に渡る闘いに連帯してきてくれたアジア系カナダ人コミュニティを支持する。私達日系カナダ人が支援することによって、アジア系カナダ人コミュニティと今後も良き関係を築いていく礎となる。逆に私たちが支援しなかったりや反対したりすることは、コミュニティ内での分裂と、日系カナダ人に対する敵対心につながる裏切り行為となるだろう。
  • 4) オンタリオは、多種多様な文化的背景の人々が暮らしていることで知られている。この国はお互い礼をもって接するような姿勢で高い評価を得てきているが、その模範と言えよう。Bill79を通過させることは、混乱の中で希望を渇望している世界に、更なる進化と歩むべき方向性を示すことになる。
  • 5) 真実の認識なくして、和解はあり得ない。Bill79は、南京の歴史的真実を認める努力を通じて、和解への道に繋がるだろう。この一歩を踏み出すことで、オンタリオは、歴史を修正したり、曖昧にしたり、否定したりする人達とではなく、世界の歴史学者達と共に歩むことができる。
  • 6) 実際に苦しみの中にいる人達の立場に立って、その人たちの口から真実を聞くことが、彼らの苦しみを軽減していく助けとなる。それらを否定し、過小評価しようとすれば、苦しみはさらに長引き、過去の過ちに対して更なる過ちを加えることになる。
  • 7) Bill79は、かつて罪なき日系カナダ人が日本の罪を代わりに背負わされ、苦しんできた強制収容の歴史を広く認知させることに繋がる。これは現在もこのようにスケープゴートにされている人たちがいるということを社会に知らしめる教育的手段となることであろう。
  • 8) Bill79の通過は、歴史の真実に向き合う日本の勇気ある教育者に対する激励のメッセージになる。日本の若者たちは、外国で初めて真実を知り衝撃を受ける、というのではなく、母国で自分たちの国の歴史を学ぶ機会があっていいはずだ。
  • 9) 第二次世界大戦から40年が過ぎた1988年9月22日に、カナダ政府が議会の全面的な承認の下、罪なき日系カナダ人に対する加害を認めたことは、真実と和解の勝利であった。アジアの国際的緊張感が高まっている昨今、Bill79の通過は、連帯行動になると共に、アジアの真実・和解・平和・繁栄への希望を与えるものになる。
  • 10)日系カナダ人として、日本が、世界の道義的なリーダーシップを示す国々と並び称されるようになることを願っている。Bill79の通過が、その様な方向へ拍車をかけていくことが私の願いである。

 

[1] 原文には soldiers とありそのまま訳すと「兵士」であるが、正確に言うと大量虐殺されたのは捕虜であり、筆者に確認した上で「捕虜」と訳した。

[2] 意訳であるが、筆者に確認した上で筆者の意図に一番近い表現を選んだ。

翻訳:Shoko Aizawa 翻訳協力:乗松聡子
初出:「ピースフィロソフィー」2017.10.11より許可を得て転載

http://peacephilosophy.blogspot.jp/2017/10/myanmar-invention-of-rohingya.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion7027:171012〕