本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(394)
- 2023年 1月 21日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
2023年度予算案の落とし穴
12月23日に発表された「日本の2023年度予算案」については、明らかな「落とし穴」が待ち構えているものと思われるが、具体的には、「金利の上昇」が、ほとんど考慮されていない状況のことである。別の言葉では、「イギリスのトラス前首相」と同様に、「インフレ率や金利の上昇を軽視した結果として、予算案の実施が難しくなる可能性」であり、実際には、「国債費の急増と新規国債の発行が難しくなる可能性」である。
より詳しく申し上げると、今回の予算では、「歳出に約25.2兆円の国債費」と「歳入に約35.6兆円の新規国債」が計上されているが、この点については、「過去20年余りの期間に継続した超低金利状態が、今後も継続する」という前提が含まれているものと思われるのである。つまり、「今まで続いてきたから、今後も継続するはずだ」というような「一種の思考停止状態」が働いている状況のことでもあるが、実際には、「日本の金利やインフレ率も、世界的な影響を逃れられない状況」とも言えるのである。
具体的には、「過去20年以上も継続した日本の金融緩和と呼ばれる状況」、すなわち、「国民の預金などを借りながら、国債の買い付けを実施して、日銀のバランスシートを膨張させる方法」については、「ゼロ金利やマイナス金利の存在」が必要不可欠の状況だったものと考えられるのである。つまり、「国民の預金に金利を支払わず、民間金融機関や日銀、そして、国家財政を援助してきた手法」については、現在、きわめて危機的な状態に陥ったものと想定されるのである。
そして、結果としては、「国債の買い手が急減する可能性」や「国債費が急増する可能性」に見舞われるものと考えられるが、この点については、「1991年のソ連」、あるいは、「1945年の日本」などが、典型的な前例とも言えるようである。つまり、「国家財政の破たん」に見舞われる状況であり、このような状況下で、政府や日銀が取れる方法は、古典的な手法である「紙幣の増刷」とも想定されるのである。
そのために、これから必要とされることは、「1971年のニクソンショック」をキッカケとして始まった「現在の信用本位制と呼ぶべき通貨制度」において、「どれだけのマネーが創られたのか?」を、具体的な数字で把握することであり、また、「世界的な債務やデリバティブの残高が消滅しない限り、世界的なインフレが終息しない可能性」を理解することでもあるが、この時に必要とされることは、やはり、「通貨と商品との関係性を正しく認識すること」とも言えるようである。(2022.12.24)
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何でもバブルのメカニズム
「2008年のリーマンショック」以降、世界全体で、「何でもバブル」と呼ぶべき状態が発生したが、このメカニズムとしては、「金融のメルトダウン」が指摘できるものと考えている。つまり、「金融の逆ピラミッド」において、頂点に位置する「デリバティブ」の残高がピークを付けるとともに、徐々に、下方に位置する「国債」や「預金」などへと、資金が流れ出した状況のことである。
より詳しく申し上げると、「デリバティブのバブル崩壊」を防ごうとする目的で「QE(量的緩和)」が実施されたものの、結果としては、「ほとんどすべての商品に、バブルの発生と崩壊をもたらした状況」だったものと考えられるのである。別の言葉では、ほとんどすべての商品に対して、「資金の流入と引き上げ」が発生した結果、現在では、「大量のマネー」が存在しながらも、一方で、「流入すべき商品」が限られてきた状況となっているのである。
つまり、「実体経済を代表する商品」については、「フローの性質」、すなわち、「注文や取引が永続する保証がない状態」であるものの、一方の、「通貨やマネー」に関しては、「ストックの性質」、すなわち、「残高が増え続ける性格」を有しているものと理解できるのである。そして、現在では、大量に存在する「デジタル通貨」が、「紙幣に形を変えて、実物資産へ流入を始めた状況」となっており、この動きを止めるためには、「お金の値段」とも言える「金利」を上昇させる方法が必要不可欠の状態となっているのである。
より具体的には、「預金などの魅力」を高めることにより、「預金からの資金移動」を防ぐ効果が存在するものの、一方で、「商品」である「デリバティブ」や「国債」、あるいは、「預金」などについては、急速に信頼感を失いつつある状況とも言えるのである。つまり、世界の各国が「国家財政の破たん危機」に見舞われ始めており、このことを察知した人々が、慌てて、「何が安全な商品なのか?」を考え始めた可能性のことである。
そして、結論としては、過去のパターンのとおりに、「裏側に借金をしている人がいない商品」、すなわち、「貴金属」や「実物資産を保有し、かつ、自己資本比率が高い株式」などを選好し始めたものと想定されるのである。しかも、「マネーの残高」に関しては、今後、「国家の財政危機」により、「最後の手段」とも言える「紙幣の増刷」が行われ、その結果として、「天文学的な急上昇を見せる可能性」が危惧されるために、現在では、すでに、「政府の政策に影響を受けにくい資産への逃避」が始まっているものと考えられるが、この点については、今後、加速度的に理解が深まる状況も想定されるようである。(2022.12.25)
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大都市住人の無宗教性
シュペングラーの「西洋の没落」という著書では、「大都市の住人は、無宗教的な性格を帯びるとともに、内的な空虚や貧困を覚えるようになる」と述べられているが、この点については、私自身の「心の座標軸」で説明が付くものと考えている。また、「大都市の形成」が意味することは、「数多くの小さな共同体が合併する状況」であり、このことは、「宇宙で惑星が形成される様子」と似ているようにも感じている。
より具体的に申し上げると、「西暦400年前後に崩壊した西ローマ帝国」については、実際のところ、「巨大な大都市の崩壊」と「数多くの小さな共同体の発生」という結果を、その後の世界にもたらしたものと思われるのである。つまり、当時の社会は、現在と同様に、「マネーの大膨張が結び付けた人間関係」、すなわち、「お金が神様となった時代」であり、その結果として、「パンとサーカスの生活」が普及し、また、「座業を好む大都市の人々」が増えた状況だったようにも感じられるのである。
そして、この理由としては、「心の座標軸」が示す「目に見えるものを求めながら、自分のために行動する状況」が指摘できるが、その結果として発生した現象としては、「西暦400年、および、その1600年後の西暦2000年前後に、大都市が出現し、マネーの残高が急激な大膨張を見せた状況」が挙げられるのである。つまり、「共同体の規模が、1600年という時間をかけて、徐々に大きくなっていった展開」により、聖書が示す「神よりも富に仕える人々」が増えていった状況のことである。
より具体的には、「お金が全てであり、お金儲けのためには、どのような犠牲も厭わない」というような極端な考えを持つ人までもが、最後の段階で出現したが、この背後には、「この世が全てであり、科学的には、あの世などは存在しない」という認識が存在したものと考えられるのである。つまり、「自分は仮説を作らない」という、ニュートンの言葉で示されるように、「形而上学的要素」が捨て去られた状況が、その後、数百年の時間をかけて、「神は死んだ」と認識される異様な社会を産み出したものと思われるのである。
しかし、「歴史の教訓」としては、「どのようなバブルも、必ず、弾ける運命にある」という点が指摘できるために、現在の「巨大な眼に見えない金融ツインタワーのバブル」、すなわち、「約600兆ドル(約8京円)のOTCデリバティブ」と「約330兆ドル(約4.4京円)の世界債務」の崩壊は、今後、「人類史上、未曽有の規模で、大都市の住人に、心理的な影響を与える状況」が想定されるものと感じている。(2022.12.29)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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