本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(273)
- 2020年 9月 15日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
インフレ指数の盲点
「インフレやデフレは貨幣的な現象である」という点は、以前から指摘されていたことだが、具体的には、「商品」と「通貨」との関係性において、「商品よりも、通貨の量が上回った時に、商品の価格が上昇する」というものである。つまり、江戸時代などにおいても、「米」などの実物商品を考えた場合に、「収穫量が一定な条件下で、市中における通貨の流通量が増えた」というような状況下では、当然のことながら、「米の価格が上昇した」という展開となったのである。
しかし、現在の問題点としては、「商品の種類」が急増し、また、「通貨の種類」も多様化した事実が指摘できるわけだが、特に、「1980年代初頭」から始まった「デリバティブの残高急増」については、従来の経済学で、全く対応ができない状況となっているのである。つまり、現在の「インフレ指数」には、「デリバティブ」のみならず、「株式」や「土地」などの資産が含まれておらず、そのために、「現在、世界にどれだけの商品が存在し、また、どれだけの通貨が流通しているのか?」が把握されていないのである。
別の言葉では、過去20年あまりの期間に急拡大した「デジタル通貨」のほとんどが、「デリバティブなどの金融商品」に流れた状態となっており、そのために、現在の「インフレ指数」は、世界の実態を表していない状況となっているのである。そして、この理由としては、先進各国の政府とメガバンクが結託して、「超低金利状態」を作り出すことにより、「国家の財政破綻」を防いできた可能性、すなわち、「中央銀行が、国民の預金を借りて国債を買い付け、金利負担を減らしてきた状況」が指摘できるものと感じている。
しかも、最近では、「コロナ・ショック」により「人々の興味と関心が、お金よりも命の問題に向かった状況」となっており、その結果として、「自分のお金が、どのような状態になっているのか?」について、注意を払う余裕が失われた状況とも思われるのである。そして、このような状況下で、現在では、「日米欧の国々で、金融政策が完全に行き詰った状況」、あるいは、「紙幣の大増刷が、世界的に始まった状況」となっているのである。
別の言葉では、「紙幣」という「古典的な通貨」の発行量が拡大する状況下で、「デリバティブ」をはじめとした「金融商品」の量が急減しており、そのために、今後は、大量の「紙幣」が、「一次産品」や「二次産品」などの「限られた商品」に殺到するものと思われるが、現在の「貴金属の価格急騰」は、その兆候に過ぎず、今後は、「食料品」などにまで、この動きが波及するものと考えている。(2020.8.16)
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AI将棋が意味すること
数年前、囲碁の世界チャンピオンが「AI(人工知能)」に完敗した時に感じたことは、「これから、囲碁や将棋などが消え去るのではないか?」ということだったが、今回、「藤井二冠の将棋」から教えられたことは、「対立から共存へ」ということでもあった。つまり、藤井二冠が実践したことは、「AIとの勝ち負け」を考えることではなく、「AIから、何を学べるのか?」ということであり、実際には、「既存の常識を捨てて、最善手を考えること」とも思われたのである。
そして、この方法は、今後、「人生における最善手」を考える上で、大変参考になるものと感じられたわけだが、具体的には、「AI」には勝てない状況の「藤井二冠」でありながら、「将棋の真理」を考える上で、「AI」が役に立つことが、今回、はっきりと証明されたものと思われるのである。つまり、「数多くの選択肢から、どの手を指すことが、自分にとって最善なのか?」を常に考えることであり、この方法論を、「心理学や組織論」、あるいは、「経済学や金融論」などの「社会科学」に応用すると、新たな社会の構築に対して、大きな貢献が可能な状況のようにも感じられたのである。
別の言葉では、これから想定される「第二の枢軸時代」、すなわち、「東洋の唯心論が追求される時代」においては、「人々の意識と行動」を「AIで分析する手法」が有効な状況のようにも思われるのである。より具体的には、「弘法大師が主張する十住心論」などを、詳しく研究する必要性のことでもあるが、この時に注意すべき点は、やはり、「デジタル通貨の完全消滅」であり、実際には、「通貨の残高が、実質的に急減する事態」とも言えるようである。
つまり、今までは、「お金儲け」が、人々の行動を決定する「大きな要因」となっており、しかも、大量に存在する「マネー」を利用して、さまざまな行動が可能な状況でもあった。しかし、今後は、「マネー経済の急激な収縮」により、「所得の減少」と「価値観の変化」に見舞われる状況を想定しているが、実際には、多くの人々が悩み苦しんだ結果として、「人生の目的や意味」などを、改めて考える時間が訪れる可能性である。
つまり、「パンとサーカス」のような生活から、「地に足が付いた人生」への大転換が発生するものと考えているが、当面は、「文明法則史学」が教える「民族の大移動」のとおりに、「都会における生活」が難しくなった人々が、「地方」への分散を始める状況が想定されるものと感じている。(2020.8.21)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion10114:200915〕
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