10月8日バイエルン、ヘッセン両州で州議会選挙が行われ、同日21時での選挙結果をARD Tagesschau (タゲスショー)が報じた。
CSU(キリスト教社会主義同盟)はバイエルン州選挙で勝ちはしたが、歴史的に低い37.0%の得票だった(2018年は37.2%)。AfD(もう一つのドイツ)は記録的な結果を達成し、FW(自由な選挙人)、 Grün(緑の党)にわずかに先んじるか。FDP(自由党)は州議会に入ることができない。(CSU37.0 -0.2、 Grün 14.4 -3.2、 FW15.8 +4.2、 AfD14.6 +4.4 、SPD 8.5 -1.3、 FDP 3.0 -1.3)
マルクス・ゼーダー首相の党(CSU・FD)は有権者の過半数の信頼を享受し続けているが、ARDの調査によれば経済政策と国内安全保障の分野での不満により、大きな損失が見られた。
AfDはバイエルン州でのこれまでの最高の結果を得た。2018年には10.2%だったが、とりわけ移民の問題で、経済発展・国内安全保障の問題でもポイントを獲得した。
FWは15.8%。これは党のこれまでで最も良い。州政府で明らかに有利になりうる選挙結果と言える。この結果は少なくとも部分的には党首フベルト・アイヴァンガーに負っているだろう。アンケートによれば彼はゼーダーと同じぐらいの人気がある。学校時代の反ユダヤ主義パンフレット事件は、彼には重荷になっていないようだ。彼の支持者の多くは、アイヴァンガーがそのパンフレットを書いていないと信じている。
- Die Anti-Anpel-Rhetorik(反信号連合Anti SPD-Grün-FDPというレトリック)はうまく機能した
バイエルン・ヘッセン両州においてSPD、Grün、FDPは明らかに罰を受けた。これは選挙での反信号連合というレトリックによるものであり、また自身の責任によるものであると政治学者ウルズラ・ミュンヒは10月9日Tagesschauのインタヴューに応えた。(ミュンヒは2011年からトゥツィング政治教育アカデミーのディレクター。それ以前はミュンヘン連邦軍大学政治学部教授、政治社会学部長。)
Tagesschau: バイエルン州とヘッセン州の選挙結果はほぼ予想通りでしたが、最もあなたを驚かせたことは何でしょうか。
Muench: 両州におけるAfDの予想をはるかに超える強さが、私には驚きでした。それはヘッセンで2番目に強力となり、バイエルンではFWが中部の強い右派勢力であるにもかかわらず3番目になりました。
Tagesschau: 西ドイツの2つの安定した州でのAfDのこの成功はどう説明できるのでしょう
Muench: 第一に連邦政府、信号連合の責任が大きく追及されることです。これは連合を組んでいるすべての政党に対して行われるでしょう。Grünはその中核となる選挙人がある程度活動しましたが、FDPはバイエルンでは全く、ヘッセンではほとんど消えてしまいました。SPDはバイエルンで最悪の選挙結果に陥りました。これはすべて連邦政府に対する大きな不満の明確な兆候です。
もう一方でこの反信号レトリックはヘッセンのCDU、バイエルンのCSU、FWにも働いていることがわかります。多くの禁止条項がGrünに由来するという主張は、この風潮をさらに煽り立てています。面白いことにこれはバイエルンのCSUではうまくゆかず、ヘッセンのCDUには確かに機能しました。
Tagesschau: マルクス・ゼーダーのCSUは2018年の州選挙では明らかにFWとAfDに票を奪われていました。彼は今回も同じ失敗をしましたか。
Muench: 逆です。CSUは移民政策をめぐるCDUとCSU間の激しい内輪の応酬という2018年の失敗から学習しようと努めました。移民というテーマを今回の選挙で取り上げませんでした。しかし地方自治体にとって非常に重要なテーマであったために、この方策は役に立たちませんでした。そのためAfDが改めてそれを利用したのです。
2018年にCSUはAfDを修辞的に模倣しても意味がないという経験を積みます。このテーマをいったん排除し、州選挙後に改めて蒸し返そうと望みましたが、そのような希望は実りませんでした。
