SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】493 TICAD8を蹴ったモロッコ
- 2022年 9月 4日
- 評論・紹介・意見
- TICAD8アルジェリアサハラモロッコ平田伊都子西サハラ
TICAD8(東京アフリカ開発国際会議8)の首脳会議が、北アフリカのチュニジア首都チュニスで8月27日と28日に開催され、<チュニス宣言>を採択して終わりました.
モロッコは、チュニジア大統領自ら西サハラ大統領を空港に出迎えたのが気に食わないと参加せず、9月になっても愚図っています。
① モロッコの西サハラ排除:
モロッコの西サハラ排除は病的だ。リビアのカダフィが<ワーヒダ・アフリキーヤ(アフリカは一つ)>をスローガンにして、アフリカの首脳たちを招待した時、モロッコが「西サハラ人が多すぎる。追い返せ」と、カダフィに文句をつけた。西サハラは大統領と閣僚をリビアに送り込んでいたが、アフリカを馬鹿にしていたモロッコは要人を送らなかった。結構、優しいカダフィは「せっかく来てくれたんだから」と、定員オーバーを気前よく受け入れた。
2022年8月26日、西サハラ大統領を空港で迎えたチュニジア大統領に腹を立てたモロッコは、TICAD8をボイコットすると声明を出した。そして、チュニジアに釈明を求めた。MAP(モロッコ国営通信)は、「チュニジア外務省は、モロッコ王国の国策と国益を逆なでする敵対行為を弁解しようとした、、が、モロッコ外務省報道官は、言い訳は不正確で間違いだらけだと語った」と、再び批難記事を出した。
それでも気が治まらないモロッコは、<西サハラ代表団反対>のロビー活動を、モロッコに友好的な国々を相手に展開した。アザリ・アスマニ・コモロ大統領、シメオン・オヨノ・エソノ・アンゲ・赤道ギニア外務大臣、エヴァリスト・ンダイシミエ・ブルンジ大統領、、などが、「TICADにとって非常に重要なモロッコが不参加とは、残念だ」と、異口同音の言葉、、正確にはモロッコが用意した台詞を読んだ。
それでも治まらないモロッコは、マスコミ・ミニコミ相手かまわず煽った。ANPM(モロッコ報道組合)は「チュニジア大統領府が分離主義者(西サハラ)たちをTICAD8に正式招待したことは、モロッコに対する背信行為であるだけでなく、大マグレブ諸国間の緊張を高めてしまった」と、8月30日にチュニジア大統領府を脅かした。
<アトラス・コリエ(アトラスの郵便物)>というチュニジア反政府ネッ十紙は、「政府は新たな紛争の火種をまいた」と、8月30日に政府批判をした。
モロッコの西サハラ排除は、AU(アフリカ連合)の前身であるOAU(アフリカ統一機構)が、西サハラ難民政府のSADR(サハラウィ・アラブ民主共和国)を正式に参加国として認めた1982年に始まる。1984年、西サハラ加盟承認に腹を立てたモロッコは、席を蹴って退場し、以来2017年までAUアフリカ連合から脱退していた。しかし、AUアフリカ連合が国際社会での発言力を強めてくると、モロッコはAU乗っ取りを目論んでAUに復帰した。モロッコの目的は、AUから西サハラを追放しTICADから西サハラを排除することだった。
TICAD8の正式招待席についた、民族衣装のガリ西サハラ難民大統領
② ますます繁盛のアルジェリア詣で:
<排除外交>に埋没するモロッコと対照的なのが、<人道外交>に邁進するアルジェリアだ。8月27日にフランスと<アルジェ宣言>に署名してから、テブン・アルジェリア大統領のもとには、ひっきりなしにお客さんが殺到している。「アルジェリアはアフリカの利益を優先する」と、テブン・アルジェリア大統領がマクロン仏大統領との共同記者会見で表明してから、ファンが増えた。
