はじめに
「核廃絶と脱原発こそ日本の歴史的使命だ」と訴えられている、元駐スイス大使の村田光平氏は、フクシマ原子力災害についてこう述べられている:
「福島事故の反省が皆無になることは許すべきではありません。
世界の世論はIAEAの正体(原発推進機関)を見破りつつあります。原子力の軍事・民事利用の区別はできないことから原発推進と核兵器拡散防止は矛盾そのものであることが心ある専門家により指摘されております。
放射性廃棄物の海洋放出は国連海洋法条約違反との見解がようやく注目され出しました。」
村田光平氏がご指摘なさったように、8月3日、環境汚染関連の訴訟に数十年間携わってきた戸塚悦朗弁護士は「『国連海洋法条約』をはじめとする国際条約の締約国である日本が放射能汚染水の海洋放出計画を強行することは、条約が定める義務に違反する。陸にある毒性のまたは有害な物質の放出は「国連海洋法条約」第194条第3項で禁止されているとし、放射性物質を含む汚染水の海洋放出はこの規定に違反する」と、日本の放射能汚染水の海洋放出を批判している。〈参照記事:日本の著名な弁護士 放射能汚染水の海洋放出は国際法上の義務に違反 〉
日本が計画する放射性汚染水の海洋放出については国際社会からも批判の声があがっている。そして、8月9日には、中国の常駐国連代表団とウィーンのその他の国際機関が福島第一原発の核汚染水処理に関する、きわめて批判的なワーキング・ペーパーを核兵器不拡散条約(NPT) 第11回再検討会議の第一回準備委員会に提出している。今回は、そのワーキング・ペーパーの概要を和訳してご紹介させていただく。
* * * * * * イラストレーション: Global Times
中国の常駐国連代表団が、福島第一原発の汚染水問題についてワーキング・ペーパーを発表 ー 日本に責任ある廃水処理を求める
2023年8月9日
〈 参考にした記事:Global Times (環境時報)〉
中国の常駐国連代表団およびウィーンのその他の国際機関は、核兵器不拡散条約(NPT) 第11回再検討会議の第一回準備委員会に、日本の福島第一原発の核汚染水処理に関するワーキング・ペーパーを提出した。
ワーキング・ペーパーの主要ポイントを挙げると下記のようになる:
➊ 福島第一原発の核汚染水の処理は、地球海洋環境と公衆衛生に関わる問題である。核汚染水を人為的に海洋に放出した前例はなく、国際的に認められた処理基準もない。 国際社会は日本の放射性汚染水の海洋放出を重大視して、日本に責任ある方法で核汚染水を処理するように強く促すべきである。
➋ 日本が以前、汚染水の処分法として5つの方法を検討していたことを指摘した:それらの方法は、地中への注入、海洋への放出、蒸気放出、水素ガスとして大気中への放出、地下埋設である。しかし、日本はすべての処分方法について徹底した調査を行なわず、最もコストの低い海洋放棄の選択を主張することで、核汚染のリスクを全世界に転嫁した。
❸ 日本は汚染水を処理する浄化装置の長期的な有効性と信頼性を証明できていない。 日本が公開したデータによると、日本のALPS(多核種除去設備)によって処理された核汚染水の70%近くが、まだ排出基準に満たず、再度浄化される必要があるという。
❹ 日本は汚染水データの確実性と正確性を証明できていない。 福島原発の運営者・東電は、近年、核汚染水関連のデータの隠蔽と改竄を繰り返してきた。IAEAは、日本によって提供されたデータと情報のみに基づいて審査と評価を行い、日本の関係者が収集した僅かな数の核汚染水サンプルのみについて、研究室間の比較分析を実施した。
❺ 日本はモニタリング・プログラムの完全性を実証できなかった。東京は長期的なモニタリングのメカニズムが確立されるまで放水を始めてはならない。そして、核汚染水の放出に関するデータに異常が検出されたのなら放水を停止せねばならない。
❻ 日本は核汚染廃水と原子力発電所の通常運転による廃水の概念を混同すべきではないと強調した。
❼ 福島原発の核汚染水の処理に関するIAEAの包括的評価報告書を、汚染水投棄計画の「盾」や「青信号」として利用しないようにと日本に警告した。
❽ 中国および国際社会の懸念に充分に応え、国際法上の義務に従って責任ある核汚染水の処理をすること、投棄計画の推進を止めること、近隣諸国を含む利害関係者と充分に協議すること、科学的根拠に基づいた安全で透明な方法で核汚染水を処理すること、厳格な国際的監視に服従することを求めた。
以上
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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