高専にかよっていたとき、夏休みも冬休みもアルバイトに精をだした。我が家には定額のお小遣いがなかった。毎朝もらう昼飯代以外は、本を買うとか友だちとどこかに行くとか、なんらかの理由を言って、そのつど小遣いをもらっていた。その
本文を読む藤澤豊の執筆一覧
ラブソティでウインナコーヒー
著者: 藤澤豊三年前に入社して総務で事務をしている。労組の夏のキャンプで偶然隣に座っていた。みんなが茨城弁で盛り上がっているのについていけなくて、ちょっと声をかけたら普通の言葉で返ってきた。東京の普通の言葉で話せるというだけで親しくな
本文を読む金石範からラノベに転がっちゃった
著者: 藤澤豊セミナーの後の懇親会で知り合いから聞くまで、済州島の「四・三事件」ついては何も知らなかった。みんなの話の腰を折るようなことのないようにと思ったのだろう、世間話に混ぜ込んで、わざと軽く触れただけのような口ぶりだった。そのせ
本文を読むアンカラでアンカラって何?
著者: 藤澤豊今晩はトルコ料理だと宮益坂のアンカラ(ANKARA)という店に連れて行かれた。母娘で何度か来ているようで、駅からまっすぐ迷うこともない。予約しておいたのだろう、一つだけ空いていた奥の落ちつたテーブルに案内された。土曜日の
本文を読むあそびとジャストイン・タイム
著者: 藤澤豊機械屋には常識だが、歯車は「あそび」がないと回らない。ことの常で例外がないわけではないが、一般的にはそう思っていい。あそび、漢字で書けば、「遊び」になる。機械屋でない人には、ちょっとわかりにくいかもしれない。次のように両
本文を読む昔新聞、今NHK
著者: 藤澤豊転職しては通勤の便から、子供が進学すれば通学を考えて引越しを繰り返してきた。引越しは、荷物を運んででは終わらない。住民票を移動して、運転免許の住所変更からはじまって、電気もガスも水道も契約しなおさなければならない。もう固
本文を読む規律正しく、何のために?
著者: 藤澤豊ニュースで北朝鮮の軍隊行進(パレード?)を見てしまうことがある。たいした時間でもないし、チャンネルを変えるのも面倒で見てしまうが、うす気味悪くてしょうがない。なんど見ても慣れない。それは中国のでもロシアでも自衛隊も同じで
本文を読む見つからないと思うこと
著者: 藤澤豊これこれこうでと考えて整理した、あるいは整理するまでもなく、机の上の本棚にとりあえず置いたはずのものが、たいして時間もたっていないのに見つからない。いくら探してもみつからないと、見つけられない自分がいやになる。歳をとった
本文を読む文化遺産、好きになれない
著者: 藤澤豊もう三十年以上前になるが、会社のクリスマスパーティーで椿山荘にいったことがある。そのときは、夜だったこともあって見もしなかったが、先月歩いていって、あまりに立派すぎる庭にびっくりした。話には聞いていたが、きれいがどうのと
本文を読む池袋西口公園を暗渠に
著者: 藤澤豊池袋は新宿や渋谷に比べると垢抜けきらない庶民の街の感がある。駅周辺は大きく東口と西口の二つに分けられる。北口もあるが、そこには卑猥に近い昔ながらの歓楽街が残っている。特殊浴場もあれば、都内では見ることも少なくなったストリ
本文を読む今のジャポニズムは憲法九条
著者: 藤澤豊たいして興味があるわけでもないが、聞いておくのも無駄ではないだろうとセミナーにでかけた。十九世紀の、とくにパリの画壇を席巻した大きな潮流だったということぐらいしか知らないが、ジャポニズムのもとを目の前にしたときは驚きを超
本文を読むもっと難しく、イカ墨先生
著者: 藤澤豊工業高専は、技術的な基礎知識の詰め込み教育を目的として設立された、ちょっと気の利いた職業訓練校でしかない。こう言うと、あれこれ言ってくる人もいるだろうが、それは東京高専を卒業したものの実体験が証明した、たとえ一例でしかな
本文を読む頭は下げるためについている
著者: 藤澤豊日立精機をあいてに身分保全の裁判闘争をしていた活動家仲間が、折にふれては「頭は下げるためについている」と言っていた。解雇に至る発端は突然のデュッセルドルフ駐在辞令だった。誰の目にも活動家の排除を目的としたものとしかみえな
本文を読む誰だって、楽しい方がいい
著者: 藤澤豊ビデオクルーが、こんどは仕事で来る。もう半年ほど前になるか、上海からミルウォーキーに戻る途中で東京の事務所に立ち寄った。廊下ですれ違って、無言というのもイヤで軽く声をかけた。事業部を訊いたら、本社のCorporate C
本文を読む地面が平らじゃなかった
著者: 藤澤豊あいつら、どうみてもどこにでもいる普通のやつらだ。その普通のやつらが、オレが左よりってのか左に傾いてるってんだ。そりゃ、多少は変わってるところもあるけど、誰がどうみたって、オレはまっすぐで右も左もない。それこそ若竹のよう
本文を読むぼんやりしておいたほうが
