9.11の新宿デモは当初、アルタ前集合となっていた。ところがいつの間にか集合場所が警察の一方的な押し付けによって、新宿中央公園に変更させられてしまった。僕は家内と二人でアルタ前に行きしばらくそこにとどまっていた。新宿駅前東口はすでに多くの人であふれていた。アルタ前ももちろん、多くの人が集まっていて、警官と小競り合いをしながら、スピーカーの若者が「今日の歩行者天国を反原発の集会とデモで塗り替えよう!」と叫んでいた。この日は大変な暑さだったが、それでも若者たちを中心に多くの人たちがスピーカーを取り巻いて熱心に聞き、また一緒に叫んでいた。
警官はすでに装甲車数台を含めてかなり多くを動員、指揮車の上から新宿警察署長と名乗るまだ40歳台ぐらいの男が居丈高にマイクで恫喝していた。「こちらは新宿警察署長である。君たちの行為は東京都公安条例違反である。直ちに旗やのぼりを下ろし、演説をやめて、新宿中央公園の方に移動しなさい。これは命令である」云々。そして驚くことに、何もしていない歩行者天国の市民を警察力を持って排除し始めたのである。
実は僕らは変更情報をいち早く知っていたので、アルタ前に行く前に一度中央公園まで行っていたのだが、その時は警官ばかりがいるだけで、集会参加者の姿はまるで見えなかったのだ。それで、やはりアルタ前なのかと思って戻ってきたのだった。多分多くの人たちも同じ思いだったろうと思う。それで、再び中央公園まで引返すことになった。今度はおよそ500人ぐらいが集まっていた。その後三々五々結集してくる人たちを合わせると、僕が確認しえた限りではおよそ1000人ぐらいだろうか?「東京東部労組」や懐かしい「日大全共闘」ののぼりや旗が目についた。上半身裸の若者がトラックの上の荷台に何人か乗って、派手な演奏と雄たけびをあげていた。太鼓の音とスピーカーからの大音量がまるでお祭りのような雰囲気を醸し出していた。僕らも先頭グループの最後尾にくっついてデモを開始した。
集まった人たちのデモは、公園を出る際に警官によっていくつかに分断されていた。交通の障害だからというのがその言い分であった。そのくせ、僕らの隊列が少しでも長く伸びると、早く歩いて隊列を詰めろなどとせかせるのである。ごますりの警察官が、上司に覚えてもらおうと大声をしきりに出し、僕らの背中を押す。体列にはかなりの数の外国人がいた。黒人が家族連れで僕の前を歩いていた。外国の報道記者らしい人たちもいた。
その前で、何事もないこのデモ隊への弾圧が繰り返された。新宿駅南口あたりでのことだ。突然デモ隊の先頭に警官が襲い掛かり、僕の目の前で二人が逮捕された。多分、多くの外国人がこれを目撃している。まさに不当逮捕の現場証人であり、これがそのまま外信で報道されることになるのだ。誰かが言っていたが、「日本にはもはや民主主義はない」のであろうか?
この日僕らは新宿駅と中央公園を三往復させられた。さすがに炎天下の長距離は疲れた。夜の部はさすがに疲れ果てて参加できなかった。ちなみにこの日、警官による不当逮捕者は12人(『東京新聞』)とも17人ともいわれている。デモの参加者は、延べで1万人になったそうだ。この力を19日に再結集させ、「反原発」運動を成功させたいと思う。
9.11反原発新宿デモに参加して
山川哲 : ちきゅう座会員
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