Bloombergニュース:フクシマの凍土遮水壁は請負業者にとって「金のなる木」

政府は、フクシマ汚染水漏洩問題の対処策として、「凍土遮水壁」の設置および「汚染水浄化設備」の増設に国費を投入すると発表しました。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130903/plc13090309160006-n1.htm

「凍土遮水壁」に関して、Bloombergオンラインニュースに非常に興味深い記事が掲載されています。記事は専門家の意見を基に展開され、鹿島建設の提案である「凍土壁」が提示しているクリィティカルな問題点を明示していっています。そして、果たして、これが差し迫った緊急事態に対するベスト・ソリューションなのであろうかとの大きな疑問を私たちに投げかけています。

簡単に「凍土壁」に関わる重要な問題点を挙げてみますと:

1) 2015年までにならないと作業が完了しない。ー私のコメント:その間、汚染水を垂れ流したままにしていくのか?

2)政府は、2015年の7月から始まって6年間、土を凍らせ続けておくことができると予測している。ー私のコメント : (凍土壁が汚染水漏洩防止のために機能したと仮定して… )たったの6年間の措置のみで、その後はどうするというのか?フクシマでのありとあらゆるクリーンアップ作業は、少なくともあと40年はかかると謂われ、その間汚染水は止めなく生産されていくのに、この「凍土壁」も相変わらずの「その場限りの対策」ではないか。

3) 「冷却剤を凍結温度以下に(常に )維持するために必要なエネルギー量だけでも浪費である。」また、原子力発電所事故収束対応室で働く柴田寛文氏は、このプロジェクトのために必要とされるエネルギー量はまだ未明であると語った。
検討されている、フクシマ原発のプロジェクトは、スケールからしても9.8メガワットの電力容量を(常に )維持していくことを必要とされることになるであろうと謂う。
ブラウン氏は「このためには、途方もなく巨大な冷凍施設と、莫大なスケールの電源装置が必要となってくる」と、電子メールの中で述べている。

ー私のコメント: 凍土壁を常に凍らせておくためには、途方もなく莫大な電力量が必要である。それにもかかわらず担当者は、そのためにどれだけの電力量を必要とするのか探求していないという状態である。充分な検討/調査なしで、そういったプロジェクトにOKを出すとは何と無責任な態度だろうか。

4) 現在は一般に、トンネル建設やその他のプロジェクトにおいて一時的な補強工事に使われている。ー私のコメント: 凍土壁は一時的な措置であり長期的な解決策ではない。
例えば、漏洩水問題のエキスパートは埋立地に住むオランダ人である。政府は、どうしてもっと心を開いて海外の英知を求めていこうとしないのだろうか?

原文へのリンクです。:

http://www.bloomberg.com/news/2013-08-13/japan-studies-ice-wall-to-halt-radioactive-water-leaks.htm

日本: 放射能汚染水を止めるための凍土遮水壁を検討

Bloombergオンラインニュース-2013年8月 13日

筆者: ジェイコブ・エイデルマン(Jacob Adelman)&チサキ・ワタナベ(Chisaki Watanabe)

( 抄訳: グローガー理恵)

土中を貫いた管を通っていく冷凍された冷却剤によって、土を事実上、永久凍土に変える。この技術が最初に用いられたのは1860年代であり、その目的は炭坑を補強するためであった。それから150年経った今、これがフクシマ核大災害を収束させるための最新のアイデアとなっている。

毎日、セシウムや骨癌を誘発するストロンチウム、トリチウムの放射性粒子が混合された、少なくとも300トンの汚染水が、日本の機能不可能となったフクシマ原発から太平洋へと流出されている。(放射能による )健康障害の拡散を封じ込めようとする計画は、氷でできた地下コンテインメントを建設することである。

2011年の原子力大災害によって放射能汚染された水を制しようとした試みが何度も失敗した後、東京電力は、先週、安部晋三首相によって初めて「喫緊の課題」と呼ばれた、汚染水問題の対処法の選択肢に尽きてきた。汚染水漏出の対処は緊急事態であると原子力規制委員会は述べた。日本の納税者たちは既に、クリーンアップのコスト、推定して11兆円(1,120億ドル)という金額と真っ向に向き合わされている。

アラスカをベースにした凍土コントラクターであるアークティック・ファウンデーション有限会社(Arctic Foundations Inc.)のリポートによると、地下凍土壁は以前、放射線をブロックするために、テネシー州のオークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory)の核兵器のためのプルトニウムを生産した現場跡で実験として使われたことがあると謂うことである。

「他のどの方法もうまくいかない時、たったひとつ残されたオプションがこれだけになるということです」と、ニュージャージー(New Jersey)州をベースにした凍土プロジェクトを専門とするコントラクターであるモアトレンチ-ロッカウェイ(Moretrench-Rockaway)の副社長、ジョセフ・ソプコ(Joseph Sopko)氏は語る。
長い待ち期間

フクシマにおける、この計画には欠陥がある。: 2015年までに作業が完了しないことと、未だにコストの見積りがないことである。日本の原子力発電所事故収束対応室によれば、目論まれた凍土壁は地下1.4キロメーター(0.9マイル )までに及び、世界で最も長い一続きの人工的凍土となる。

