青山森人の東チモールだより…32年目の「サンタクルスの虐殺」の日

1991年11月12日、「サンタクルスの虐殺」

1991年9月、インドネシア軍事占領をうける東チモールに、東チモール施政国の立場をとるポルトガルは議員団訪問を決定しましたが、翌月10月25日、その訪問計画は頓挫してしまいました。ポルトガルが要求していた記者(オーストリア人のジャーナリスト・ジル=ジョリフ[1945~2022年12月]の随行をインドネシアは断固拒否したからでした。外界から遮断された状況におかれていた東チモール人にとってポルトガル議員団の訪問は自分たちの窮状を国際社会に訴える千載一遇の機会であっただけに東チモール人は失望しました。

ポルトガル訪問団を巡って、訪問団に備えていた東チモールの若者たちとその動きを封じ込めようとするインドネシア当局の攻防が展開されていましたが、1991年10月28日、当時18歳の東チモール人・セバスチャン=ゴメスがインドネシア軍に殺されてしまいました。

そして迎えた1991年11月12日。セバスチャン=ゴメスの葬儀に参加した数千人の東チモール人、とくに若者たちがモタエル教会からサンタクルス墓地まで平和的な行進を敢行しました。するとインドネシア軍は、サンタクルス墓地に着いた若者たちに向けて無差別発砲をしたのです。これが世にいう「サンタクルスの虐殺」です。死者と行方不明者をあわせると五百名を超える犠牲者がでました。

軍事占領下でモタエル教会からサンタクルス墓地まで平和の行進したのは大半が若者であり犠牲者も若者でした。したがって東チモールでは「11月12日」は「国民・若者の日」と定められ祝日となっています。今年の「11月12日」は日曜日と重なりました。2023年「国民・若者の日」の追悼行事の様子を簡単に写真で追ってみましょう。

「サンタクルスの虐殺」の犠牲者を追悼するミサが7時からモタエル教会で行われている。

2023年11月12日、7時52分ごろ。

ⒸAoyama Morito.

遺影を抱いた犠牲者の遺族。

ミサが終わると、追悼式典が開かれるサンタクルス墓地まで行進をする。

遺影に写る若者たちも32年前に歩いた道をこれから歩く。

2023年11月12日、8時27分ごろ。

ⒸAoyama Morito.

行進が始まる。32年前に思いを馳せて。

2023年11月12日、8時半ごろ。

ⒸAoyama Morito.

行進が政府庁舎前にさしかかる。今年は去年の同じ時期と比べて暑さの厳しさがまだ柔らかい。湿気の高い雨季の始まりが少し遅れているようだ。

2023年11月12日、8時44分ごろ。

ⒸAoyama Morito.

行進は、独立宣言(1975年11月28日)をしたフランシスコ=シャビエル=ド=アマラルの銅像がたつ環状交差点を通過する。

2023年11月12日、8時57分ごろ。

ⒸAoyama Morito.

直線コースをあと少し歩けばサンタクルス墓地だ。ここで鼓笛隊が行進に合流した。

2023年11月12日、9時14分ごろ。

ⒸAoyama Morito.

行進はサンタクルス墓地の手前に到着。

写真の左側にポルトガル学校があり、右側にはインドネシア兵士の墓地がある。

2023年11月12日、9時24分ごろ。

ⒸAoyama Morito.

追悼式典を主宰する「11月12日」委員会のグレゴリオ=サルダーニャ会長(写真・左)とアサナミ副首相(横顔)が到着。

2023年11月12日、9時半ごろ。

ⒸAoyama Morito.

遺影を抱いた遺族や政府関係者が席に着いたあと、伝統衣装の男たちに率いられて一般の行進参加者も会場に入る。

2023年11月12日、9時45分ごろ。

ⒸAoyama Morito.

サンタクルス墓地前に設置された特設ステージで追悼式典が10時ごろ始まった。一分間の黙祷と「11月12日」委員会・会長とアサナミ副首相の挨拶が主な内容。追悼式典が形骸化してきた。

2023年11月12日、9時58分ごろ。

ⒸAoyama Morito.

追悼式典に参加した人びとがセバスチャン=ゴメスの墓などに献花をしながら式典は終了。

2023年11月12日、10時47分ごろ。

ⒸAoyama Morito.

「サンタクルスの虐殺」をフィルムに収めたイギリス人ジャーナリスト・マックス=スタール(1954年12月6日~2021年10月28日)の石碑(墓)にも多数の献花がされた。

2023年11月12日、11時7分ごろ。

ⒸAoyama Morito.

 

青山森人の東チモールだより  502号(20231113日)より

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