Tagesschau: 2021年のGrosse Koalition(SPD、CSUの連合)にまでさかのぼる連邦政府では移民政策のために二重の減退をこうむることになりました。多くの有権者の目には引き出された結果があまりにも少なすぎたのではありませんか。
Muench: 私もそう思います。このテーマには特に注意を傾けるべき事項とみなされ、住民のあいだでは現実的な問題です。2015/16も同様でした。しかしながら当時政府は少なくとも比較的多くのカネをシステムにつぎ込むことができました。
今や我々は多くのところに公的な金をつぎ込まなければならないと常に聞かされる時代に生きています。そして難民に対しては何も節約されていないという印象があります。このような認識はもちろんAfDによってさらに煽り立てられます。私の目にはこれが選挙結果に強く作用したように思われます。
一連の嫉妬の連鎖です。経済とウクライナの財政的支援の観点から、自由に使えるカネはあまり多くなくなったために公共事業を縮小せざるを得ないという懸念もまた作用しているでしょう。
Tagesschau: 移民というテーマをあまりに蔑ろにしたことでショルツ首相、内務大臣でヘッセン州SPDの第一の候補ナンジ・フェザーは非難されなければなりませんか。
Muench: AfDの対岸にあるすべての党は自治体や地域からの示唆を十分真剣に受け止めていなかったと非難されざるを得ません。それゆえに各州は連邦に助成金を求め、連邦政府はすでに非常に多くのカネを支払ったと弁明しています。
共同体や地域が現実的に受け入れ問題を抱えているということだけが問題なのではありません。各州とも押しなべて学校体制がもはや機能せず、教育システムの質的水準が下がり、人手が足りず、これらすべてにべらぼうなカネがかかり、わずかなカネでは大したことができないという懸念があるのです。
これはもちろん連邦政府にとってとりわけ重要なテーマです。しかしこれは連邦議会の反対派のベンチに座る民主主義スペクトルムにとってもおおきなテーマであると私は申し上げてきました。
Tagesschau: これは信号連合に託された課題であるとおもわれますか。そして同様の結果を避けるために1年半後の連邦選挙までにそれを成し遂げられるでしょうか。
Muench: AfDの選挙結果にかかわらず移民というテーマに真剣に取り組む。これが重要です。既に最初の一歩が取られています。欧州のレベルではいくらかの譲歩が見られます。難民のために現金を給付する代わりに金券を考える。幾つかの試みは既に始まっています。信号連合が連邦議会の民主主義てき反対派とともに行動するならば、それは非常に理性的といえるでしょう。
Tagesschau: 一体本当に移民というテーマだけに責任の所在があるのでしょうか。あるいはまた信号連合内の不一致という一般的に広まったイメージ。それがこの3つの系統が各州で票を失うことにつながったのでしょうか。
Muench: もちろん、これはバイエルンの議会で反対党が扇動したためでもなく、3つの党がそれをヘッセンで促したためでもありません。人々は連邦政府の分裂を望んではいません。この闘争は移民というテーマに限られただけではなくいわゆる温暖化法にも当てはまります。移民や気候変動というテーマ、さらにはドイツの経済的立ち位置というテーマをうまく取り扱う能力のある政府が望まれているのです。
彼らは州の気分をよりよく念入りに取り上げてくれるような印象を与える連邦政府をもまた望んでいます。すべての意見を追いかけることは問題になりません。基本的な感情をより強く共有することが重要なのです。連邦政府は実際それができていないと非難されています。自身の公式表明で大いに楽観主義を標榜するが、そこから出発し現実に基礎づけることができないような首相。それは人々とって信用しうるものではありません。
den 12 Oktober 2023
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion13296:231013〕