「オロカモノ」と叫べば、我が身に返ってくる。こだまでしょうか、いいえ丸川珠代。
- 2023年 2月 6日
- 評論・紹介・意見
- 安倍政権澤藤統一郎議会制民主主義
(2023年2月5日)
ある言葉が、ある人やその人生と緊密に結びついてる例はいくつもある。「それでも地球は回っている」「地球は青かった」「賽は投げられた」「二十にして已に朽ちたり」「不可能という言葉はない」「自由は死なず」「予は危険人物なり」「難波のことは夢のまた夢」「ケーキを食べれば」「見るべきものは見つ」「寸鉄人を刺す」「薄氷を踏む」「待ちかねたー」「もっと光を」「母は来ました今日もまた」「ガチョーン」「アイーン」「シェー」…等々。
こういう特定の人と結びついた言葉の豊穣の中に、もう一つ新しい言葉が加わった。「愚か者」である。今や、丸川珠代の人生と深く結びついたものとして。正確には、「この愚か者めがー!」「このくだらん選択をしたバカ者どもを絶対忘れん!」というフレーズ。一度、彼女の口から放たれたこの言葉が、13年を経て彼女のもとに回帰してきた。無数の人の口からの「おまえこそ、愚か者だ!」という矢になって。「エラそうにくだらん言葉を発したバカ者を絶対忘れん!」という、重量級の返し矢もあったようだ。
我が身を省みれば、人を愚か者と謗ることは憚られる。が、敢えて言わざるを得ない。この人にはまったく知性というものが感じられない。丸川は議場でのヤジで注目を集めた軽薄な政治家の典型である。数々の知性欠如のエピソードでも知られる。「オロカモノー」の批判を浴びて当然、その批判が生涯つきまとう宿命なのだ。この宿命は、安倍晋三との出会いから始まっている。人生、どこに不幸な躓きがあるか、予測しがたい。
安倍晋三も「政治の私物化」「嘘とゴマカシ」「アンダー・コントロール」などの言葉と緊密に結びついて後世の人々の記憶に残ることになる政治家である。丸川珠代の「愚か者」とともに、それぞれの刻印が後世にまで消えることはない。
丸川の「この愚か者めが!」は、2010年3月、参院厚生労働委員会で子ども手当法案採決の際の絶叫である。丸川に「愚か」と言われた法案は、民主党政権による所得制限なしの子ども手当導入だった。のち、自民党政権復活後に結局所得制限が導入されたが、この度、自民党が民主党政権時の政策を復活する方針を出して、丸川の「愚か者」発言をブーメランにすることとなった。
ここで、丸川が「自民党執行部がなんと言おうとも、『所得制限なし法案』は愚か極まる」とがんばれば首尾一貫する。この人にも知性はあったのだと納得することにもなったはず。だが、しおらしく自らの過去の醜態を反省する弁を述べることで、みっともなさの極みとなった。そして、知性に欠けることの再確認ともなったのだ。
自民党は、丸川珠代の「この愚か者めが」という野次はお気に入りだったようで、「この愚か者めが」とプリントしたTシャツを作成して1500円で販売。民主党バッシングの小道具に使っていた。丸川だけでなく、自民党の知性と品性の欠如も問われなければならない。
武闘派・丸川は、「愚か者」に続いく同年5月の参院本会議では、当時の鳩山由紀夫首相に対し「ルーピー」と野次を飛ばした。「ルーピー」とは、ワシントンポストが鳩山首相を酷評する際に使用した蔑称だった。通常は、品のない言葉を発することを恥ずかしいと思うところだが、丸川はこんな品性のない野次を売り物にした政治家だった。そして、安倍自民党も、これに悪乗りしていた。
2013年の参院選の公示日、安倍晋三は、再選を目指して立候補した丸川を応援して、「『この愚か者めが!』『ルーピー!』発言で注目を浴びた丸川珠代さん、出陣です」とツイートしている。安倍晋三と丸川珠代、そして「愚か者」のお似合い三者。仲良きことは美しきかな。
しかし、物事にも人にも、功罪両面がある。丸川珠代、けっして「罪」ばかりではない。社会的には、それなりの「功」も記さねば公平ではない。この人、学歴は東大経済学部卒業だという。「しかし」と逆接の接続詞を用いるべきか、「だからこそ」と順接でいうべきか、あるいは「だからと言って」「それでいて」というべきか、よく分からないが、知性に欠けるのだ。
