私は現在、IPPNWドイツ支部から郵便で取り寄せた「何が安全で値頃、そして平和を促進するのか?(Was ist sicher, preiswert und fördert den Frieden?) 」と題された、可愛らしい女の子のカバー写真がついた印刷物を地域の人々に、時には自転車を走らせながら、配っています。印刷物の中身は「エネルギー転換を市民の手に」「高価な電力供給アウトバーン( 遠距離送電線 )の代わりにエネルギー自給/独立」「エネルギーの飢えが戦争原因」「再生可能エネルギーは平和をもたらす」「核エネルギーは毎日毎日を危険にさらしている」「原子力は放棄可能」と題されたテーマに、それぞれ分けられていて、各テーマに基づいて簡潔に解りやすく書かれています。と同時に、IPPNWは核の脅威・危険性を鋭く、厳しく訴えることも忘れていません。
その中から今回は「核エネルギーは毎日毎日を危険にさらしている」と題されたテーマを選び、それを抄訳したものをご紹介させて戴きます。
なお、この印刷物の電子版がIPPNWドイツ支部サイトに掲載されています。:
http://www.ippnw.de/commonFiles/pdfs/Energiepolitik/Was_ist_sicher_preiswert_und_foerdert_den_Frieden.pdf
核エネルギーは毎日毎日を危険にさらしている
(日本語訳: グローガー理恵)
危険な核輸送
2013年5月1日にハンブルグ港で発生した大災害寸前となった出来事は、フクシマ原発事故後、 原子力撤廃することが、命と健康を守るために如何に正しいことであるかということを明示していた。
貨物船「Atlantic Cartier」は、およそ16時間の間、燃えつづけた。貨物船には、11トンの濃縮酸化ウランや、六フッ化ウラン、新しい燃料集合体、弾薬、ロケット燃料、強力爆発性エタノールが入ったコンテナが積まれていた。 財政上の理由で、消防隊には有害物質を消火するために必要な二酸化炭素が充分に準備されていなかったため、出動した消防隊員達が命がけで核物質をできるだけ迅速に救出せねばならなかった。
写真: ハンブルグ港で燃える貨物船「Atlantic Cartier」(IPPNWドイツ支部サイトから)
原子力撤廃のギャップ
一日おきに核輸送はハンブルグを通過する。1990年以来、ドイツ連邦全体にわたり16、000以上の核輸送が許可されている。核輸送の出発地点および目的地は度々、リンゲン(Lingen)にある核燃料製造工場やグローナウ(Gronau)にあるウラン濃縮工場となっている。 -リンゲンの核燃料製造工場は、かつて「Siemens AG(シーメンス)」に属していたが、現在はフランスの原子力産業複合企業「Areva SA(アレヴァ)」に属している。グローナウのウラン濃縮工場は、原子力発電所運営者である「RWE(アール・ヴェー・エー)」と「E.On(エーオン)」によって共有されている。これら両方の核工場はドイツの原子力撤廃(脱原発)プログラムに含まれていない。また、それに加えて、ドイツ連邦共和国は ヘルメス・カバー(Hermes-Bürgschaften)のもと、他の国々へ核リスクを輸出している。
チェルノブイリはドイツの問題でもある。
1986年のチェルノブイリ最大想定事故が、放射能とは境界を知らないものであると謂うことを明らかに示している。 2006年4月、スイスの公衆衛生連邦機関は、「チェルノブイリからの放射性降下物が原因となって、スイスにおけるガン死亡数が200件増加することが予測される」との情報を国民に提供した( 死に至らないガン罹病数はその2倍-400件 )。 この算定は、一人当たりの平均被曝線量0.5ミリシーベルトを基盤としている。
ドイツでは、これに匹敵するような方法で、チェルノブイリがもたらす影響/結果に関する情報が国民に提供されてはいない。ドイツにおける平均被曝線量は、一人当たり0.7ミリシーベルトである。IPPNWの医師グループの算定では、ウクライナでの原子力大災害が起因となるガン罹患数は、ドイツ国内だけで、11,000件から22,000件になることが予測されている。
核廃棄物の長期間貯蔵に関して未解決のままである。
低レベル/中レベル放射性の核廃棄物の所謂「最終貯蔵施設」(Asse 2-アッセ2)に関して、「アッセは全く安全である」と、市民たちは何十年以上にもわたり思い込まさせられてきた。 しかし今、アッセ貯蔵施設は、たった30年間運営されたのみで、施設内漏水のため、市民によって賄われなければならない莫大な財政的負担をもって、クリーンアップされなければならない。
そして今、ベルリン(連邦政府)と州(政府 )の間において、高レベル放射性の核廃棄物を長期間貯蔵するための場所を探すことが合意された。-またもや、まるで核廃棄物貯蔵問題が即座に解決可能であるかのように、合意されたのである。
しかし、放射性廃棄物の処理は世界中で解決されていない難題である。ーこれは、つまるところ、根本的に解決不可能な問題なのである。
懸念されることは、「最終処分立地選定法」が、ドイツで未だ稼働中の原子力発電所を、法的に最も疑わしい方法で、今後も引き続いて稼働させていくことを可能にするための、単なる「核廃棄物処理の証明」を創り出すことになることである。直ちに原子力撤廃することだけが、日々続いている、きわめて有毒な高レベル放射性廃棄物の生産をストップさせることができる。
以上
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Siemens AG(シーメンス):Wikipedia リンク http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%B9
Areva SA(アレヴァ): Wikipediaリンク http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%B4%E3%82%A1
RWE(アール・ヴェー・エー):Wikipediaリンク http://ja.wikipedia.org/wiki/RWE
E.On(エーオン):Wikipediaリンク http://ja.wikipedia.org/wiki/E.ON
ヘルメス・カバー(Hermes-Bürgschaften-ヘルメス・ビュルグシャフテン):ドイツ連邦政府によって保証されている輸出信用担保。 ドイツの重要な貿易政策の一部としてみなされ、外国の債務者が債務不履行/不払いを起こした場合に、ドイツ企業はヘルメス・カバーによって保護されていることになる。
Asse 2-アッセ2: アッセ核廃棄物貯蔵施設問題に関する「ちきゅう座」の記事:https://chikyuza.net/archives/26762
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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