原告の無表情は不安の表れに他ならない
-脱原発テント裁判第5回公判傍聴記
2月10日、前日の東京都知事選に左右されることなく、脱原発―再稼働阻止にむけて意気軒昂として地裁前集会を行った後、14時から第5回口頭弁論が東京地裁103号法廷で始まった。公判前に双葉町から来ているKさんと住民抜きの中間処分場決定の理不尽さについて話しながら、入廷してきた経産省側法定代理人のあまりの<無表情>にこの裁判の本質を感じ取った。すなわち国側には福島原発事故に抗弁するだけの自信もなく、代理人の後ろにいるのが東電、財界、自民党という最も人々から嫌われている存在であるがゆえに、のっぺらぼうの無表情でいるしかないのである。それに引き替えテント広場の弁護人は老若男女ふてぶてしさすら感じるほど生き生きとしていた。
今回は、訴状朗読―求釈明ときていわゆる冒頭陳述に当たるものであった。被告人とされた正清さんは高濃度の汚染水に代表されるように福島原発事故は終息していないこと、それに抗議し再稼働を許さないためのテント広場の活動状況について陳述した。続いて淵上さんから原発をベース電源とする「エネルギー基本計画」批判と、いわゆる「安全規制基準」が結局は地方自治体に責任を負わせるものであること、こうした再稼働の動きに対してテント広場は活動しているのであり、国有地問題に矮小化することは許されないと力強く陳述した。河合弁護士からは福島原発事故の時に出された「緊急事態宣言」はいまだ解除されておらず、汚染水を始め、同時多発事故という根本的問題になんら答えていないことが陳述された。
弁護団からは次々と求釈明について経産省側が応えていないことについて陳述があった。第1には3つのテントの特徴と独自性があるのに、経産省側はテントをいっしょくたんにとして、2人だけが被告として訴えられていることの根拠が不明ということである。第2に第2回公判で明らかになったように、経産省が証拠として提出した写真が人違いであったことの証拠として、監視カメラ映像開示請求になんら答えていないことである。さらに弁護側の現場検証申し立てについて、経産省側は裁判所に却下要請をしているなど、この裁判に対してなんら証拠を示さないのである。次回公判で弁護側は3つのテントの独自性や、経産省側が受け取りを拒否している「国有財産使用許可申請書」などについて具体的に展開する予定である。
終盤、経産省側代理人がやおら立ち上がり「公判は1年もたっているので、早期結審してほしい。」と申し立てた。あきれた傍聴席から「証拠も開示しないで何を言っているのか!」と抗議の声が高まる中で、裁判長は逃げるように立ち去ったのである。今回も神経質な裁判長は拍手が起こるたびにいらいらし、「発言禁止、厳重注意」を繰り返していたことを付け加えておきたい。 (T.O)