■ 新聞の報道によれば11月28日に参院憲法審査会は2007年の設置以来はじめて審議を行ったと伝えられる。安倍内閣の強行採決によって成立した国民投票法案で設置が決まったのが憲法審査会。しかし、憲法審査会は民主党の反対などもあって参院では委員会の構成ができずに休止状態だった。民主党政権の公約反故の歩みの中で、自民党や公明党へのすり寄りの中で憲法審査会は形成され、審議がはじまったというわけである。新聞の報道によると委員には「大震災の復興が優先である」という声も強かったとおあるが、改憲の意向の強い参院民主党の声として江田五月の発言が紹介されていた。彼は創圏論と言う名の改憲論の立場にあることは以前から知られているが民主党のそういう傾向を代表しているといえる。
■ 国民投票法案の制定時に僕らは自分たちの立場を何度も発表してきた。憲法の改正などの意向が国会での憲法審査会などの議論を経て三分の二以上の賛成を得た法案(憲法改正案)として出来、それが国民投票にかけられ決まるという方法が否定される。これが基本である。憲法は国民の意志であり、国民が主体となった憲法制定権力によって成り立つべきものである。日本の憲法は国民の意志(憲法制定権力)のないまま国家で制定されたものである。国民の意志を代表する議会の開設に対抗して、国家官僚のために憲法はできたといわれる。天皇の官僚のための憲法である。これは官僚制民主主義の基盤になったものであり、間接民主主義の構造の中にあるのもそのためである。明治憲法(大日本帝国憲法)の改正として成立して戦後の憲法もそれを引き継いでいる。そうであれば、憲法の改正は国民の意志の発現としてまずなければならない。国民の憲法改正を要求する運動(直接民主主義)が多数を占めたときに、はじめてその発案を得るべきものであり、現在の議会で発案すべきものではない。国民の自己決定権が基盤になるべきものである。その意味では順序が逆なのである。国民が改正を欲していないのに何故体制や権力は憲法(とりわけ9条)の改正を急ぐか。それは間接民主主義の色濃い現行の憲法の中で国民の意志(直接民主主義あるいは自己決定権)が9条には反映されているからだ。戦争に対する国民の意志が強く反映しているからだ。憲法の中で9条が問題になってきたのはそうであるし、日本の憲法に構造的問題があると自覚してきた人も9条は別だと考えてきた根拠である。憲法をめぐる動向に注視し、それに対する考えを深めていきたいものである。
<9条改憲阻止の会 2011年11月29日 連帯・共同ニュース第194号>
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