世界資本主義フォーラム「宇野段階論とアメリカ資本主義」に参加して
- 2020年 2月 11日
- 評論・紹介・意見
- 大谷美芳
ロシア革命後の現代世界は「帝国主義と社会主義革命の時代」と考えていた。しかし、ソ連も中国もベトナムも、社会主義革命が挫折し、ブルジョア革命に終わり、官僚制国家資本主義化した。20世紀の現実は、資本主義の帝国主義段階が継続し、発展している。
<1>現代世界と宇野経済学段階論
小林襄治氏が共著『現代世界経済』を基に、師匠筋の馬場宏二氏の経済学を紹介した。
⑴段階論の「打ち切り」と「延長」
その主旨は以下であった。アメリカ資本主義を研究し、宇野経済学が段階論を第一次大戦で「打ち切り」、ロシア革命の後は「社会主義が優位に立つ時代として資本主義の発展段階は問題にならず現状分析の課題とした」(p4)のを、その内部から批判した。段階論を現代まで「延長」したのは「画期的」。金融資本=帝国主義段階を「大段階」とし、それを、初めは「古典帝国主義」「大衆資本主義」「グローバル資本主義」という3つの「小段階」に、後には「パクス・ブリタニカ」「パクス・アメリカーナ」という2つの「時期」に分けた(p190~195)。
私は、宇野経済学に対しては原理論に批判があった。資本家と労働者の関係は商品所有者の対等な交換関係ではない。資本主義は、商品の生産だけでなく、剰余価値の生産だけでもなく、資本主義そのものを拡大再生産し(資本蓄積)、生産手段の独占=資本に対する生産手段から分離した労働の従属=賃金奴隷制である(「労働と所有の分離」)。
それでも、原理論-段階論-現状分析という三段階論は、歴史ではなく、論理のレベルだと思っていた。現代の資本主義も現状分析だけでなく、段階論の、また原理論の対象でもある。第一次大戦やロシア革命といった歴史時点での段階論の「打ち切り」は全く理解できない。だから、馬場経済学の「打ち切り」批判は大いに納得でき理解できる。
⑵第二次ブンド「過渡期世界論」
同質の「打ち切り」があり、観念論が濃厚にあった。革命の根拠を、ほぼ全て、「帝国主義から社会主義への過渡期」という政治的上部構造に求め、経済的土台から切り離した。
日本の社会主義革命を、日本の資本主義・帝国主義の矛盾からではなく、ほぼ全て、「三ブロック階級闘争の結合」=ベトナム民族解放闘争および中国社会主義革命(文化大革命)との結合から展望した。その主観主義を赤軍派が極限化した。武装蜂起・革命戦争の根拠を「世界武装プロレタリアート」に求め、「国際根拠地建設」に走った。
<2>試論・現代帝国主義 メモ
現代世界を経済的土台からの分析。レーニンの帝国主義規定は、①独占 ②金融資本 ③資本輸出 ④国際独占資本による世界の経済的分割 ⑤帝国主義国による世界の政治的分割。それがどのように継続し展開しているか。
⑴アジアにおける資本主義の発展
中国やベトナムと対で、韓国と台湾、そしてASEANが、上からのブルジョア革命、開発独裁によって資本主義化した(インドもヒンズー至上主義に基づく権威主義の傾向)。植民地が、国家資本主義によって原始蓄積から自立的な拡大再生産=資本蓄積へ向い、帝国主義への従属から脱却していく。この現実から、ローザの「資本蓄積論」およびウォラスチンの「世界システム論」、そしてフランクやアミンの「従属論」を総括。
③資本輸出は輸出先で資本主義を発展させる。「資本主義の世界化」=「世界の資本主義化」の中で、「中心-周辺」の関係が「工業-資源」から「金融-工業」へ大きく変化した。その重心はアジアにあり、多くの国々が今や社会主義革命に直面している。21世紀は「帝国主義と社会主義革命の時代」を現実にするだろう。
⑵アメリカと中国の帝国主義的覇権闘争
⑤は変化した。アメリカ帝国主義の世界覇権は、諸国家の国際的な関係における圧倒的な軍事・政治・経済である。ソ連帝国主義が軍事的に対抗したが、経済が脆弱で崩壊した。
帝国主義の不均等発展。アジアに新しい帝国主義超大国=中国が登場している(インドが続く)。史上2度目の世界覇権闘争と超大国=アメリカの没落が始まっている。アメリカの経済的優位は、西ヨーロッパ(ドイツ)と日本の工業生産で揺るぎ、金融資本とグローバリズムで乗り切ってきた。巨大な人口は強大な潜在力である。中国は発展の速度は優勢であり、工業生産はすでに対抗し、いずれ圧倒する。それは金融にも政治と軍事にも及ぶ。
⑶社会主義革命の時代
レーニンの規定 ⑥寄生的な腐朽しつつある資本主義。グローバリズムは金融資本の支配。中心は産業的に空洞化し、工業生産は周辺へ拡散した。逆に労働者階級を生存条件以下に突き落とす格差と貧困は周辺から中心へ流入した。地球環境の破壊も周辺に拡散されている。資本主義の生産関係が、人間と自然の両方から生産力を破壊している。
規定 ⑦死滅しつつあり社会主義への過渡である資本主義。物質的基礎である機械制大工業に加えて、社会主義で労働者階級が管理し運営する手段をIT産業が準備している。
最後の論点。買収と福祉から排外主義による統合への転換。これに抗して、社会主義革命の原動力であるプロレタリア階級の階級闘争をどう組織するか。(おわり)
2020.2.10
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://chikyuza.net/
〔opinion9442:200211〕
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