Jeffrey Sachs: Close the US Military Bases in Asia
このサイトでも何度も紹介している、コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が「アジアにおける米軍基地を閉鎖せよ」という記事を、Other News というインターネットニュース媒体に発表しました。ここに翻訳を紹介します。(AI翻訳に手を入れたものです。翻訳はアップ後修正することがあります。引用等するときはこの翻訳に頼らず、原文を参照した上で引用してください)@PeacePhilosophy
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Other News のサイトより |
Close the US Military Bases in Asia
https://www.other-news.info/close-the-us-military-bases-in-asia/
アジアにおける米軍基地を閉鎖せよ
ジェフリー・D・サックス
超大国にとって最善の戦略は、お互いの領域に踏み込まないことです。
ドナルド・トランプ大統領は再び、アジアにある米軍基地がアメリカにとってあまりにも高コストだと大声で不満を述べています。日韓との新たな関税交渉の一環として、トランプ氏は米軍駐留費の負担を日本と韓国に求めています。ですが、はるかに良い提案があります。基地を閉鎖し、米兵をアメリカ本国へ戻すことです。
トランプ氏は、アメリカが日本に5万人、韓国に3万人近くの兵士を駐留させていることが、両国に対する大きな奉仕であると示唆しています。しかし、これらの国々は、自国の防衛にアメリカを必要としていません。両国とも裕福な国であり、確実に自らを守る力を持っています。さらに重要なことは、東北アジアの平和は、米軍の駐留よりも、外交によって、はるかに効果的かつ低コストで実現できるという点です。
アメリカは、中国から日本を守らなければならないかのように振る舞っています。本当にそうでしょうか。過去1000年の間、そのうち約150年を除いて中国は地域の覇権国でしたが、中国が日本を侵略しようとした回数は何回でしょうか? 答えは「ゼロ」です。中国が日本を侵略しようとしたことは一度もありません。
異論があるかもしれません。1274年と1281年の二度の試み(訳者注:「元寇」のこと)はどうかと。しかし、これは事実として、モンゴルが1271年から1368年まで中国を支配していた時期に、遠征艦隊を日本に派遣したものです。両度とも、台風(日本では「神風」として知られる)と日本の沿岸防衛によって撃退されました。
一方で、日本は中国を攻撃または征服しようとした試みを何度も行っています。1592年、日本の傲慢で気まぐれな軍事指導者・豊臣秀吉は明朝中国を征服する目的で朝鮮に侵攻しましたが、1598年に彼自身が亡くなり、朝鮮すら完全に征服することはできませんでした。1894年から95年にかけては日清戦争で日本が勝利し、台湾を植民地としました。1931年には日本が中国東北部(満州)に侵攻し、満州国を建国しました。そして1937年には中国に再侵攻し、アジア太平洋地域における第二次世界大戦の発端となりました。
今日、日本が中国を侵略するなどとは誰も考えていませんし、同様に、中国が日本を侵略するという合理的な理由も、歴史的な前例もまったく存在しません。日本は中国から守ってもらうために米軍基地を必要としてはいないのです。
同じことは、中国と大韓民国(韓国)の関係にも当てはまります。過去1000年の間に、中国が朝鮮半島に侵略したこともありません。一度の例外を除いては。それは1950年末、アメリカが中国を脅かしたときのことです。中国は、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を支援するために朝鮮戦争に参戦しました。当時、マッカーサー将軍は無謀にも中国への原爆攻撃を提案していました。さらに、台湾に拠点を置く中国国民党の軍に中国本土への侵攻を支援する提案も行いました。幸いなことに、トルーマン大統領はこの提案を拒否しました。
確かに、韓国は朝鮮に対する抑止力を必要としています。しかし、それはアメリカの軍隊ではなく、中国、日本、ロシア、朝鮮、韓国を含む地域安全保障体制によって、はるかに効果的かつ説得力を持って実現できるはずです。実際には、米軍の存在が北朝鮮の核兵器開発や軍拡をあおってきたのであり、それを減らすことには寄与していません。
