雑誌『情況』が雑誌コード発行から書籍コード発行へ切り替わったのを機に誌名(書名)を『情況』から『SITUATION』に変更したらしい。正確に言えば、『情況』を小文字化し、大文字の『SITUATION』を新しく追加している。
片仮名のジョウキョウを漢字に直すと「状況」と「情況」になる。両者に共通する「況」は、「ありさま」や「おもむき」を示す。「状」の字は、「犬の形」であって、犬がいろいろな動作をする所から「さま」や「ようす」を意味することになったと言う。それに対して、「情」の字は、外の刺戟に対応する心の動きを意味する。例えば、喜怒哀楽愛悪欲を七情と呼ぶ。「況」と一緒になって「情況」なる新概念になる。「状」と「況」は殆ど同じ概念だから、両者が一緒になっても、新概念にならない。「情況」を「状況」を使って表現すれば、「主体と状況」と言うことになろうか。そう言えば、かつて『主体と状況』なる雑誌があったと記憶する。ジョウキョウなる名の雑誌を創刊し、今日まで刊行して来た人達は、「状況」ではなく、「情況」をあえて選択した。
ところで、英語のSITUATIONの意味内容には「情」の含意は全くない。訳するとすれば、「情況」ではなく、「状況」であろう。「主体と状況」≒「情況」から「主体」を抜き去った状態がSITUATIONであろう。
ところで、以上の感想は表紙のSITUATIONに基づく。しかしながら、背表紙は従来通り『情況』である。どちらが誌名(書名)なのだろうか。例えば、連載中の矢吹晋氏の怒れる理性にSITUATIONはふさわしくない。
平成28年3月10日
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5954:160310〕