吉村信之氏の急逝を悼む

著者: 青才高志 あおさいたかし : 元同僚(元信州大学経済学部)
タグ: ,

 吉村信之さんは,2025年11月1日に急逝された。57歳であった。

 私(青才)は,東京大学経済大学院のゼミで吉村さんと会い,その後,信州大学経済学部に赴任してもらったので,同僚としてもお付き合いいただき,そして,その後(筆者の定年後)も,SGCIME(マルクス経済学の現代的課題研究会),経済理論学会等で,研究仲間として議論を重ねてきた。その吉村さんが,急にお亡くなりになった。残念というしかない。

 以下,吉村さんが極められてきた研究に関し,若干の紹介をいたしたい。

  [2025.9.29更新の

吉村 信之 (NOBUYUKI YOSHIMURA) – マイポータル – researchmap](https:// researchmap.jp/read0073264)を参照されたい。

このマイポータルには,大学院時代の(1997年)に公表したものから,2022年3月に公表したものまで数多くの論文が挙げられている。以下の吉村さんの研究紹介は,それを参照しつつ行うことにする。]

吉村さんの主要な研究テーマは,博士論文(東京大学)の表題「恐慌と信用」からもわかるように,信用論,恐慌論(景気循環論)であった。

そして,まず第一に,その信用論,恐慌論,信用恐慌論を,マルクスとの関連において,『資本論』形成史を踏まえて考察する点に吉村説の特徴がある。公表順では,以下の論文を公表されている。[掲載誌等に関しては,前述した「マイポータル」を参照されたい。]

①「物神性と原理論の方法―いわゆる『利子生み資本』に関連して―」(1999年)

②「為替と恐慌」(1999年)

③「信用恐慌論の方法と課題」(2003年)

④「為替論の回顧と展望」(2005年)

⑤「貨幣取扱業務の再検討―信用と恐慌をめぐって」(2005年 )

⑥「信用・信用恐慌論の研究潮流」(2014年)

⑦「『資本論』における「発生論 Genetik」と経済学の方法」(2022年)

吉村説の第二の特徴として,理論が,信用,国際金融,景気循環の現実を踏まえて構築されている,という点がある。

現実分析の論文としては,次のものが挙げられる。

⑧「『金本位制のゲームのルール』と19世紀イギリスの循環性恐慌――その理論的意義」(2003年)

⑨「中央銀行の生成と国内金流出の位相――19世紀イギリスの発券集中によせて――」(2004年)

⑩「世界貨幣と国際通貨――『ドル本位制』の歴史的位相」(2004年)

⑪「郵政民営化と金融排除―金融の自由化・グローバル化に関連して―」(2005年)

⑫「『カジノ資本主義』と情報化」(2007年)

⑬「資本主義経済の歴史的展開―戦間期までの概観」(2010年,2013年,2017年)

⑭「『金融化』の現代的諸問題とマルクス経済学」(2019年)

 

恐慌は,為替の悪化(暴落),金等の準備の流失に媒介されていた。それ故に,吉村さんの筆は,②④の為替論,⑧⑨⑩の国際金融の分析に,歩を進めることになった。私のゼミ生で,直近年度(1年間)の成績が優秀であるということで,表彰された人が,「吉村先生の国際金融論(2単位)は面白い」と言っていたのを思い出す。

 吉村さんは,研究の蓄積を踏まえ,さらなる進展を目指されていただけに,吉村さんが突然の死に見舞われたことは,残念でならない。 2026.3.13

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
〔opinion14724:260314〕