今回の衆院選では裏金議員、統一教会と密接な関係があった議員など、多くの落選中の自民党議員が復活した。ゾンビである。高市政権がゾンビたちに担がれている姿が冷静に見えていれば、この政権が長続きするはずがないことは理解できるはずだ。
思い出してほしい。高市氏が自民党総裁選で選ばれたのは、党内に強力な基盤があったり、高い政治能力があったりしたからではない。自民党は、この2,3年、衆議院選、参議院選と、逆風のなかで議席を減らし続けた。一方、参政党など右派とされる新興政党が票を伸ばした。右に翼を広げれば良いと考える党員たちは、安倍元首相の衣鉢を継ぐ姿勢をアピールしていた彼女を担ぐことに活路を見出そうとした。
今回の「圧勝」によって彼女は一時的には強い党内基盤を持てるかもしれないが、それも永続性のあるものとは思えない。今回は、彼女の奇策がたまたま当たっただけで、政権を安定的に継続する運営能力があるわけではない。結論から言えば、彼女が師匠と仰ぐ安倍晋三元首相と同じく、そう長くない先、体調不良を理由に退陣する可能性が高いのではないか。以下、その根拠を示す。
高市氏に欠けるもの-金・権力・人望
高市氏は政治家としての資質を欠く。いつの時代でもどこの世界でも人を従える(支配する)ものは「金」か「権力」のいずれかで、それに加えて「人望(人柄)」があれば盤石だろう。しかし金と権力も、その使い方を知らなければ効果的に人々に従ってはもらえない。こう考えると、高市氏はすべてに欠ける。
まず金(政治資金)だ。安倍元首相は親からの政治資金を引き継いだから、政治資金に不自由しなかった。そのこともあって、人柄は悪くなかったといわれている。高市氏にそのような金はない。選挙期間中に一部の週刊誌が報じたとおり、高市氏の事務所には政治資金規正法違反の疑いがかけられている。彼女が政治資金の確保のために苦労していることの証でもある。なお、その情報源は事務所内部からだったという。
権力もあってないようなものだ。なによりもその使い方を知らない。権力の行使には、信用できる有能なスタッフが欠かせない。しかし今回の解散も、側近たるべき党幹部や官邸幹部にさえ相談せずに決めた。こんなことでは、幹部たちは信用しなくなるのではないか。
人望に至っては、奈良県知事選での不始末と責任転嫁、総務大臣の時の総務省幹部たちへの責任転嫁などなど、自身が引き起こしたトラブルの責任を他人に押し付ける。今回の選挙期間中のNHKの党首討論会の欠席も、直前の街頭演説会で起きた身体的トラブル故と説明しながら、週刊誌に計画的だったと報じられた。すると党本部などの関係者が、彼女の体調を心配して勝手に手配したと説明を変えた。
責任転嫁する人物に誰が身を惜しんで働くだろうか。もしかすると、国会が始まれば、統一教会との関係や本人の政治資金の問題などを追及され、耐えきれなくなって「病気」と称して、退陣するかも知れない。
欠けるもの②-政策能力
選挙期間中も「強い国」「豊かな国」などのスローガンを叫ぶだけで、具体的政策についてはほとんど示していなかった。実際のところ本人も内容は曖昧なまま、選挙用に威勢の良い言葉を並べていただけだろう。アベノミクスには曲がりなりにも経済ブレインがいた。サナエノミクスなどという言葉も使われているようだが、ブレインも不在で高市氏に経済、財政を考えるだけの頭脳があるのかも怪しいとの見方が強い。
選挙演説中の「外為特会ホクホク」発言から見えるのは、高市氏が経済のイロハが分かっていないのではないかという不安である。産業界からも警戒されている。円安が進めば、外貨を保有している者には潜在的利益が生ずるという当たり前の話である。政治家にとって外国為替相場に影響を与えるような言動は、よほどのことがなければ口にしないのが常識だ。よほどのことは、大掛かりな国際的な投機によって為替相場が操作され、激しく変動をするなどの事態である。
また彼女の政治姿勢にはオリジナリテティがなく、安倍元首相の劣化コピーだけで、国際的にも周回遅れ、あるいは望ましいルートから外れていくことになりそうである。新聞報道などによれば、彼女が党内に優先政策として示したのは、国防、スパイ防止、皇室典範見直し(男系維持)など、右派的メニューばかりである。選挙では物価対策を強調していたはずだが、選挙で強く期待した分、有権者が裏切られたと感じれば、期待は急速にしぼんでいく。内閣支持率が急減していけば、議会の絶対的多数の議席をもっていようが、政権の体力は確実に削がれていく。
欠けるもの③-調整能力
これは牧原出氏が2月10日の朝日新聞で指摘していることだが、高市自民党が民主党政権の二の舞になる可能性である。1998年に成立した民主党も選挙で大勝したため、多彩な議員を抱え、党内をまとめる調整力が必要だった。にもかかわらず、鳩山氏や菅氏、そして野田元首相と、その能力を欠き、空中分解してしまった。高市氏も調整能力に乏しいという見方がある。
高市氏は、政治家になること、できれば首相になることが大学卒業後の目標になったようだ。企業や官庁で仕事をしたという経験はない。組織を動かす、あるいは組織の一員として行動して目標を実現するという行動が苦手というか、そもそもできない。とってつけたパフォーマンスが目立ち、政策目標実現のためにじっくり根回しをして実績を残したという業績はほとんどないに等しい。
維新の会の要求する議員定数の削減にも取り組む姿勢を示さなければならないだろうが、これには党内からも拒否反応が出てくるだろう。この問題でも、彼女の調整能力が試されることになる。いっそ維新の会との連立を打ち切る選択肢を採用することも可能だが、そのような判断ができるかどうか。
また選挙期間中に公約した食料品の減税に至っては、党内調整、野党との調整だけでは済まず、財務省や経済界との調整が必要となる。
おわりに-野党への注文
大敗を喫した野党、とくに立憲民主党系の政治家とその支持者たちは茫然自失の体であろうが、高市政権はいわば張子の虎でもある。故安倍元首相のコピーを演じているだけだ。政治家とくに首相は自分の健康状態を明らかにしておくべきだが、体調を口実にして公務や党務を避けるような態度は許されない。
今回の衆議院選での自民党圧勝の理由の一つとして、高市氏が「オジサンたちに虐められながらも頑張っている女性」という絵が描かれたことがあるとされる。持病による体調不良を押して「頑張っているから」と彼女に投票した有権者もいたという。
野党は国会での議論を通じて、高市氏の実像を浮かび上がらせればよい。「オジサンたちに媚びを売りながら政界を泳いでいるうちにひょっとトップに登ってしまった」という真実に近い姿を、である。そうすれば、今回は彼女(自民党)に投票した有権者も、次回の国政選挙では離れていくのではないか。
初出:「リベラル21」2026.02.23より許可を得て転送
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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