明日からNHKの経営委員長らが国会に招致され、昨年起きた番組への圧力について野党の追及を受けます。これまで石原進経営委員長に関して様々な批判を日刊ベリタでは取り上げてきましたが、問題の核心には石原氏個人の思想的問題だけでなく、NHKという放送局が肥大化しすぎて風通しの悪い構造になっていることがあります。複数の関連組織を抱えて、さらにその「下」に多数のプロダクションを擁し、またNHKの内部に多数の派遣社員を抱えるNHKはピラミッド型組織になっており、それだけにトップにとんでもない人物が据えられると、上から下まで権力に従属してしまう構造にあります。時に良い作品が作られることもありますが、そこにとらわれて全体を見損なってしまってはダメです。
そこで私の提案はNHKを3つぐらいの独立組織に分けて、それぞれ公共チャンネルでよいけれども運営は別の主体による別組織に完全にしてしまう。その上でNHKエンタープライズとかGメディアといった関連組織は解体してNHKから派生する3局に分けて納める。これでまずピラミッド構造の層が1つ減ります。その上で、組織の独自性を高め、よりフラットな組織にすることで個々のディレクターの表現の幅を広げ、個性をもっと重視する。さらに、企画の決定までのプロセスをもっと減らして、責任者、プロデューサー、ディレクターの3層(2回の会議)で決定できるようにすること。こうしなくては、世界の早い動きに全然ついていけません。そして、今年の参院選の野党共闘の合意に盛り込まれましたが、放送局の監督権を総務省から切り離して、独立組織に移行することです。この方針は次期衆院選でも維持して、必ず実現すべきだと思います。
NHKは国民の安全や繁栄を的確な情報で手助けする任務がありますが、今完璧な書類を求めるばかりで、素晴らしい企画書ができた頃には現場の動きがあらかた終わってしまってしまいかねません。旧ソ連の官僚システムとまったくよく似ています。現在の外交の失敗や経済の崩壊も、自民党に忖度し、世界の正確な報道を組織的にサボタージュしてきたNHKに責任があると言って過言ではないのです。1989年から1991年にかけて起きたロシアから東欧の激動を今、もう一度自己に重ねて見つめるべき時なのです。
今、NHKは動脈硬化状態にあり、そのトップに番組に圧力をかけることへの問題意識がない人物が居座って人事と予算を掌握する、という最悪の状況にあります。その人物、石原進NHK経営委員長は改憲の圧力団体「日本会議福岡」に関係していた人物です。1万人もいてもNHK局員のメンタリティではこの構造問題を覆すことは不可能なようです。NHKの放送局員の持っている「論理」というものは、極めて日本的で支配力のある人間の「論理」がすべてを覆す「論理」体系です。カントもヘーゲルもドゥルーズも関係ありません。NHK局員が口にする「論理」を外部の人間たちは内心馬鹿にしているのですが、やむを得ず従っているのです。ところが、次第にそれに同化する人間も少なくないのです。それはNHKにおける支配的な言説に同化しなくては仕事がしづらいからです。NHKの放送局員はこの「論理」のもとで最大限良い作品を作ろうと懸命に努力しますが、その時々で移り変わる、外部の人間から見ると(さらに言えば、世界の水準から見ると)極めて疑問だらけの「論理」に逆らうことはしません。こうした日本の文化批判は戦後の1970年代までに出尽くした感がありますが、今、そうした議論はすべて忘却の彼方にあり、またゼロから構築していかないといけないのでしょう。
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〔opinion9072:191009〕