分断、蔑視、そして戦争
- 2022年 4月 22日
- 評論・紹介・意見
- 松井和子
中国を標的として対抗する Quad (クアッド)、安倍政権の時に出来た。‟自由や民主主義、法の支配の価値観を共有する”日本・アメリカ・オーストラリア・インドの四カ国戦略的同盟だというが、どう見ても軍事同盟だ。合同軍事演習もしている。
このおかしい動きに、戦争を起こしたいのかと嫌なものを感じていたら、2 月ロシアの戦車がウクライナとの国境に集結している様子が盛んにテレビに出てくるようになった。一気に世界の視線は、東欧へ。ロシアのプーチンが「協定」と「ミンスク合意」を何度も繰り返し述べている。調べてメモ。相手の NATO とウクライナ政府とはどう言っているかと耳を澄ませたが、聞こえてこない。国同士の約束なのに、対話がない。おかしい、こんなことってあるのだろうかと疑問が沸いた。
「協定」は冷戦終結で東西諸国との間で交わされたもの。「ミンスク合意」は東のロシア人が多い地方への 8 年に亘るウクライナ政府軍による攻撃について、ウクライナ政府とロシア・仏・独の間で交わされたものだ。どちらも西側、ウクライナはノーコメント。戦争が続いてきた中近東以上に気になっていた。
ウクライナが舞台になっている!
1980 年以降私が出会った東欧の国々や人々を思い出す。冷戦終結で平和な暮らしとなったのだろうか。知り合いの家具屋さんから聞いた「イタリアの家具は東欧で作っている」、安い賃金で作れるから! そしてヨーロッパには東欧の国々から大勢の人が出稼ぎに来ていた。貨幣格差があることを知った。そして 2013 年秋に、私はウクライナ・キエフとベラルーシを訪れていた。キエフは何か気になった。大勢の人が集まっていた広場にはバリケードがあった。宿のロビーも電車の中も、人びとの表情が何となく暗い。東欧の人たちの穏やかで優しい雰囲気が見られなかった。何かある。
ロシアが国際法を侵して、侵攻した!
その日もっとびっくりは、海外ニュースで流れたロシアが国際法を無視して侵攻した!
アメリカの議場、バイデンが入って来てロシア侵攻を告げる顔はニコニコ、バイデンはじめ議員たちの止まらぬ高笑いと拍手が続いた。
戦争が始まったというのに! 住民に犠牲者が出るだろうに! 喜んでいる国がある! 子どもたちを想い、胸がつぶれそうになった。
一気に世界中がロシア叩き!
アメリカはじめ西側諸国は、日本も含めウクライナを支援、自国の軍事費を増やし、ウクライナに武器を提供という。何と愚かな!!
世界戦争になりかねないこの戦争を何とか抑えて止めようとしない大国と言われる西側諸国、そして日本だ。
「あのおそろしい戰爭が、二度とおこらないように、また戰爭を二度とおこさないようにいたしましょう」と文部省発行の教科書『あたらしい憲法のはなし』で、子どもたちに教えたことはどこに行ったのか。侵略戦争の過ちを犯した日本は何をすべきなのか。経済制裁は、世界中の人たちの生活を直撃する!
そして常套手段のように、最大の経済制裁がロシアに課せられた。何の罪もない一般のロシア人、海外で暮らすロシア人も攻撃の対象になった。日本では駅の案内板からロシア語が消されることまで起こった。原発事故で避難した福島の子どもたちをいじめたように、罪のない人までをいじめている。それどころか、経済制裁はすべての国に影響し、世界中が混乱するだろう。コロナで滞っていた世界の経済状況もあり、物不足、インフレ、買い占めなどが予想され、一般庶民を苦しめる。そんな中で、力を持つ国、大手グローバル企業は、笑っているのではないか。やってはいけない手段だ。
民族の歴史、分断と蔑視
ウクライナの歴史は複雑だ。東西の通り道・要衝であっただけに、いろんなことがあったと想像できるが、一筋縄では理解できないほどだ。絶えず分断されたその歴史の苦しみと悲しみが、他者への攻撃へとなっていったのだろうか。
そして第二次世界大戦時、ウクライナ西部では、ナチス・ヒトラーと一緒になってユダヤ人大量虐殺に手を貸した。裁かれることなく、その思想は戦後も温存され、ユダヤ人でなく、ロシア人を敵とする民族主義者を産み出した。
しかし・・・である。その彼らに早いうちから武器を与え訓練してきたというアメリカがいた。事実である。狙いは何なのか。同じようにロシアを敵としたからか。
日本の歴史
第二次世界大戦となった日本の戦争は、朝鮮・中国を自分のものとするために嘘を言いでっち上げ、始まった。日本の民衆をその戦争に駆り出すために、朝鮮人・中国人を劣等人間として貶めた。「国権拡張」を願いとして始めた福沢諭吉主幹の「時事新報」には、朝鮮人・中国人への蔑視の言葉が頻繁に登場した。彼は 1884 年朝鮮のクーデター(甲申政変)の手助けをし、金も武器も与えている。蔑視と分断で一億総動員体制をつくり、武力攻撃を相手が起こした事変と偽り、日本は侵略を可能にした。それはアメリカによる日本本土への空爆や沖縄の凄惨な悲劇を産み出し、アメリカから落とされた原爆で敗戦となるまで続いた。核被害は今も続いている。その反省から生まれた日本国憲法を、戦中に生まれた私たち世代は学校で学んできた。世界に向かって日本のこれからを、武力でなく外交で問題を解決すると誓ったのは、77 年前だったはず。その教訓を生かし役割を担うのが本来するべきことではなかったのか。
でないとしたら、77 年過ぎてもなくならない、在日朝鮮人や朝鮮・中国に対する日本の姿は、日本が今も他民族蔑視の思想を持ち続けているということであり、日本人である私たちがそれをよしとしていることにも繋がる。
戦後私が生きてきたこれまでは、日本が戦場となることはなかった。
ウクライナで起こった戦争は、一日も早く世界の知恵で、声で、双方の武力を止めるべきだ。私たち一人ひとりも戦争止めよと声を上げよう。
ウクライナの、ロシアの、悲しみが世界を覆っている。
(20220415 記)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion11968:220422〕
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