百聞は一見に如かず。TVで放送された番組がYouTubeにUPされていても違法ではないのが、フランスの国立機関INA(Institut National de l’Audiovisuel,国立視聴覚研究所)による番組の公開制度です。公共放送の番組だけでなく、民間放送の番組も収集して公開しています。具体的な運営の仕組みまではわかりませんが、過去の思想家や作家などのインタビュー番組がかなり多数、YouTubeのINAのページでUPされています。
たとえば、以下の番組はアメリカの劇作家、アーサー・ミラーが特別出演した時のスタジオ番組で、司会はベルナール・ピボです。ピボは本の紹介番組で知られていて、かつて知識人の中にはピボを批判する人もいたのを記憶していますが、それでも今、こうしてみるといろいろ参考になる話を聞き出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=IcVNgygIYt4
これは1988年に収録・公開された番組で、その当時の空気も蘇ってきます。時代時代で「空気」は変わることを考えると、10年前、20年前、30年前がどんな「空気」だったのかを見るにはTV番組は1つの指標になり得ます。NHKのニュースの作り方や方針一つとっても同じではないと思います。そうした時代の変遷を認識し、今がどういう時代なのかを考える上で、過去の番組の公開は欠かせません。もちろん、いろんな注意は個別に必要でしょうが、大枠では公開制度を進めるべきだと思います。
過去の時代が浮き上がるだけでなく、現在の番組が後の時代にきちんと検証されることにもなります。放送しっぱなしでなく、繰り返し見られ検証されることによって、番組を作る側もより正確さを求められますし、誤りがわかれば注を付けるべきでしょう。世界に公開されることで、世界の人々の目にもさらされるのです。この番組の劇作家ミラーの話はすでに世界の知的財産と言ってよいと思います。日本の中にもそうした話はたくさんあり、放送局の倉庫に山のように埋もれているはずです。その宝を無料で公開するべきです。
※INA 世界最大規模の放送番組
デジタル・アーカイブ
ロドリグ・マイヤール(国際放送局)
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2006_10/061006.pdf
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion10109:200913〕