9月23日、IPPNW(核戦争防止国際医師会議 )が 安倍総理大臣宛てに「来年に六ヶ所核再処理工場の営業運転を開始することが決定されたこと」に対する抗議書簡を提出しました。私は、この書簡が日本の方々 にとって非常に重要な意義を持っているものではないかと考えましたので、これをぜひ皆様とシェアーさせて戴きたいと思い翻訳に取り組みました。
下記がIPPNWブログ原文へのリンクです。:
http://peaceandhealthblog.com/2013/09/25/rokkasho/
IPPNW(核戦争防止国際医師会議)から安部首相へ「六ヶ所を取り消せよ」
2013年9月 25日
(日本語訳:グローガー理恵)
IPPNWの共同議長は下記の書簡を日本の安部晋三総理大臣に送った。書簡は、核燃料再処理の計画は「不必要かつ危険」であり「核兵器のない世界を達成するために支援することを表明した日本国の公式声明と一致しないもの」として、核燃料再処理の計画を止めるようにと安部首相に要請したものである。
2013年9月23日
総理大臣閣下
私たちは62ヶ国からの医師団を代表し、来年、六ヶ所使用済核燃料再処理工場の営業運転を開始するとの貴国の意図に対する私たちの懸念を表明し、六ヶ所工場の運転を始めないようにと日本政府に要請するために、この書簡を提出します。
私たち医師連合体が目指す目標は、世界保健機関(WHO-World Health Organization)が「人間の健康と福祉を直接脅かす最大の脅威である」として認めた核絶滅の脅威からグローバル・ヘルスを守ることであります。1985年、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)は、「核戦争がもたらす破滅的な結末について信頼できる情報を広め、その認識を高めていった」という理由でノーベル平和賞を受賞しました。
核兵器は核分裂性物質である「高濃縮ウランとプルトニウム」がなければ存在し得ません。もし人類が、健全で持続可能な未来を享受していこうと謂うのであれば、私たちは、核兵器がまた再び使用されるようなことにならないようにするために、その前に、非核武装された核兵器のない世界を完遂しなければなりません。この事を間違いなく確実にするために私たちは、一刻を争う時間との闘いの中にあります。核兵器によって提起される、ヒューマニズムに対する最悪の脅威から解放された世界を達成するためには、軍縮することだけではなく、可能な限りに今後の核分裂性物質の生産を最小化し根絶し、可能な限りに現存する備蓄を除去することが要求されてきます。残存するどのような核分裂性物 質に対しても最高度の警備態勢が必要とされます。この大規模なタスクに取り掛かるのに早過ぎるなどという事は決してあり得ません。
権威ある「1)核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM-International Panel on Fissile Materials)」が、2013年1月の時点における世界の包括的ストックパイルを推算したところによりますと: 「高濃縮ウランの量=1,390トン- その内31ヶ国が(其々)少なくとも1kgの量を所有; 分離されたプルトニウムの量=490トン」となっています。米国の各核兵器には平均して、たった4kgのプルトニウムが含まれているのみであることは、周知のことです。
日本は既に44トンのプルトニウムを所有しています。-これは、1発の核爆弾につき8kgという多量のプルトニウムを許容したとしても、5,000発以上の核爆弾に十分に値する量となります。日本は、使用済核燃料からプルトニウムを分離している、唯一の非核保有国です。核兵器利用可能物質が更に蓄積されることは国際社会にとって、とりわけ北東アジアにおける日本の近隣国にとって懸念されることです。これらの懸念は、予知可能な使用途がないまま大量のプルトニウムが増量することによって更に強まってきます。事実、ここ何年間にわたり幾人かの日本の政治家は、このようなプルトニウムのストックパイルから僅か数か月内に、核兵器軍需生産ができる可能性に注目することを誘致してきました。
現在、日本政府が公式に表明した意図が如何なるものであるにしろ、それについて私たちには何も疑うべき理由がありませんが、政治的意図というものは、プルトニウムの半減期と比較すれば、速や かに変わり得るものです。
更に、単なる、そのようなストックパイルの存在が、ストックパイルの流用や盗みのリスクを惹起し、核分裂性物質の生産プログラムや他の国々におけるニュークリア・プロリフェレーション(核拡散 )への駆動を煽ることにもなります。
使用済核燃料からプルトニウムを分離するという日本の施策は、他の国々を同様のプログラムへと駆り立てる危険な先例を示しています。核再処理工場を充分に防護するために付き物となってくる技術的問題、そして分離されたプルトニウム流用の危険性が、これらのリスクに付け加えられます。
この核再処理施設は、核兵器の拡散が既に深刻な懸念となっている北東アジア地域の状況において、特に憂慮されることです。
私たちは、「1997年1月31日に日本原子力委員会が、日本は余剰プルトニウムを保持しないことを約束し、この決定は1997年 2 月4日、内閣によって是認された」と、理解しております。更に2003年8 月5日、日本原子力委員会は電力会社に、使用済核燃料からプルトニウムを分離する前に、プルトニウム使用の立案を公表するようにと命じました。六ヶ所再処理工場における営業運転開始は、これらの決定に反することになり、従って、貴国の言行一致性と信頼性に関しての疑問が提起されてきます。
日本国民や日本政府が充分に承知されていますように、今後の如何なる核兵器使用も、人道破滅への結果をもたらすことになります。それ故にIPPNW は、全ての無差別兵器の中で最悪である核兵器だけが未だに、明示された法令による禁制の対象になっていない変則を正そうと、包括的な禁止条約成立のために、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN-International Campaign to Abolish Nuclear Weapons)を他の協力団体と共に推進しています。私たちは、日本がクラスター爆弾/対人地雷禁止条約の締約国として、同様に、この核兵器廃止への奮闘を支援して下さることを願っています。
日本が既に所有する核兵器利用可能物質の莫大なストックパイルを考慮しますと、六ヶ所核燃料再処理工場の操業開始は不必要であり且つ危険であるように思われます。既に存在する大量のプルトニウムのストックパイルを更に増やすことは、核兵器のない世界達成への支持を表明した日本の公式声明とは一致しません。
私たちは、日本政府が、六ヶ所での営業運転開始決定を再検討され、そのようなオペレーションには取り掛からないと宣言されることを奨励します。
そうした日本政府の決断は世界中で大いに歓迎されることとなり、グローバル・ヘルスを徐々に害していくことではなく、むしろグローバル・ヘルスを支えることになるでしょう。
敬具
Tilman Ruff-共同議長
Ira Helfand-共同議長
Robert Mtonga-共同議長
Vladimir Garkavenko-共同議長
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1)核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM): 16カ国からの独立した核専門家から成るグループで2006年に設立された。IPFMの目標は、核兵器のキー成分となる核分裂性物質のストックパイル及び蓄積量を著減させ、更なる核分裂性物質生産を制限する国際的イニシアティヴを促進することである。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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