実のところ、東アジアにおける米軍基地は、日本や韓国を守るためではなく、アメリカの軍事力を投射するための拠点なのです。だからこそ、なおさら撤去すべきなのです。アメリカはこれらの基地が防衛目的であると主張していますが、中国や朝鮮から見れば、それは理解可能な脅威と映ります。たとえば、アメリカによる「斬首攻撃」の可能性を示唆したり、誤解や挑発が発生した場合の中国や朝鮮の反応時間を極端に短縮したりするのです。ロシアがウクライナでのNATOの存在を激しく非難したのも、まさに同じ理由によるものでした。NATOはアメリカが支援する政権転覆の作戦にしばしば介入し、ロシアの近くにミサイルシステムを配備してきました。実際、ロシアの懸念通り、NATOはウクライナ戦争に深く関与し、兵器、戦略、情報、さらにはロシア深部へのミサイル攻撃のプログラミングや追跡にまで関与しています。
ところで、トランプ氏は現在、パナマの小さな港湾施設2か所が香港企業の所有であることに執着し、「中国がアメリカの安全を脅かしている」(!)と主張して、それらの施設をアメリカ企業に売却させようとしています。一方で、アメリカは中国の国際海上輸送路の周辺に、日本、韓国、グアム、フィリピン、インド洋に至るまで巨大な米軍基地を展開しています。
超大国にとって最善の戦略は、お互いの勢力圏に干渉しないことです。控え目に言っても、中国やロシアが西半球に軍事基地を設けるべきではありません。1962年にソ連がキューバに核兵器を配備しようとしたとき、世界は核による壊滅の瀬戸際まで行きました(その詳細については、マーティン・シャーウィンの名著『ギャンブリング・ウィズ・アルマゲドン』をご参照ください)。現在のところ、中国もロシアも、自国の近隣に米軍基地があるという挑発に直面しながらも、西半球に軍事拠点を設けようとはしていません。
トランプ氏は財政の節約を模索しています。それは良いことです。なにしろ、米連邦政府は年間2兆ドル(GDPの6%以上)もの財政赤字を抱えているのですから。海外の米軍基地を閉鎖することは、その第一歩として非常に有効です。
トランプ氏は二期目の冒頭で、その方向性を示唆していましたが、共和党の議会議員たちは軍事費の削減ではなく、増額を主張しています。アメリカは約80か国に750か所の海外基地を有しており、これらを今すぐにでも閉鎖し、財政を節約し、外交に立ち返る時がとうに来ているのです。駐留国に、自国やアメリカにとって有益でもないものの費用を負担させることは、時間、外交資源、予算の大きな浪費となります。
アメリカは中国、ロシア、その他の大国に対して、こうした基本的な合意を提案すべきです。「あなた方が我々の近隣に軍事基地を置かないなら、我々もあなた方の近隣に基地を置かない」と。主要国間におけるこのような基本的な相互主義は、今後10年で数兆ドル規模の軍事費削減を実現し、さらには「終末時計」を核戦争によるアルマゲドンまで89秒という現状から大きく後退させることができるでしょう。
※この記事は筆者本人によって「Other News」に寄稿されたものです。
※ジェフリー・D・サックス教授は、コロンビア大学教授兼持続可能な開発センター所長であり、2002年から2016年までは同大学のアース・インスティテュートの所長を務めました。また、国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」の会長であり、「国連ブロードバンド委員会」の委員でもあります。これまでに3名の国連事務総長の顧問を務め、現在はアントニオ・グテーレス事務総長の下でSDG(持続可能な開発目標)の推進者として活動しています。主な著書に『A New Foreign Policy: Beyond American Exceptionalism』(2020)、『Building the New American Economy』(2017)、『The Age of Sustainable Development』(2015、潘基文と共著)などがあります。
(翻訳以上)
初出:「ピース・フィロソフィー」2025.4.21より許可を得て転載
http://peacephilosophy.blogspot.com/2025/04/jeffrey-sachs-close-us-military-bases.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion14209:250422〕