くらしを見つめる会つーしん №213から(2021年1月発行)/マスク社会で勧めたいこと
- 2021年 2月 23日
- 交流の広場
- 村山紀久子
マスク社会で勧めたいこと
「すみません。私は耳が聞こえないのでスマートフォンへ話してもらえませんか。」スマートフォンには音声認識アプリが入っており、話し言葉を文字に変換することで耳の聞こえない私は文字で聴くことができています。 郵便局では「速達ですか。普通郵便ですか。」と文字が入ってきます。農協では「カードの再発行は、八百円のお支払いとなります。」 町内の集まりでは「本日はお忙しい中をありがとうございました。最後の集まりになります。何かご質問はありませんか。それでは解散になります。」と文字が表示され、気持ち落ち着いて対応できています。皆さんには当たり前でも簡単な言葉も聞こえないのです。
専門用語を使う医療や教育現場では、認識率が下がりますが、私が使う「UDトーク」アプリは、前もって単語登録したり、支援者がいればその場で修正ができます。以前は認識率が悪かった音声認識ですが、日常で使う言葉は滑舌に話せば驚くほどです。また、外国語も可能ですし、ルビも付けることが出来ます。認識率を高めるには、①はっきり話す。②周囲の環境音が入らないよう静かな場で話す。③認識率が下がる場合は、筆談に切り替えるか手で打ちこむようお願いしています。このアプリは三十分無料で使用できます。皆さまのお傍にも置いてください。
先日のニュースです。「爆音コンビニ」という聴覚障害者体験を伝えていました。爆音の店の中は煩くて相手の声が聞き取れません。体験のミッションは、レジで「マスタードをもらう。」「お弁当を買う。」でした。「マスタード」という言葉を身振りで何度も店員さんへ伝えており、店員はケチャップで対応し、双方とも困っていました。「違う」という動作と再度の「マスタード」の身振りの繰り返しで、イライラと待っている周囲の様子から悲しくなってきました。
お店では「コミュニケーションボード」の作成を勧めます。よく使う言葉をボードに予め印刷しておき、指差しのみで伝えるものです。外国人対応も入れ、英語や絵、ルビも入れておきます。ボードにない言葉は筆談すれば正しく速く伝わり、コミュニケーションが成り立ちます。皆様には実行、周囲の方へ広めていただけますよう心からお願いします。
だれもが安心して笑顔でコミュニケーションできる場所が増えますように。(羽田野裕子)
♪こんな本いかが?
『まんがでわかる 日米地位協定』 平良隆久著 作画 藤澤勇希 小学館
日米地位協定によって日本の巨大な空域が米軍に占領され、米軍による事故や犯罪も日本の法で裁けない、米軍基地から有害な化学物質が大量に漏れ出しても日本は調査すらまともにできない。日本が米国に占領されたままのようなこの協定は、朝鮮戦争の時、韓国を支援した米軍に日本が与えた特権で、当時、日本が米軍の後方支援(基地で米軍人を保養させ、*武器を格安で調達)したこともあって、朝鮮半島は38度線で痛み分けとなった。朝鮮戦争休戦後、韓国は、デフコンと呼ぶ指標で国の緊張状態を表し、平時の5から戦時の1まで5段階に分け、デフコン3になった時しか米軍に特権を与えないと決めて、平時の主権を取り戻した。日本は平時の今も戦時と同様の特権を米軍に与えたまま。これを解くキーワードは韓国のように平時と戦時を分けることだと著者は言う。軍事関係の専門家である著者は日本の自衛隊の戦力の充実度は中国を上回るもので、米軍に依存しなくても尖閣も守れる、とも。日米地位協定によって、今も日本(とりわけ基地)では戦時と同じように人権も命も守られていない。それを変えていくためには、まず、本著のような軍事的視点も合わせた情報を知って、政治や人々の意識を変えていくことが不可欠だろうと考えさせられた。
*朝鮮特需と言われるが実際は武器や物資を米軍に格安で提供したため当時の日本は赤字。経済成長は朝鮮戦争後。
編集後記
今号は本の紹介で「まんがで読む日米地位協定」を取り上げました。敗戦国のドイツ・イタリアや朝鮮戦争で米軍と戦った韓国も、知恵を出して粘り強く交渉することで自国の主権を回復させているのに、日本は米国・米軍の思うまま。地位協定に限らず、政・官・業のトップは国民の命や暮らしより、自分たちの政治生命や利権を優先させてきたとしか思えません。沖縄と本土では基地問題や日米地位協定への思いに温度差は大きく、マスコミも含め情報量にも格段の違いがあります。沖縄の人々が基地によってどれほど苦難を強いられても本土の多数は無関心。でも、福島原発事故の被害者が分断され切り捨てられているように、踏みにじられる命や人権の問題に目を背け続ければ、いずれ我が身。現在のコロナ禍で、命が軽んじられている政治とも根っこはつながっています。日本を本当の意味で命を大切にできる国にするためには、日米地位協定も含め、様々な問題を直視して、見直していくことが必要だと思います。今年は選挙の年、コロナを機に、大転換の一歩にしたいです。 (村山起久子)
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