謹んで新春のご祝詞を申し上げます

昨年中は貴重なご意見など頂き、有難うございました。本年も引き続きご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

12月16日の閣議で、岸田内閣はそれまでの「専守防衛」という考え方を形骸化する「敵基地攻撃能力」の保持を決議いたしました。また同じ日に、2011年3月11日の大災害事故を忘れたかのように、政府諮問の有識者会議は、原発の再稼働、40年以上経た原発の稼働延長、さらには原発の新設(建て替え)までをも承認しています。

この内閣は、日本を再び「戦争国家」へと導くための「軍事大国化=国防予算の大幅増加(60兆円と言われています)」を、なんと増税で賄おうと企画しています(「1兆円強の増税が必要」12月9日、岸田表明)。

これらを世間では、「岸田内閣の三大業績(悪業)」と言っています。当然ながら、岸田政権への支持率は低迷の一途(20%台/一部の報道機関のみが持ち上げているが、それでも30%台)です。

つまり、国民の総意などは一切無視し、岸田本人の政権への未練と執着のみで盲進しているのです。その背景には、将来の活路を軍需産業へと見出そうとする産業界の要請がうかがえます、そして中国との経済競争で後れを取りそうな超軍事大国アメリカの、なりふり構わない軍事政策(バイデンは日本の軍事化を促進する「安保三文書」を「歓迎する」と声明している)があるでしょう。これらがこの岸田内閣の暴走を促進していると思われます。多くの国民が反対しているのは、最近の統計から明らかです。

多くの国民の反対を予期するがゆえに、例えば「憲法第9条」を無力化せんがための安保の大転換は、国会審議は素通りのまま、有識者会議と実務者協議を「密室で」15回やっただけ、しかも、その際の議事録は「公表の予定なし」で進んでいます。

『茶色の朝』という児童向けの文学書があることは皆さま方もすでにご承知のことでしょう。この中では、ファシズムが一般に気づかれないうちにわれわれの身辺を襲ってくるという何とも不気味な、しかも大いにありうる物語が展開されています。岸田政権の今は、まさにそれと同じだと思います。岸田自身の「影の薄さ」「個性のなさ」、党内勢力の弱さ、などの表面的な弱さに誤魔化されないようにしなければなりません。

12月11日付け『東京新聞』の「本音のコラム」に元文科省次官の前川喜平氏の「国民を洗脳する国家」という小文が掲載されていましたが、まさにそこで触れられている「世論工作」を、岸田内閣をはじめとする日本の悪辣な保守勢力が企んでいるであろうことは間違いないだろうと思います。

防衛省が世論工作の研究に着手したこと、NHKはじめ、大手マスメディアの大半が(一部の良心的な報道をするメディアがあることを無視するわけではありませんが)、このような軍国政府寄りの「危険な」世論作りに協力しています。これは「報道の死」を意味していると思います。彼らマスコミ人は自分たちの安定した生活、地位さえ守れればそれでよいのでしょうか。他国での報道姿勢に対しては容赦なくたたく日本の報道界は、すでに自己に課せられた「公正な報道」という批判的精神を喪失したのでしょうか。全く取り返しのつかない事態が進行しているようにしか思えません。日本学術会議の会員選考への政府の介入など、中立性を問われるべき教育界においてもしかりです。

「五輪」にまつわる何ともおぞましい、銭勘定に麻痺して、汚れはてた楽屋裏の「汚職・談合」と、絶えずそこに顔を出す「電通」というまぎれもない「政商」の影が、利権に胡坐をかくあさましい権力者の姿を赤裸々に示していることは今やだれの目にも明らかなはずです。それらを公正に報道しようとしないマスメディアは、自分たち自身が腐りきっていることをもっと自覚すべきではないでしょうか。

新自由主義という政策は、国内の混乱に乗じて、それらを巧みに操作し、助長することで、巨大な富と利権を一部の者たちに与えてきました。その裏側では、多くの民衆がとてつもない貧困生活にあえいでいます(南米や、アフリカでは一国民全体がその犠牲になっている国すらあります―ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』参照)。

今、日本で多くの庶民は物価高(食料品などの大幅値上げで、家計が逼迫)、福祉の切り捨て、切り下げ、などにあえいでいます。貧富の格差はますます大きくなっています。そのこと自体、非常に深刻な社会問題であり、政治課題であるはずです。

日銀の黒田総裁は「家計は値上げ受け入れ」などと吾関せずを決め込んでいました(6月6日)が、ここにきてさすがに世論の批判に抗しきれず、0.5%の利上げを決めたことは周知の事実です。

しかし、もう一つの重要な視点を見落としてはならないと思います。それは、国内での大多数の人々の困窮をよそに、空前の利益をむさぼっている企業があるということです。彼らは内部留保という形で、その利益を500兆円以上もため込んでいます(タックス・ヘイブンにどれほど貯蓄しているかは不明)。

家計の逼迫、コロナ禍、旧統一教会問題、ウクライナ紛争などで社会的動揺が愈々高まっています。この機をチャンスとして、大方の国民の関心をそちらへ向けながら、一気に日本を「戦争国家」に改造し、原発を新造し、これまでやれなかった法改正を実行する。マスコミを手なづけて、国民監視の網の目(マイナンバー制度)を整備する。

こういう事態を容認することは、われわれの自由と社会的権利とを独裁政権に売り渡すことに他ならないでしょう。

今必要なのは、「公正な」メディアを作り出すことです。その為のささやかな一歩として、小なりとはいえ自由な共同空間を目指す私たち「ちきゅう座」の活動があります。中国の戦国時代の諺に「隗より始めよ」というのがあります。何とか、皆様方のご協力、お力添えによってこの小さな芽を育て上げていただければと願っています。そして今日の腐敗堕落したメディア界に一矢を報いたいものと考えています。

以下の要望をあわせて、簡単ですが新年のご挨拶に代えさせていただきます。

*私たちの趣旨に賛同なさる方は、ぜひ積極的なご参加、ご投稿あるいは会員になっていただくか、もしくはこの活動への支持協力のカンパを賜りたいと願っております。

2023年1月元旦   ちきゅう座運営委員会