SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】401 Quid Pro Quo クイド・プロ・クオ(交換取引)
- 2020年 12月 15日
- 評論・紹介・意見
- サハラモロッコ平田伊都子西サハラ
Quid Pro Quo(クイド・プロ・クオ)というラテン語が、国連を中心とした国際社会で大流行しています。 直訳すると、<何かのために何か>となり、転じて<見返り>、<物々交換>、<交換取引>、<闇取引>、等の意味に使われます。 その一番分かり易い使用例が、トランプ氏とモロッコ王が電話一本で決めた、<モロッコとイスラエルの国交正常化と、西サハラ領有権承認>の交換取引です。 ご両人は、西サハラも国連も無視して、勝手に西サハラに対するモロッコの領有権を認めてしまいました。
1975年のモロッコ、モーリタニア、スペイン三国秘密交換取引にそっくりです。
① トランプ最後?のホワイトハウス・メール:
このところ、トランプ氏のホワイトハウス・デイリーメール<1600Daily>>が途絶え
いる。週末にのみ流されてきたFive Stories President Trump Doesn’t Want You to Miss
(忘れちゃいけないトランプ大統領の五つの話)、は辛うじて送られてくる。今週は五つの話の、二番目にQuid Pro Quoクイド・プロ・クオ(交換取引)を取り上げていた。
要約すると、「モロッコは外交関係樹立に同意した。ドナルド・トランプ米大統領が木曜日に、第4番目のアラブの国としてモロッコとイスラエルの国交を正常化させ、その代償としてモロッコの西サハラ領有権を認めた。オムリ・ナーミアとラハブ・ハーコブとグリー・ファイ・キャシュマンの共同取材に、ホワイトハウス特別補佐官ジャレッド・クシュナーが<4年前から積み上げてきた外交成果だ>と、語ったそうだ」と、なる。が、出典は<エルサレム・ポスト>だ。ホワイトハウスはクシュナーを通して、イスラエルに牛耳られているようだ。
トランプ大統領退陣前にサウジとの国交正常化を決めようと、イスラエルとユダヤ人の娘婿クシュナーは画策したが、サウジは来年の話にしようと逃げた。そこでクシュナーは
、2018年から夫婦共々、王侯貴族扱いの接待を受けてきたモロッコとの正常化を急いだ。
モロッコはトランプにモロッコ領有権を呑ませるため、クシュナー夫婦に貢いできたのだ。
➁ Quid Pro Quoクイド・プロ・クオ(交換取引)に反発した国連記者団:
トランプ氏がモロッコと、国交正常化と領有権を不正取引した2020年12月10日の国
連事務総長報道官による定例記者会見で、Quid Pro Quoクイド・プロ・クオ(交換取引)
という言葉が飛び交った。
その引き金を引いたのが、アルジャジーラのベイス記者だった。「トランプ大統領発言について2点質問する。一点目はイスラエルとモロッコ国交正常化についての事務総長見解、二点目はみんなが口にしている<Quid Pro Quoクイド・プロ・クオ(交換取引)>だ。特に2番目の<QPQ>は、アメリカの外交理念をひっくりがえすだけでなく、国連安保理決議に違反する由々しき発言だ。国連事務総長は18か月間も総長個人特使を指名することもせず、西サハラ問題の解決をなおざりにしてきた。その責任は?」と問い詰めた。続いてエディ記者が、「国連の西サハラPKOは、国連が提案した西サハラ人民投票のために設置されたものだ。現国連事務総長は、国連西サハラ人民投票を安保理の決議に従って、遂行するつもりがあるのか?」と聞いた。アブドル・ハミード記者は、「二国間の他国領土を巡る交換取引は、国連安保理決議だけでなく国際法にも反するし、西サハラ人民の権利を無視したものだ。かねがね国連事務総長は人権と国際法を重視すると言ってきた。今回の勝手な二国間Quid Pro Quoクイド・プロ・クオ(交換取引)に対して、事務総長は制裁を科さないのか?」と、パレスチナ問題を引き合いに出して国連事務総長に迫った。この日の定例記者会見に参加した記者は一様に、西サハラを物件にしたトランプ一家とモロッコ王の不動産闇取引を強く非難した。
記者たちの質問は、見事に西サハラ人民の声を代弁していた。
翌12月11日の国連報道官による定例記者会見でも、常連のベイス記者、エデイ記者、アブデルハミド記者に加え、APやAFPの記者たちが加わり、国連安保理の制裁や国連事務総長の無能力さについて、質問が相次いだ。
12月12日、Climate Ambition Summit(気候希望サミット)の自慢をしようと国連事務総長は記者たちを集めた。が、期待外れに終わった。そして、最後にアブデル・ハミード記者が、「気候問題とは関係ないが、今、我々が直面している国際法と国連をないがしろにした二国間Quid Pro Quoクイド・プロ・クオ(交換取引)を事務総長はどう思うか?」と質問した。
やった~、ハミードさん!
➂ Quid Pro Quo クイド・プロ・クオ(交換取引)に反発する、事務総長、欧米、アフリカ諸国:
ハミード記者の力強い質問に喝采を送っていて、ウッカリ、国連事務総長の回答を記し忘れておりました。
ハミード記者の西サハラ闇取引に関する質問に、「気候問題とは関係ないが、解答する」と、国連事務総長は勿体を付けて切り出し、「西サハラに関して、全てが元のままだ。つまり、西サハラの解決は、個々の国同士による交渉に左右されるものではない。(西サハラ解決は)我々が後ろ盾となっている国連安保理決議の実施に依存している」と、答えた。
国連事務総長記者会見の前日、12月11日に、国連総会は西サハラを脱植民地化の当該地域と指定した。そして、国連脱植民地化委員会と安保理と国連事務総長に、西サハラ脱植民地化に向けての尽力を強く促した。
アメリカでは、超党派で上院議員や下院議員が猛烈にQuid Pro Quoクイド・プロ・クオ(交換取引)に反対している。ジム・インフォフェ上院武器委員会委員長(共和党)は、「ショックで無念だ!米国として恥ずかしい」と批判し、「トランプのモロッコ領有権容認は、国際法や国連憲章や米国理念に反している」と、ジェームス・ベーカー氏が糾弾した。ジェームス・ベーカー元米国務長官は1997年~2004年まで国連事務総長個人特使として、国連西サハラ人民投票の実現を目指した。
イギリス、アイルランド、スウェーデン、ロシア、アルジェリア、南アフリカ ジンバブエ、そして、内乱中にも拘わらずエチオピアも、このトランプとモロッコ国王の闇取引に反対声明を出した。
モロッコはトランプ氏を真ん中に、右にモロッコ国王、左にネタニヤフ・イスラエル首相をあしらって、外交大勝利をお祝いしています。 両当事者の一方である西サハラ難民政府SADR(サハラ・アラブ民主共和国)の大統領は、11月8日に、バイデン次期大統領へお祝の書簡を送りました。 その中で、「アメリカが西サハラの脱植民地化を目指す国際社会に呼応し、国連西サハラ人民投票の実現に尽力するように」と、お願いしました。
災い転じて福となりつつある、、と、信じています。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2020年12月14日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10367:201215〕
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