くらしを見つめる会つーしん 2022年8月発行 NO.221から
- 2022年 9月 6日
- 交流の広場
- 村山起久子
これから「脱成長の社会に!」と大声で言います
斎藤幸平著「人新世の資本論」、脱成長(・・・)経済のことばに魅かれ買った。途中までしか読めていないが、メディアで語る斎藤氏の話もくっつけると、「成長を追いつつ、温暖化を止めるのはもう無理。マイナス成長でも幸せな暮らしはできるよ」ということ。彼はこれを具体的数値をあげて説明する。
わたしは「地球はもう、もたないんじゃないか」と前から思ってきた。しかし、「省エネ」とか「グリーンニューディール」「SDGs」など、成長と自然環境の改善は両立できる、に反論できずにいた。この本に出会い、「あんたを待ってたよ。脱成長を大手を振って私も言うよ」というのが今の気持ちだ。
例えば自動車、ハイブリッド車が増えてガソリンの消費量が減り、CO2の排出量は減る、ハズ。でも、売らんがために、めちゃでかい車体ばかりになっている。重いと走るのにも生産段階でもエネルギーを多く使う。CO2削減の目標は後ろに追いやられる。儲けることが至上命題なのだ。テレビや冷蔵庫も全く同じことが言える。
世界に目を向けると、先進国の物の生産のために途上国の環境破壊が進む。技術革新が快適な生活を作ったというのは相当嘘で、途上国に成長の負の部分を押し付けているだけだ。
巨大台風などの異常気象、高温で生産物が全滅、山火事は頻発している。あと20年、私が死ぬまで地球はもってくれるだろうか。それまでに何とかしたい。
まずは公の改善。光熱費や医療介護など社会的インフラの無料化。これにかかるお金は私たちからだまし取っている資本家や大金持ちが出せばよい。世界の資源や労働力の収奪競争とサヨナラすれば軍隊は要らないので、その分のお金も回せる。
地域で生活品や食料、エネルギーを自給する。自転車や歩いての移動が快適な住環境、公共交通の充実。GDPは増えないけれど、地域でお金が回り大資本に行きません。
「資本家の戦略=しっかり働いて魅力的な新製品を買おう」から「働く時間を減らし、生活用具を作ったり、漬物を漬けたり専門家に任せていた衣食住を取り戻す。お金を使わず仲間や他人と過ごす時間は楽しいね」に価値観を変換する。
今は脱成長を唱える政党はない。日々の暮らしを変え共感者を増やしていくしかないけど、地球は待ってくれるだろうか?
百姓のマー君
――一部略――
♪こんな本いかが?
日米同盟・最後のリスク なぜ米軍のミサイルが日本に配備されるのか
布施祐仁著 創元社
「米軍は日本を守ってくれる」と思っている人は多いが、米公文書や米高官の発言などから「米軍は日本を守らない」。逆に、戦後、米軍の思う世界戦略に「米軍の指揮権の下、自衛隊をいかに利用できるか」が求められ、日本はずっと譲歩を迫られてきた。平和憲法を盾に踏みとどまってきたが2014年、安倍政権の時の安保法制定で、日本が直接攻撃されていなくても(憲法で許されていない)米軍の作戦を支援するための武力攻撃が可能になった。現在、南西諸島で、自衛隊のミサイル配備が進められ、米国は日本全国に中国に向けての中距離ミサイルを配備しようとしている。かつてキューバ危機が起きたのはソ連がキューバに中距離ミサイルを配備しようとしたためで、ミサイルがあるところは真っ先に攻撃対象になり、核戦争の危機さえ招く。米中戦争になれば戦地になるのは日本。防ぐためには、ASEANがベトナム・カンボジア・ラオスに、反共包囲網を敷くのでなく平和共存を目指し、戦争のない平和な東南アジアを築くことに成功したように、今、日本が行うのは抑止力強化でなく「仲介外交」の促進だと著者は言う。危機が煽られているが、現実はどうなのか。米国から古い武器ばかり買わされ、外交努力をしない日本。米国発の戦争に巻き込まれる危機こそ避けなければと思う。
〈編集後記〉
安倍元総理が凶弾に倒れて以後、統一教会と政治の関わりが明らかになりました。以前から、安倍総理との関係などネット上で批判されていましたが、陰謀論のようなものかと半信半疑でした。情報を知るにつけ、そのあまりの闇の深刻さに絶望的な思いになります。安倍元総理の祖父・岸信介元総理が統一教会日本支部の設立に協力したことから始まって、岸信夫・防衛大臣や二之湯・国家公安委員長など国の根幹を担う防衛・警察のトップが教団と関係を持ち、自民党議員の秘書や選挙スタッフとして多くの教団信者が入り込んでいる現状は恐ろしいばかりです。統一教会の本部は韓国にあり、北朝鮮とも接点があるそうですが、どこの国であれ、政権中枢にそうした人が入り込むことによる(情報漏洩等)リスクについての危機意識はないのでしょうか(国防を言い立てながらあまりに無思慮!)。
統一教会は、(今も信者から毎年600億円余りの献金があり)35年間で1237億円以上の被害を生んで、山上容疑者を含めどれだけ多くの家庭を壊したか知れない危険な団体です。なのに、摘発もされず宗教法人として守られてきたのは、「政治の力」。政治の力によって他にもどれだけ正義や民主主義、法が歪められてきたことでしょう。
さて、「国民の権利や自由を守るために国がしてはいけないことを定めた(権力に歯止めをかける)憲法」を、「国民に守らせるための法律」に変えたい国会議員が先の選挙で3分の2を超えました。その自民党の憲法改正草案と、統一教会の教えが実に似通っているとの指摘があります。改憲草案からは「いかなる宗教団体も国から特権を受け、又は政治上の特権を行使してはならない」という現憲法の政教分離の原則も削られています(これは公明党も絡むのかもしれません)。ジェンダー平等を否定し、介護も育児も家族、女性に押し付ける前近代的な主張がまかり通っているのも統一教会の影響が少なくないようです。統一教会は政治家との関係を深めることで、政治への関与・支配を試み、実際、かなり目的を果たしている様子。政権中枢にカルトが入り込んでいた現状が明らかになったのに、特にNHKや新聞は及び腰です。今、追求せず見過ごすことは、このまま日本がカルトに支配されることを追認するようなもの。憲法改定への論議も含め、こうした団体と関係のある政治家に政治を任せるのはあまりに危険です。国会・マスコミ・市民、皆の力で一刻も早く実態を明らかにし、カルトと政治の癒着をきっぱりと切り、真っ当な政治を取り戻せるかが問われています。 (きくこ)
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。