Shinzo Abe’s inability to face history
WP社説:歴史に向き合えない安倍晋三
論説委員会、2013年 4月 27日
5年前に不手際から手放した日本の首相の座に、安倍晋三が昨年の秋に返り咲いたその瞬間から、ひとつの疑問が涌き起こっていた。日本が前進するために、彼は国家主義、とりわけ歴史修正主義の衝動を抑えられるだろうか?
今週になるまで、その疑問に対する答えは肯定的であるように見えていた。安倍氏は瀕死の日本経済を改革するため勇気ある措置を講じた。彼はコメ農家のような党内の強力な利益集団をものともせず、日本の経済成長に拍車をかける可能性をもつアメリカや他の太平洋諸国との自由貿易交渉に加わった。彼は慎重な言葉で防衛費増額への正当な欲求を表明した。
しかし今週になって彼は、この全ての前進を危険にさらすような動きに出た。前世紀の朝鮮半島の植民地支配に対して1995年に日本が表明した公式な謝罪を見直したいかどうかを国会で質問されて、安倍氏は「侵略という定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国の関係でどちらから見るかで違う」と答弁した。
中韓両国政府の要人たちは憤激をもって応じ、それは理解できるものだった。確かに、歴史は常に再解釈され続けている。しかし事実というものはあるのである。日本は朝鮮半島を占領した。日本は満州に続いて中国全土を占領した。日本はマレー半島に侵攻した。日本は侵略を行ったのだ。ドイツが歴史と率直に向きあってヨーロッパでの地位を確立してから何十年もたつというのに、どうして日本にはいまだに事実を認められない人々がいるのだろうか?
確かに韓国や、それ以上に中国は、時折国内の政治目的のために反日感情を煽ることはある。中国は自国の歴史を歪曲し、日本と異なり多くの場合は対立する解釈を議論・研究することが許されていない。しかし、これらはいずれも、安倍氏が今週陥ったような自滅的な修正主義の釈明にはならない。
日本にはもっと理にかなってはいても、やはり韓国と中国が反対しているような目標があるが、歴史に向き合うことができないとそれらに対しても偏見を持たれてしまう。中国と北朝鮮の防衛費と強気な行動を考えれば、安倍氏には自衛隊の近代化を支持する正当な理由がある。第二次世界大戦後に米国占領軍によって押し付けられた日本の「自衛」憲法で、日本が同盟国を十分な力で助けることができるのかどうかを彼が問うのはもっともである。しかし、彼が戦前帝国へのノスタルジーを抱いているように見えるとき、多くの有権者がまだ疑問視している国内の改革を実行する彼の能力と、疑い深い近隣諸国を安心させる能力は、失墜する。
(翻訳 酒井泰幸)
ここでもう二つ米国記事を紹介しておく。
ウォール・ストリート・ジャーナル(英語版、日本語版)
Japanese Prime Minister Stokes Wartime Passions
http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324743704578444273613265696.html
安倍首相、近隣諸国の神経を逆なで−戦時期の「侵略」を疑問視
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324289404578445770654912536.html
クリスチャン・サイエンス・モニター
Is Japan’s Shinzo Abe finally acting on his true nationalist colors?
(日本の安倍晋三はとうとう国粋主義の本性にしたがって行動しているのか?)
http://www.csmonitor.com/World/Asia-Pacific/2013/0425/Is-Japan-s-Shinzo-Abe-finally-acting-on-his-true-nationalist-colors
初出:「ピースフィロソフィ―」2013.4.29より許可を得て転載
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2013/04/shinzo-abes-inability-to-face-history.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1276:130502〕