これまでのこの人の看板は、東大卒・自民党・安倍晋三の3枚だった。実は、この3枚とも、大した看板ではないことを丸川が身をもって実証してくれた。東大卒で、自民党公認で、安倍晋三のオトモダチだから…?、それがどうした? 何の恐れ入ることがあろうか。むしろ、東大卒・自民党・安倍晋三の3枚とも、「愚か者」とよくお似合いなのだ。これは、大きな「功績」ではないか。
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以下は、「愚か者」丸川珠代の愚行の一端である。あらためて申し上げるが、こんな人物を東京都民は、当選させた。しかも、3回にわたって。本当の「愚か者」とはいったい誰なのだろうか。
✧「えっ? 私の選挙権がない」事件
丸川の初当選は、2007年7月の参院選。安倍晋三の要請を受けた形で、東京都選挙区に立候補した。7月16日、新宿区役所に期日前投票に行ったところ、丸川は選挙人名簿に登録されておらず、同区における選挙権を有していなかった。そのため、投票できずに、真っ青になったことが大きな話題となった。さらに、2004年にアメリカ合衆国から帰国して以来、6回の国政・地方選挙でまったく投票に行っていなかったことも明らかとなった。それでも、被選挙権は認められ、こんな候補者を都の有権者は国会議員に選出した。
✧丸川政務官問責決議事件
厚生労働大臣政務官だった丸川は、2013年2月、人材派遣会社ヒューマントラストの新聞広告に登場して「日雇い派遣の原則禁止は見直すべき」と発言し、さらに3月15日の衆議院厚生労働委員会で「見直しは省の見解」と答弁した。
その誤りを野党に追及されて、撤回し陳謝した。この問題を受け、厚生労働委員会は理事会で、丸川に答弁をさせない「謹慎扱い」を全会一致で決定、さらに全会一致(もっとも、自民・公明は欠席)により可決された。
✧福島第一原発事故失言事件
自民党が政権に復帰し、丸川が環境相を務めていた2016年2月、政府が除染の長期目標に掲げた「年間1ミリシーベルト以下」の基準をめぐって、以前の民主党政権を批判する文脈で「何の科学的根拠もなく時の環境大臣が決めた」などと長野県松本市内の講演で発言した。「年間1mSv以下」の数値は、人工放射線による一般人の年間追加被曝限度を「1mSv/年」とした国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づいて定められたもの。この発言は大騒ぎを引き起こした末に、丸川は「福島をはじめ被災者の皆様に誠に申し訳なく、心からおわび申し上げたい」「(講演での発言は)事実と異なっていた。当日の福島に関する発言を、すべて撤回する」と表明した。
✧「カフェスタ」事件
2015年7月13日放映の自民党のネット番組「カフェスタ」に丸川珠代は安倍晋三とともに出演。丸川は「世界一周の旅行のピースボート。あのピースボートに乗っていたのは、民主党の辻元清美議員でございますが、海賊が出る海域を通るときにたしか、自衛隊に護衛してくれって頼んで、自衛隊に守ってもらったんですよね」と発言。安倍も「海賊対処のための法案を出したときも、民主党は反対でした。しかし実際にいざ危なくなると、助けてくれと、こういうことなんだろうなと思いますね」と調子を合わせた。これが実は、事実無根。辻本は丸川の発言に抗議。7月14日、丸川は辻元を訪ね、直接謝罪した。自民党も詫び状を提出。画像も削除された。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2023.2.5より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=20762
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