福島第一原発の主要な建設者であった鹿島建設株式会社は、このプロジェクトの実効可能性の調査を2014年の3月31日までに完了するようにとの期限を与えられている。

2011年3月11日に発生した地震・津波で冷却システムの電力源が破壊された後、作業員たちが原子炉(複数 )に何トンもの水を注入し出したとき、高濃度に汚染された水がフクシマ現場にある建屋の地下に蓄積し始めていた。

それから、地下水が地下に漏れ込み始め、放射能汚染水の量が増えていった。同様に今度は、放射能汚染水が地下水へとしみ込んでいったため、近くの監視井戸において放射線の急上昇をもたらすことなった。経済産業省によれば、毎日、フクシマ原発から少なくとも300トンの放射能汚染された地下水が海洋へ流入していると考えられる。

凍土壁

①鹿島建設の提案が、エンジニアに要求することは; 垂直管を、それぞれ約1メートルの間隔で、建屋を囲む周辺の地中に20メートルから40メートルの深さまで挿入することである。

②冷却剤は冷凍装置から垂直管に循環され、そこで、凍土遮蔽壁を形成することにより、汚染水を遮蔽壁内に保ち、近くの丘陵から流れ落ちてくる淡水が入り込むのを防ぐことになっている。

③政府は、2015年の7月から始まって6年間、土を凍らせ続けておくことができると予測している。

「我々は、凍土遮蔽壁が山地からの地下水の流れや建屋内からの汚染水漏出をせき止めるものと考えてている。」と、資源エネルギー庁原子力発電所事故収束対応室の新川達也室長は8月 7日の記者会見で述べた。
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どのようにして「凍土壁」が機能するのか(How the ‘ice wall’ could work)

左のグーグル写真: オレンジ色の長方形の枠が凍土遮蔽壁(ice wall)

( 右の)上図説明:

グレイ色の建物=冷凍施設(Refrigeration plant)

  1. 1. 損壊された原子炉(複数)の周囲の地中に掘られた立坑 (Shafts drilled into ground around perimeter of damaged reactors.)

2. 垂直管を凍結 (Freeze pipes)

3. -20度から-40度に冷やされた冷却剤が垂直管に注入され循環される(Coolant water chilled to -20 to -40 degrees pumped in and circulated)

4. 27メートルの深さがある凍土壁を6~8 週間内に作りだすことになり、これにより地下水の流れを防ぐことになる(This would create a wall of frozen soil 90ft(27 metres) deep in 6-8 weeks preventing groundwater flow)

(ソース: 東電/Reuters ) &BBCニュースhttp://www.bbc.co.uk/news/world-asia-23940214

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まだ政府当局はこのプロジェクトの費用見積りを公表していない

チェルノブイリとフクシマにおける原子力事故を調査研究した、カリフォルニアを拠点地としているエネルギー&防衛コンサルタントのリチャード・マックフェーソン(Richard McPherson)氏は述べた。:『凍土する案は、請負業者にとって「金のなる木」以外の何ものでもない。』「冷却剤を凍結温度以下に(常に )維持するために必要なエネルギー量だけでも浪費である。」

鹿島建設は、我々に対する電子メールの返答の中で、鹿島建設はまだプロジェクト実現可能性の検討を始めていないのでと述べ、プロジェクトの費用とその他の詳細事項に関してコメントすることを断ってきた。また、原子力発電所事故収束対応室で働く柴田寛文氏は、このプロジェクトのために必要とされるエネルギー量はまだ未明であると語った。

凍土プロジェクトを研究するテキサスの地質工学コンサルタントであるベーント・ブラウン(Bernd Braun)氏によれば、検討されている、フクシマ原発のプロジェクトは、スケールからしても9.8メガワットの電力容量を(常に )維持していくことを必要とされることになるであろうと謂う。 Bloombergの算定によれば、これは、およそ3,300の日本人世帯を充分に電力供給していける電力容量である。更にブラウン氏は「このためには、途方もなく巨大な冷凍施設と、莫大なスケールの電源装置が必要となってくる」と、電子メールの中で述べている。

地下鉄トンネル

人工的凍土の技術は19世紀後半にドイツ人の科学者、F.H.プェッチ(Poetsch)によって考案された。プェッチは、フランス人のフェルディノン・カレー(Ferdinand Carré)が、当時、発明したばかりであった、水とアンモニアとの化学反応を使い凍結温度に至らせる装置を用いて、食塩溶液を冷却させた。

現在は一般に、トンネル建設やその他のプロジェクトにおいて一時的な補強工事に使われている。例えば、ソプコ氏が、かつて取り組んだことのある、ニューヨークの二番街(the Second Avenue)の地下鉄やマイアミ港のトンネル建設などのプロジェクトにも使われた。

放射能汚染水の海洋流入せき止め対策のために、もっと多額の国費を投入するとの政府の申し出の一部として、当局は鹿島建設の提案を受け入れることを決定した。

「この凍土壁建設は、世界に例を見ない大規模なものである。それゆえ、国としても一歩前に出て支援する必要がある」と菅義偉官房長官 は記者会見で述べた。

以上

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye2377:1300906〕