著者: 藤澤豊尖閣列島のニュースを聞いたとき、ときには故意に、ぼんやりさせておいたほうがいいこともあるというのを思い出した。いい加減はいやだし、はっきりさせたい、しなければという気持ちがあっても、それができれば……、というところで踏み
本文を読む暇すぎるよりは
著者: 藤澤豊いつものように同僚と居酒屋で一杯やりながらたわいのない話。サラリーマンの情けなけなさ、話がどこにどう飛んだところで、いくらもしないうちに仕事がらみに戻ってしまう。そもそも仕事でなければ出会うこともなかった間柄、親しく話は
本文を読むAI騒ぎ―素人の疑問
著者: 藤澤豊最近とみにAI云々を耳にするようになった。家電量販店にでもいけば、いやでもAIが目に入る。また時の話題に遅れてしまったのかと、あわてて何がAIなのかと考えているが、どうもよくわからない。もしやと、Googleで「AI家電
本文を読む給料が高すぎるって言われても
著者: 藤澤豊溝の口の立ち飲み屋で見るからにブルーカラーという格好の三人が愚痴っていた。上司の悪口を肴に飲んでいたが、つい避けていた工場移転の話になってしまった。 工員: 「係長、今日の工場長の話、どうなってんすかね」 臨時工: 「い
本文を読むもっとたわいなく
著者: 藤澤豊テレビや新聞のニュースをみれば、何が何でもそりゃないと思っていることを反芻するようなことになる。そんなことが続いきたからだろうが、もうろくに腹も立たなくなってきた。ただ情けないやら呆れるやらで、この先どうなってしまうのか
本文を読む不法滞在に進学支援?
著者: 藤澤豊「good is not enough, must be excellent」という言い草がある―レイオフと背中合わせの会社で仕事をしていたとき、同僚の一人に韓国系カナダ人がいた。三十をちょっとでた画像処理の技術屋で新市
本文を読むビール瓶が足りない?
著者: 藤澤豊ざっと原稿を書いて、適当にねかしておく。何日か経って推敲しては、またねかしてをなんどか繰り返しているうちに、フォルダーのなかで、あれこれの原稿に混じって、ねかしておいたことを忘れてしまうことがある。 そんなファイルをみつ
本文を読むスクラップブックの話
著者: 藤澤豊こりもせずに「グローバリゼーション」と「新自由主義」を演題にかかげたセミナーにでかけた。平日の夕方からのセミナーにもかかわらず盛況だった。 京大の先生が、セミナーのためだけに日帰りできてくださったという主催者の紹介を聞い
本文を読むトランプ教?―朝日新聞、おまえもか
著者: 藤澤豊九月二日の朝日新聞の朝刊をみて驚いた。「『Q』の陰謀論 トランプ氏支える」をタイトルに、「『大統領は救世主』謎の投稿 影響力」というサブタイトルまでつけて、一面トップだけでは足りずに二面までつかっていた。あちこちの英字新
本文を読むIT化―社会をあげての人減らし
著者: 藤澤豊新自由主義やグローバリゼーションといえば、経済格差の拡大と社会の右傾化を説明できると勘違いしているとしか思えない話を聞くことがある。問題としている社会現象が起きた経緯とそれを可能にした社会インフラの変遷に言及することもな
本文を読む体の省エネ
著者: 藤澤豊自動車の燃費や照明のELD化から空調の温度設定……、どこにいっても省エネをうたった広告やポスターを目にする。それは人々の省エネに対する関心の高さの現われで、良識にもとづいた消費文化のあらわれだろう。省エネを進めれば、経済
本文を読むハバナの食堂で
著者: 藤澤豊教授 「今日は、こんないい店に連れてきてもらって、本当に感謝してるよ」 わざとらしくならない大きさと抑揚に気をつけながら、奥の厨房にいる店主と女房にも聞こえるように言った。そして、ちょっと小声で、まるで二人の秘密だという
本文を読む読み物仕立てのすすめ
著者: 藤澤豊もう七、八年前になるが、考えてきたことをまとめて書き残しておこうと思い立った。今になって振り返ってみれば、人文系の教養もないし、仕事以外の文章など書いたこともないのに、よくぞそんなことを始めたものだと思う。 個人の備忘録
本文を読むドルをフンドシにも三分の理
著者: 藤澤豊知り合いの日本人から、「人のフンドシで相撲を取る」って言い草を聞いた。聞いたときは、さすがにうまいことを言うなと感心したけど、後になって、そりゃ言いすぎじゃないかって思いだした。確かに一理も二理もあるとは思うし、そう言わ
本文を読むある時代の産物のひとつ
著者: 藤澤豊「四十にして迷わず」などと、よくもまあ臆面もなく言ったものだと思う。よほどの人なのだろうが、迷うほどには気がつかなければならないことに気がつかなかっただけではないのか。あまりにも知らなければならないことが多すぎて、四十ど
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