猪瀬直樹と橋川文三

著者: 川端秀夫 かわばたひでお : 批評家・ちきゅう座会員
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猪瀬直樹は政治家を志しましたが、スキャンダルで失脚しました。彼の世間的評価はいまなお厳しいものがあります。しかし私は世間の思惑とは異なる評価基準を彼に関して抱いています。
橋川文三は、猪瀬を自分の後継者にしたかったということをゼミの友人から聞きました。明治大学の日本政治思想史の講座の後継者にしたかったというのです。しかし、助手であった後藤総一郎氏は各地で自主講座などを開講し活躍し実績を積んでいましたので、世間の風潮として彼が講座を引き継ぐのは自然な流れでした。橋川さんは政治力を駆使してその流れを変えさせるような人ではなかったので、後継者は後藤さんになりました。私は橋川さんの後継は猪瀬氏の方がよかったのではないかと思っています。
猪瀬さんが橋川さんをリスペクトする度合いはたいへんなもので、ある意味松本健一以上だったと言えるほどです。ファクトを押さえるということが大事だという基本中の基本を猪瀬さんは橋川さんから学びました。橋川さんは伝記の名手でしたが、猪瀬の三島由紀夫伝や太宰治伝は橋川さんの影響なくしてはありえなかった名作です。

私は読んだことがないのですが、猪瀬の修士論文は、直接橋川さんの指導を受けて書きあげられた作品で、友人が傑作だと評していました。こんなところが、私の猪瀬評価の内実です。
研究者としてまた学者としての猪瀬直樹氏の復活を心から願っています。ガンバレ、猪瀬直樹!!!

追記:猪瀬氏の修士論文を評価しているのは、猪瀬氏へのインタビューの実績もあるジャーナリストの佐藤章氏です。なお松本健一氏と猪瀬直樹氏の対談の一部を私のブログの橋川文三論で引用しています。ご参照下さい。☛https://blog.goo.ne.jp/dan5dan5/e/5f363ac1debc4dd3fd667b136f05b7bf
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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