8月29日、アビィ・アハメド・エチオピア首相がアルジェに入った:WFP(世界食糧計画)調達23,000トンのウクライナ穀物輸送船第一便が、約2週間の航海を終えて、エチオピアの隣国ジブチに8月29日、入港した。但しWFPが目指すエチオピア・ティグレ着には時間がかかる。<黒海穀物取引>による第一便貨物船が何故エチオピアのテイグレに決まったかというと、テドロスWHO事務局長が「(テイグレにいる)私の家族が、飢えに苦しんでいる」と、アピールしたからだ。飢えに苦しむ家族は、テイグレ以外の北部エチオピアのいたる所にいる。国連報道官の9月1日報告を待つまでもなく、テイグレを含む北部エチオピアでは、アビイ首相が率いる政府軍と、テドロスが支援するテイグレ人民解放戦線の戦闘が続いている。国連が送るウクライナ産穀物はテイグレ以外の餓えたエチオピア人に届く可能性は薄い。アビィ首相はアルジェリアに助けを求めた。
8月30日、31日と元ポルトガル植民地ギニア・ビサオの大統領一行がアルジェリアを公式訪問した。ウマロ・シソコ・エンバロ大統領はECOWAS(西アフリカ経済共同体で2022年度の議長を務めている。ECOWAS 西アフリカ経済共同体)は、フランスの肝いりで始めたフランス共同体的組織だったが、フランスが内紛の続くマリからフランス軍を撤退させた。MINUSMA(国連マリ多面的統合安定化派遣団)PKOは、度重なる基地襲撃に怯えている。マリ、ニジェール、を含むサヘル(砂漠とサバンナの境)地方の治安回復は隣接するアルジェリアの課題でもある。ウマロ大統領はアルジェリアに助けを求めたようだ。
9月1日、大洪水に襲われた隣国モーリタニアのSOSに、アルジェリアは75トンの支援物資で即答した。昨年、開通したモーリタニア・アルジェリア横断道路が洪水で寸断されているので、アルジェリアは輸送機2機を発進させた。
③ アルジェリアに麻薬を拡散するモロッコ、:
「アルジェリアは、日本とアフリカのウインウイン関係を提唱する」と、TICAD8に参加したアルジェリア代表が表明した。
9月1日、モロッコの気はまだ治まらない。ムスタファ・バイタス・モロッコ政府報道官が、「チュニジア大統領による分離主義者たち(西サハラ)への応対は重大で、正当化されえない愚行だ」と、週に一度の閣議後に開かれる記者会見で、チュニジアを公式批難した。「モロッコ社会の様々な層から、モロッコ人の感情を逆なでする行為だとの声が上がっている。チュニジア人もみんな、(大統領の)この行為を明確に否定している、、」と、付け加えた。
9月2日、まだ収まらないモロッコは、林外務大臣をテレワークに呼び出し、「日本は西サハラを正式に国家承認をしていないから、TICAD8に招待しなかった」などと、言質を取った。
アルジェリアを<少年兵を難民キャンプで養成するテロ国家>と因縁をつけて罵倒しつつ、モロッコは、モロッコ原産麻薬<ハシッシ>を、アルジェリアに密輸し続けている。アルジェリアが市場ではなく、アルジェリアを中継点にして欧米に流そうとしているようだ。8月31日も、モロッコとの国境近くで、モロッコ原産麻薬ハシッシの大捕り物があった。 アルジェリア国防省が、「769キログラムの麻薬ハシッシを摘発し、53人の麻薬業者を逮捕した」と。発表している。
もっとも、モロッコはハシッシを王営産業にしたので、王の配下にあるハシッシ栽培製造は犯罪にならない。
そして、国連は、「9月2日に西サハラ国連事務総長個人特使スタファン・デミストラが、当該地域視察の皮切りにアルジェリア・チンドウーフにある西サハラ難民キャンプに入った。そこで、ポリサリオ西サハラ難民政府の幹部と会談した」と、発表した。
国連は、デミストラ西サハラ国連事務総長視察の詳細を、一切、明かしてくれません。 おいおい報らせるそうです。 事後承諾で責任逃れをするのが、最近の国連です。
突発事件があったら、号外を出します。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2022年9月4日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12351:220904〕
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