本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(253)
- 2020年 3月 31日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
経済理論の次元的な上昇
「市井の経済学者」といわれる「高橋亀吉氏」は、戦後、公職追放令に遭遇し、糊口をしのぐために、株式評論家として、一時、生活を送ったそうである。そして、この時に出会ったのが、立花証券の創業者である「石井久氏」であり、両者は、協力し合って、株式投資で大成功を収めた状況でもあったようである。また、この間のいきさつについては、「私の実践経済学」という著書に詳しく書かれているが、私自身としては、この時に、経済理論の時限的な上昇が始まったものと感じている。
つまり、「なぜ、高橋亀吉氏が、株式評論家として成功したのか?」については、「ほとんどの専門家が、旧来のように、実体経済だけを研究している時に、マネー経済の分析を行ったために、たいへん簡単に予測が可能だった」と述べられているのである。また、「経済分析」を行う場合に、「病気の原因」と同様に、「現時点の症状だけを見るのではなく、過去の生活習慣などを見ることが重要である」とも述べられているが、このことは、現在と同様に、「三次元の経済学」、あるいは、「地動説の経済学」が、すでに始まっていた状況のようにも感じている。
より詳しく申し上げると、私自身も、高橋亀吉氏の手法に、大きな影響を受け、「マネー経済の研究」、そして、「歴史的、かつ、具体的な数字による分析」を行ったことにより、「現在、どのような状況となっているのか?」が、たいへん明瞭に見えている状態とも感じられるからである。別の言葉では、「戦後の情勢」と同様に、現在は、「大膨張したマネー経済を、歴史的な観点から理解しない限り、実情が見えない状態」とも思われるが、実際には、このことが、「四次元の経済学」のようにも感じられるのである。
そして、この点に関して重要な事実は、「ケプラーからニュートンへ」という言葉のとおりに、「300年ほど前に、自然科学の世界で、次元の上昇が終了していた可能性」とも想定されるのである。つまり、現在の「自然科学」については、すでに、「三次元から四次元への移行」が終了している状況下で、「社会科学」という「人間の行動」を分析する学問においては、依然として、「三次元」、しかも、「天動説」の状態となっているものと考えられるのである。
その結果として、地球環境を破壊するほどの「技術開発」と「マネー経済の大膨張」が発生したものと思われるが、やはり、現在、必要とされることは、「高橋亀吉氏」の実勢経済学の再興とも言えるようである。(2020.3.7)
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政策転換の催促相場
今回の「コロナ・ショック」をキッカケとした「世界的な株価の急落」については、基本的に、「世界の中央銀行に対する政策転換の催促相場」だと考えている。つまり、「昨年の9月17日」に発生した「米国翌日物金利の急騰」に対して、「パウエルFRB議長」の対応が不十分だったために、「1999年」と「フラクタル(相似形)」の関係にある「2020年3月」に、大幅な株価の下落が発生した可能性である。
別の言葉では、「2008年のリーマン・ショック」から始まった「量的緩和(QE)」に関して、「根本的な見直し」が必要とされていながらも、「小手先の対応」で誤魔化されたために、私が想定する以上の「株価の下げ」となったようにも感じられるのである。つまり、「2008年」から「2019年9月17日」までは、「民間の金融機関が保有していた約8京円のデリバティブ」に関して、「中央銀行のバランスシート残高」により「約2京円」が処理された状況だったものと考えている。
より具体的には、「中央銀行が、民間部門から資金を借り入れる方法」により、今までは、「約2京円の想定元本」に関して、「約1割の2000兆円前後の不良債権」が解消されたものと思われるのである。別の言葉では、「デリバティブという金融商品が産み出したデジタル通貨」を利用することにより、今までは、「中央銀行が、民間資金を借り入れることにより、不良債権の償却が可能だった」という状況だったが、「昨年の9月17日」に発生した「金利の急騰」は、「民間部門の資金ひっ迫により、従来の手法である、民間金融機関からの借り入れが不可能となった状況」を表していたのである。
つまり、現在では、「政策金利の下げ」ではなく、「紙幣の増刷」による「中央銀行におけるバランスシート残高の増加」が必要とされていたわけだが、実際には、この方法が無視され、株価の下落につながったものと想定されるのである。その結果として、最近では、徐々に、「紙幣の増刷」が実施され始めているが、現在、必要とされている金額は、「約6京円の約1割」である「約6000兆円」だと考えている。
そして、今後の展開としては、「1999年」から「現在」までの「約23年間」が、今後、「2020年3月」からの「約23か月間」で繰り返される状況を想定している。また、この時の注意点は、「今までの23年間が、デリバティブの大膨張による超低金利状態」だったものの、今後は、「紙幣の大増刷による、超インフレ状態となる可能性」、すなわち、「大量の資金が、一挙に、実物資産に流れる状況」だと考えている。(2020.3.13)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9592:200331〕
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