SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】398 国連緩衝地El-Gurgueratエル・ゲルゲラトの戦闘
- 2020年 11月 27日
- 評論・紹介・意見
- サハラモロッコ平田伊都子西サハラ
西サハラの紛争地を西サハラはEl Gurguerat(エル・ゲルゲラト)と、モロッコEl Guerguarat(エル・ゲルガラト)と、そして国連は冠詞のEl をとってGurguerat(ゲルゲラト)と呼んでいます。 西サハラ最新情報では、El Gurguerat(エル・ゲルゲラト)に統一します。 国連地図でも世界地図でも西サハラは<西サハラ>と明記されているのに、モロッコだけが西サハラを<モロッコサハラ>と表記し、西サハラはモロッコの物だとアピールしています。 西サハラは国連総会でも国際法でも、はっきり、誰のものでもない未確定地域(未解決の植民地)と指定されました。 今年の国連第4委員会でも、脱植区民地化が急がれる地域と決議されました。 慌てたモロッコは、国連緩衝地帯に休戦協定を破って、軍事侵攻を始めました。
① エル・ゲルゲラトでアハマド青年が焼身抗議:
モロッコが西サハラ最南端の国連緩衝地エル・ゲルゲラトを軍事制圧したのは、この
国境の町がモーリタニアに抜ける人と物の中継点であるだけでなく、モロッコで基幹産業となった麻薬ハシッシの密輸通過地点でもあるからだと言われている。
2017年2月2日、モロッコ占領地・西サハラの南端にあるエル・ゲルゲラト・モロッコ検問所前で、モロッコ税関、モロッコ警察、そして仲間の西サハラ人商人たちが見守る中、アハマド・サレム・ワリド・レンゲイムスはガソリンを被って自らに火を点けた。彼は病院に運ばれたが、瀕死の重症を負っている。
事件の発端は、2017年1月27日に起こった。この日、西サハラ商人たちは夫々、荷物を緩衝地帯に隣接しているモーリタニアに運ぼうとしていた。ところが、モロッコ軍はその荷物を理由もなく没収した。アハマドは約10㎏の茶を不法没収されたうえ、彼の通行証でもあるモロッコ被占領民パスポートを、モロッコ兵に目の前で破かれた。アハマドを含む西サハラ被占領民の商人たちは、モロッコ検問所の前で座り込みデモを始めた。モロッコ占領地で西サハラ被占領民のデモや集会は、モロッコ占領当局から禁止されている。そして、アハマドと仲間たちは、モロッコ兵たちによって、力ずくで排除された。
パスポートを破かれ商品のお茶を没収されたアハマドは、仲間やモロッコ兵の目の前で、21才の命を自ら火を放って断とうとした。 この事件の後、モロッコ占領当局の妨害にもめげず、エル・ゲルゲラト周辺の西サハラ住民などが、通行の自由と麻薬反対のデモを頻繁に行うようになっていった。
エル・ゲルゲラト近郊で、モロッコの軍事侵攻と占領に
反対する西サハラ被占領民たちのデモ
➁ モロッコ国王ムハンマドⅥ世の王令を安保理に伝えたモロッコ国連大使:
「モロッコは、2020年11月12日の夜から13日の朝にかけて、モーリタニア国境に近い<ゲルゲラト国連緩衝地帯>に軍事侵攻した」と、国連緩衝地帯への軍事進攻、すなわち国連停戦違反を宣言した。
オマル・ヒラ―ル・モロッコ国連大使は、11月25日までに2通の報告書を国連安保理に送っている。彼はその中で、「11月17日にモロッコ国王モハンマドⅥ世陛下は、電話で国連事務総長に、「国連事務総長、あんたがが大失敗をやらかしたので、モロッコ自らがモロッコサハラの平定化を担うことになった」と、モロッコ国王モハンマドⅥ陛下の電話三行半のくだりを紹介した。そしてこれから、国王陛下はモロッコサハラのモロッコ化と国際社会でのモロッコサハラ承認の数を増大させていくおつもりだと、述べた。国連事務総長の大失敗とは、モロッコ国王の命令に背いたことで、具体的には西サハラ側にモロッコ・オトノミ―(植民地)案を承諾させれなかったことを指す。モロッコは、これから国連に干渉されずに、西サハラ植民地を既成事実化していくそうだ。
