本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(337)
- 2021年 12月 11日
- 評論・紹介・意見
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現代のミダス・タッチ
ギリシャ神話に登場する「ミダス王」は、「ワインの神のバッカスを助けたことにより、触れるものが全て黄金に変わる能力を授けられた」と伝えられているが、ご存じのとおりに、この神話には悲しい結果が待っており、実際には、「食べ物や飲み物までもが黄金に変わり、最後には、最愛の娘だけではなく、身投げしようとした川の水までもが黄金に変化した」とも述べられているのである。
つまり、「どれほど多くの富や黄金を持っていても、決して、本当の幸せを得ることができない」ということが、この神話が示唆することとも思われるが、一方で、現在の生活を反省すると、「現代版のミダス・タッチ」とでも呼ぶべき状態が発生しているようにも感じている。具体的には、「デジタル・タッチ」とでも呼ぶべき状況、すなわち、「DX革命」という名のもとに、「全てをデジタル化すべきである」という認識のことだが、実際には、「デジタル通貨が流入した商品の価格が急騰した状況」のことである。
より詳しく申し上げると、「2008年前後のGFC(金融大混乱)」までに発生した状況としては、「デリバティブの大膨張により、金融商品とデジタル通貨が、世界的に大増殖した」という状況だったのである。しかし、その後は、「デリバティブの実質的な崩壊」と「デジタル通貨の活用により、デリバティブのバブル崩壊を隠そうとする動き」が混在した展開だったものと想定されるのである。
その結果として、「金融のメルトダウン」が発生し、実際には、「デリバティブから流れ始めたデジタル通貨が、金融の逆ピラミッドの中で、さまざまなバブルを発生させた状況」となったのである。具体的には、「国債や仮想通貨、あるいは、GAFAなどの株式」などのことだが、現在の問題点としては、「大量に存在するデジタル通貨が、仮想現実の世界からリアル経済へ流れ始めた状況」とも言えるのである。
つまり、金額的、かつ、数量的に、きわめて小さな「実物商品」へ、大量の資金が流れ始めた結果として、「供給制約」や「ボトルネック」の現象が始まったわけだが、この時に注意すべき点は、「デジタル通貨への信頼感」が「ペーパーマネーへの不信感」に、瞬間的に転換する可能性である。別の言葉では、「紙幣の大増刷が始まるとともに、世界中の人々が、一斉に、換物運動に走り始める可能性」のことでもあるが、このことは、「デジタル通貨を絶対視した人々が、今まで、心や感情などを切り捨ててきたことに気づかされる過程」とも言えるようである。(2021.11.3)
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BIS規制のバーゼルⅢ
「BIS規制」とは、「バーゼル銀行監督委員会が公表している、国際的に活動する銀行の自己資本比率等に関する国際統一基準」のことであり、現在は、「2010年に制定されたバーゼルⅢが、2013年から段階的に施行されている状況」となっている。そして、現在、この点に関して、「貴金属市場」で注目されていることは、「2022年から、金(ゴールド)の混蔵保管が難しくなる可能性」である。
より具体的に申し上げると、現在の金市場では、「リアルゴールド(現物の金)」と「ペーパーゴールド(先物で売買される金)」の二種類が存在し、「市場価格は、ペーパーゴールドによって決定されている」と言われている。つまり、「政府やメガバンクなどによる価格操作が、金利のみならず、貴金属の市場にまで及んでいる」と理解されており、この時に、大きな役割を果たしていたのが、「デリバティブ(金融派生商品)」であるとも想定されていたのである。
ところが、今回の「バーゼルⅢ」の実施により、「2022年からペーパーゴールドの運用が難しくなる可能性」が指摘されており、具体的には、「大量の空売りの買戻しが、ペーパーゴールドの世界で実施される可能性」が噂されているのである。つまり、今後、「貴金属の価格が急騰する可能性」が予想されており、この点については、以前から申し上げているとおりに、「海中のビーチボールのような状態」とも考えられるのである。
別の言葉では、「大量に創りだされたデジタル通貨」を使い、今までは、「ほとんどの市場で、価格が統制されていた可能性」が指摘されているが、今後は、「さまざまな実物商品の価格が、正常な状態に戻る可能性」が想定されているのである。しかも、このことは、「大量に存在する世界のマネーが、実物商品の価格を抑え込んでいたために、本来の姿よりも多くの実物資産が浪費された可能性」も意味しているのである。
そして、このことが、現在の「地球環境悪化の原因の一つ」とも思われるが、今回の「バーゼルⅢの実施」については、「実体経済」と「マネー経済」との「異常な関係」が正常化されるキッカケの出来事になるものと考えている。つまり、「金融界のブラックホール」に存在する「大量のデジタル通貨」が、「紙幣の形で、現実世界に大量放出される可能性」のことであり、この時に深く認識される事実は、「お金」は「金(ゴールド)」であり、「過去5000年間に渡り、この原則が維持されたものの、1971年のニクソンショックをキッカケにして、単なる数字が通貨として利用され始めた展開」だと考えている。(2021.11.9)
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金利とインフレ率との乖離
11月10日に発表された「米国のCPI(消費者物価上昇率)」は「+6.2%」であり、「インフレの到来を、より一層、確信させるような統計数字」であったが、一方で、「米国の一年国債の金利」については「+0.15%」というように、インフレ率とは、大きな乖離が存在する状況だった。つまり、現在の情勢は、従来の経済理論では考えられないような展開となっているが、この点を理解するためには、やはり、「時間の経過」を考慮した「四次元の経済学」が必要な状況のようにも感じている。
つまり、現在の「インフレ率」は、「対象となる商品が、ほとんどの場合、実物資産となっている状況」であるものの、一方で、「金利」は、「大量に存在するデジタル通貨とデリバティブなどの金融商品との関係性によって決定されていた状況」とも言えるのである。別の言葉では、「金融界のブラックホール」の内部で、「デジタル通貨とデジタル商品とが交換されている間は、インフレ率の上昇が隠されていた状況」だったものの、現在では、「徐々に増刷された紙幣が、実物商品へと流れ始めた段階」とも言えるのである。
より具体的には、「デリバティブのバブル」によって隠蔽されていた「金融界の闇」が、表に出始めた状況とも想定されるが、今後の注目点は、「強引に押し下げられていた金利の動向」だと考えている。つまり、これから想定される展開は、「一年物の国債金利が、インフレ率と同様に、6%前後にまで急騰する可能性」であり、このような状況下では、「金利の支払いにより、米国の国家財政が破綻する危機」も予想されるのである。
その結果として、これから予想されることは、「世界全体で、大量の紙幣が発行される展開」とも思われるが、このことは、「コロナ・ショック」でマヒ状態に陥った「実体経済」に関して、「金融界の白血病」という「マネー経済のマヒ状態」が加わることを意味しているのである。つまり、過去20年あまりの「世界的な超低金利状態」が、一挙に、大転換の時期を迎える可能性も想定されるわけだが、この点に関して重要なポイントは、やはり、「5000年ほど前に人類が発明したお金というのは、基本的に、金(ゴールド)が根本である」という事実である。
つまり、現在では、「インフレヘッジ」に関して、「ビットコインか、それとも、金(ゴールド)か?」という議論が、海外で発生しているようだが、この点に関して、重要なポイントは、やはり、「歴史的観点から、物事を考察する態度」であり、私自身としては、「金を始めとした貴金属」をお勧めする次第である。(2021.11.11)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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