ていこう原理 13 無思考、従属の国民づくりの操作と統制
- 2023年 1月 9日
- 時代をみる
- 長谷川孝
◆軍拡、国葬に賛成、若い層に多い問題
ろくな議論も根拠の説明もなしに閣議決定。国葬も、専守防衛の大転換というべき軍拡・増税も、です。原発への再依存ももくろんでいます。内閣支持率が二五%とか三一%とか(毎日、朝日新聞世論調査)と最低の岸田内閣が、行政的な強行を続けています。アベ政権の行政独裁(保阪正康氏の指摘)の全面継承です。
他国のミサイル基地などを攻撃する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保持について朝日新聞の世論調査では、賛成が五六%で反対は三八%だったが、「一八~二九歳の六五%が最も高く、七〇歳代の五一%が最低」とのことです。国葬への賛否でも、年配者に反対が多かったのに、若い層(と云っても、六〇歳以下くらい)では賛成が目立ちました。
こっちが軍備を増強すれば、あっちも軍事力強化、というのが普通の市民の常識のはずですが、軍拡で安心という人が、それも若い人に多いとは……。若い人たちの、保守化、無思考化、状況任せ化と
いう傾向の表れかも、と気になります。
◆民意の洗脳…防衛省の世論操作研究
「防衛省が人工知能(AI)技術を使い、交流サイト(SNS)で国内世論を誘導する工作の研究に着手したことが9日、複数の政府関係者への取材で分かった。インターネットで影響力のある『インフルエンサー』が、無意識のうちに同省に有利な情報を発信するよう仕向け、防衛政策への支持を広げたり有事で特定国への敵対心を醸成、国民の反戦・厭戦の機運を払拭したりするネット空間でのトレンドづくりを目標としている」(二〇二二・一二・九、東京新聞Web、共同通信)。
学校教育を統治機構化し、メディア統制を強め、さらに防衛省というより「軍隊」が都合の良い世論(せろん)操作も始めているのです。この報道に触れて、前川喜平氏は次のように書いています。
「そこには主権者である国民を洗脳しコントロールしようとするあからさまな意図を露呈している。しかし政権側はすでに静かに広く国民を洗脳してきた。NHKをはじめとするメディアに介入し、学校の道徳教育や歴史・公民教育を支配し……国民よ、国に騙されるな。正気を保とう。自分の頭で考えよう」(東京新聞、一二・一一)。
学校教育の統制・支配を進めた文科省で、高級官僚として事務次官にまでなった人の、内情を踏まえたであろう発言だけに、しっかりと読んでおきたいです。
◆憲法・権利教育を学校教育の根幹に
主権者にとって極めて(重要なはずの憲法学習が、極めて軽く薄く扱われています。主権者意識は育てず、国家に役立つ「国家構成員」としての国民づくりを目指しているのが、現行の改悪教育基本法だと思います。一九五〇年代から続いた「戦後教育」への攻撃は、一九七〇年代後半から強まり、二〇〇六年の教基法大改悪で、いわば「完成」のような状況です。
憲法学習は一九七九年に発表された論文で、初期の社会科では「憲法が教育の基本原則を示す」として憲法の精神の普及が目指されたが、七〇年代末にはすっかり後退した、と指摘されています。現行学習指導要領社会科では小学校中学校とも、憲法を学ぶまとまった項目はなく、天皇への理解と敬愛の念を深めることを求める項目があります。
自分の頭で考える主権者は、憲法学習でこそ育つ。教育の自治の中で、憲法学習に取り組みたいと願います。 (読者)
初出:「郷土教育761号」2023年1月号より許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye5005:230109〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。