2014年11月17日のBBCオンラインニュース「日本経済:意外な景気後退へと陥る」を抄訳して、ご紹介させて戴きます。この記事の重要なポイントである、「なぜアベノミクスは失敗したのか?」の筆者は、BBCの東京特派員、ルパート・ウィングフィールド-ヘイズ氏です。
彼は、日本国民の80%を占める、株を所有していない人々、すなわち「株価上昇で大儲けすること」などには全く関わりのない生活を送っている一般民衆の立場を理解しながら、安部政権の経済政策の失敗を分析しています。
原文へのリンクです:
http://www.bbc.co.uk/news/business-30077122
BBCオンラインニュース(2014年11月17日)
日本経済:意外な景気後退へと陥る
(抄訳:グローガー理恵)
日本経済の意外な2四半期連続の縮小は、世界第3位の経済大国をテクニカル・リセッションに留めることになった。
GDP(国内総生産)の上昇2.1%との予測に対し、7月~9月期のGDPは、年率換算で1.6%下落した。
これは、2011年3月の大震災と津波以来最大の下落となった、第2四半期の(改訂された値)7.3%縮小の後に起こったことである。
消費税の引き上げの遅れ
経済学者たちは、この弱い経済データが消費増税を遅らせるかもしれないと述べた。
消費税引き上げは、前政権によって2012年に、先進国間において最も高い日本の膨大な公的債務を抑えるために制定された。
4月には、5%から8%への第一段階の消費税引き上げがあり、第2四半期の成長率に打撃を与え、それが未だに尾を引いており経済に影響を及ぼしているようである。
経済は、前の四半期から第3四半期において0.4%縮小した。
データは、また、経済のおよそ60%を占める民間消費の伸びが、期待されたよりもはるかに弱かったことを示している。
「日本経済は景気後退にあり、これで、最後の四半期の3期にわたって日本経済が縮小したことになる」と、Moody’s Analyticsのシニア・エコノミストは述べた。
なぜアベノミクスは失敗したのか?
ルパート・ウィングフィールド-ヘイズ氏(BBC東京特派員)による分析:
2013年の春、安部晋三首相は、所謂アベノミクスとして知られるようになった意欲的な経済成長戦略に着手した。
その目標は、日本経済を20年間のデフレーションから引きずり出して成長の活路へと戻すことであった。何十億ドルもの金額が、景気刺激対策として注ぎ込まれた。日本銀行は、さらにもっと大規模な散財へと進み、何千億ドルもの新紙幣を刷って、それを使って国債を購入した。
これには2つの影響がある。まず第一番の影響は円価を押し下げ、日本の輸出を安くすることである。二番目は、投資者を国債から押し出し、株式へと駆り立てることである。東京株式市場は急上昇した。2013年半ばには、日本経済が堅実な成長へと戻ったように思われた。
そして、2014年の早期、安部政権は考えたあげくの一六勝負をやった。彼は、経済が成長している状況に伴い、20年近くの期間における初めての税金引き上げのリスクを冒したのだった。消費税を5%から8%へと引き上げることだった。税金の引き上げは、日本の国家財政の大穴を塞ぐために緊急に必要とされた。
しかし、この賭けはうまくいかなかった。日本の消費者たちは消費支出をやめ、日本経済は景気後退へと戻った。
なぜだろうか? 円の低下が日本の輸出者に金銭の思いがけない儲けをもたらした。しかし、輸出者は自分たちの従業員達の賃金を上げる代わりに、利潤を押さえておいて、それを活かして使うようなことはしなかった。
膨大な株式市場の上昇は、少人数の金持ちだけに利益をもたらしたのみであった。日本国民の80%は、何の株も所有していない。それどころか、彼らの収入は停滞しているか下がっているかのどちらかであり、税金の引き上げが、彼らをなおさら貧しく感じさせているのだ。
以上
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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