はじめに
ドイツの哲学者ハーバーマスの死去がマスコミやネットで伝えられている。小生はハーバーマスやその周辺の「知識人」達については全く知らないし、関心もなかった。名前をチラチラ見たりしていただけである。唯一、2023年11月13日に発表された「連帯の原則」と称される声明を読んだだけである。この声明を読んだ時、小生は声明に対して激しい怒りを覚えた。その怒りをここで述べておきたい。
言うまでもないが、この声明(ハーバーマスその他3人による)は、2023年10月7日にハマスがイスラエルを攻撃し1,100人以上が殺害されて、イスラエルがガザへの大規模爆撃・侵攻を行っているさなかに出されたものである。(声明は以下による)
https://normativeorders.net/en/news/principles-of-solidarity-a-statement
この声明は広範な論議を巻き起こしたとされているが、小生はそれらを読んでいないのでほとんど知らない。以下の小生の怒りも、それら論争のなかでとっくに論じられているのであろうが、ハーバーマスの死で思い起こしたので掲載させていただきたい。なぜなら、この問題は言うまでもないが、ガザ大虐殺と現在進行しているトランプとネタニエフによるイラン攻撃に直結しているからだ。問題の本質はユダヤ人問題だ。
なお声明を読んだのみで、ハーバーマスの哲学全体について何か言うのは誤りだという批判は当然あり得る。だが重大な物事が生じた時、それをどのように把握し向き合うかによってその哲学の真価が問われるだろう。
■長期にわたるシオニスト・イスラエルの暴虐に眼をつぶる
ハーバーマス他3人のこの声明は、ハマスの攻撃とその残虐性のみを非難し、それと比較できないほどのイスラエルの残虐性については何も述べていない(ここでいう残虐性とは、声明発表時にすでにガザ住民へのジェノサイドという非難がでていたが、それだけのことを言うのではない。以下のようにイスラエル建国以前からシオニスト・イスラエルが示して来た残虐性をいっている)。1930年代の「アラブの反乱」から、その後のイスラエル建国時のナクバ、それ以降現在に至るまで、約1世紀にわたってパレスチナ住民はシオニストの暴力・脅迫によって大量の犠牲者を生んできた。この長期にわたるシオニスト・イスラエルの冷酷無比、残虐非道については目をつぶっている。
10月7日以前の、直近の状況のみを見ても、ガザ住民は「天井のない監獄」に押し込められ、度重なるイスラエル軍の侵攻で多くが殺されていたのだ。10月7日のハマスの攻撃から話を始めても無意味であること、その程度のことが理解できなかったのであろうか。
声明はイスラエルに対する「連帯」を「原則」として示している。だが、イスラエルをめぐるこのような常識をもってすれば、少なくとも連帯を示すことなどできるわけがなかったのだ。常識を無視したというしかない。所詮はメルケルやショルツ程度の認識にとどまっていたのだろう。それはドイツのいわゆる石頭、「カテキズム」である。
■イスラエル批判を即反ユダヤ主義とする悪質な混同・錯誤――ドイツの石頭・カテキズム――
また、声明はイスラエルを批判・非難する声や行動を、いわゆる「反ユダヤ主義」と混同させて非難し、イスラエルによるジェノサイドを指摘することを非難している。
ここにはハーバーマスの哲学なるものがいかに底の浅いものであるか、ホロコーストに対する反省がいかに表層的なものであるか、それが明確に示されている。イスラエルを批判することは「反ユダヤ主義」ではない。声明を読むかぎり、ハーバーマスはイスラエル支配層への批判と反ユダヤ主義を区分することを知らない。混同させている。またユダヤ人とシオニストを区分することを知らない。ユダヤ教徒とシオニストを区分することも知らない。(ちなみにドイツの「カテキズム」によれば、「反シオニズムは反ユダヤ主義」であるそうだ。愚かそのものである。イスラエルに操られている)
イスラエルへの批判と反ユダヤ主義を同じものとして混同させ、それによってイスラエルの犯罪を隠蔽するのは、イスラエル支配層の常道である。従って、彼のホロコーストへの反省なるものは、表層的で真の反省には届かず、シオニストにやすやすと政治的に利用されるものでしかなかった。
■ユダヤ人問題がパレスチナ・中東へ移植され移動された
イスラエル建国によって、パレスチナ・中東においては数知れない惨劇が惹き起こされてきた。それは、この地域へのユダヤ人問題の移植、移動が惹き起こして来たものだ。ユダヤ人問題を移植することによって、ユダヤ人問題はヨーロッパ、ロシアでは希薄化した。つまり、ホロコースト、ポグロムのつけをパレスチナ・中東に押し付け、払わせているのだ。ここにヨーロッパ・アメリカとロシアの最大の欺瞞がある。この許されざる欺瞞への抗議と反撃に対して、「反ユダヤ主義」なる悪罵をなげつけても、とっくにその虚偽性は明らかになっている。
■ホロコースト・ポグロムのツケを払うべきはヨーロッパ・アメリカとロシアだ
敵対する双方に残虐行為が見られても、それをひきおこす大本は何なのか?ユダヤ人問題のツケを払うべきはヨーロッパ・アメリカとロシアだなのだ。だが彼らはツケを払うことなく、パレスチナ・中東におしつけた。それが惨劇を生む問題の大本だ。
なによりも、この欺瞞と虚偽性を認識していない点にハーバーマスの哲学なるものの虚偽性があらわになっている。(「ヨーロッパ市民」の「公共圏」という、仲間内の閉ざされた枠内での議論に終始したからなのか?ヨーロッパ中心主義ひいては未だ拭えない植民地・人種差別主義によるものなのか?なおイスラエルは周知のごとく現代の植民地主義国家だ。ドイツはこの植民地国家を守ることを国是としている。ハーバーマスのイスラエルとの「連帯」もその一環だ)
11月13日の声明によって、それが明々白々になり、彼の哲学の重大な欠落・盲点と由々しき限界が露呈することとなった。そういうべきだ。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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