その一環として、モロッコはモロッコ占領地・西サハラに友好国の領事館を新設し始めた。アフリカの元フランス植民地、セネガルやギネア・ビサオや中央アフリカなどが、モロッコの経済援助などを代償に領事館を開いた。湾岸諸国では、11月26日、UAEアラブ首長国連邦に続きバーレーン国王に、モロッコ国王が直接電話をして、領事館開設の話を付けた。その代償に、UAEアラブ首長国連邦とバーレーンは、自分たちが先鞭をつけた<イスラエルとの国交正常化>を、モロッコ国王に呑ませたそうだ。
凄いね! 王様の電話って!!この調子で、西サハラ全土にどんどん軍事侵攻を続けて、モロッコの赤い国旗で覆っていくんでしょうね?
③ 国連は?:
慇懃無礼な三行半を叩きつけられた国連事務総長の報道官は、この問題に触れないようにしている。11月13日の国連定例記者会見では、「国連事務総長が国境の街での衝突を非常に懸念している」との総長声明を出したが、詳細は明らかにしなかった。この日記者会見に参加していた記者たち全員が、「どちらが先に停戦違反したのか?」、「18ケ月間も、国連事務総長が西サハラ特使を指名しないのはなぜか?」などなど、質したが、「声明以外のことは言えない」との、回答を繰り返した。その後も国連事務総長は、西サハラに関する声明を出していない。
国連事務総長の無能力さと怠慢は、モロッコ国王だけでなく西サハラや国際社会からも上がっている。西サハラ国連代表のオマル博士はアル・ジャジーラTVやCNN・TVなどに出演し、「モロッコによるエル・ゲルゲラト軍事侵攻は、モロッコが停戦協定と平和交渉と国連西サハラ人民投票を、拒否しているなによりの証拠だ」と語り、モロッコ軍事侵攻と同様に、モロッコ軍事侵攻を黙認する国連も強く糾弾した。
11月20日、AU議長のラマポーザ南アフリカ大統領は、国連事務総長と国連安保理に宛てて、「国連は、エル・ゲルゲラト国連緩衝地帯での両当事者による軍事衝突を止め、早急に民族自決権に基づく<国連西サハラ人民投票>を施行すべきだ」との書簡を送った。
一方、国連事務総長報道官は「西サハラの平定はモロッコがやる」とのモロッコ国王に忖度し、西サハラの軍事衝突現状を報告してこなかった。しかし、11月24日、「MINURSO(国連西サハラ人民投票監視団)は何をしているのか?両軍の交戦はあったのか?犠牲者の数は?」との記者の質問に、渋々、報道官は、11月13日にモロッコ軍が停戦合意を破って軍事侵攻をして以来、両軍の戦闘が続いていることを認めた。その上で、「砂の壁・地雷防御壁」の周辺で交戦中だ。MINURSOはモニタリングを続けている。我々は、両当事者が闘いを止め、交渉の席に着くよう説得している、、」と答え、次の質問者を促した。
「Referendum Now !(今こそ、人民投票を)」の声が、欧米で広がっています。
人民投票を主催すべき国連は、11月26日から4日間の感謝祭に入ったのをいいことに、具体策を出さないまま、責任追及から逃げ切ろうとしています。
Referendum (国連西サハラ人民投票)は、1991年に国連自らが出した和平案です。
「Referendum Now!(今こそ、人民投票を)」と、叫ばずにはおれません!
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2020年11月27日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10319:201127〕
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