本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(398)
- 2023年 2月 17日
- 評論・紹介・意見
- 日銀本間宗究本間裕金融
バブルに関するマスコミ報道
金融業に携わって、今年で47年目を迎えるが、この間に、いろいろなバブルを経験したことにより、「バブルの特徴と見分け方」についても、有意義、かつ、興味深い知識が得られたものと感じている。つまり、「バブルの発生と崩壊」に関しては、基本的に、「17世紀の初頭に発生したオランダのチューリップバブル」に象徴されるように、「人々の意識が凝り固まった結果として、大量の資金が、小さな市場や商品に集中したことが引き起こす出来事」だと考えている。
また、「バブル崩壊の見分け方」に関しては、今回の「米国のGAFA」などのように、「多くの人々が買い上げた結果として、上昇エネルギーが枯渇した時点で、大転換期を迎える状況」を想定しているが、より興味深い判定方法としては、「マスコミの報道」だと感じている。つまり、「1990年の日本株と土地のバブル」や「2000年のITバブル」、そして、今回の「世界的な債券バブル」などから理解できるように、「マスコミがバブルの発生を促進しながら、崩壊後に、徹底的にバブルを非難する傾向がある」という点である。
別の言葉では、「現在、どのようなバブルが存在し、かつ、今後、そのバブルが、いつ崩壊するのか?」を認識する場合に、「マスコミの報道」が役に立つものと思われるが、特に今後は、世界にそびえたっている「目に見えない金融ツインタワー」に注目している状況である。つまり、現在では、ようやく、「世界の債券バブル」に注目が当たった状況、すなわち、「世界の債券バブルが崩壊を始めた段階」とも思われるが、一方で、もう一つの「デリバティブのバブル」に関しては、依然として、「CBDC(中央銀行のデジタル通貨)の促進」などにより、「バブルの崩壊を防いでいる状況」とも感じられるのである。
より詳しく申し上げると、今までの流れから判断できることは、「目に見えない金融ツインタワーの崩壊が、すでに始まるとともに、今後、一挙に崩れ去る可能性」であり、このことは、「インフレの大津波が、一挙に世界を襲う状況」とも想定されるのである。別の言葉では、「金融界の白血病」とも言える「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができずに、世界の金融市場が大混乱に陥る可能性」のことである。
そして、このような状況下では、「世界の資金が、一斉に、生活必需品に向かう展開」が想定されるとともに、「新たな通貨制度の模索」も始まるものと思われるが、この点に関する今後の注目ポイントは、「世界のマスコミが、これらの問題に関して、どのような報道を始めるのか?」だと考えている次第である。(2023.1.19)
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日銀の共通担保資金供給オペ
1月23日に実施された「日銀の共通担保資金供給オペ」には、「開いた口が塞がらないような思い」を持つとともに、「太平洋戦争末期の松脂(マツヤニ)」が思い出された状況でもあった。つまり、日銀が行ったことは、「5年間の資金を約1兆円、0.11%前後の金利で民間銀行に貸し出し、一方で、民間銀行は、0.16%前後の5年国債を買い付けることにより、約0.05%の利ザヤを稼ぐことが可能な取引」だったのである。
別の言葉では、「日銀が民間金融機関に資金を貸し出して、国債の購入を推進する操作」でもあるが、この時の問題点は、「日銀の資本項目には、5年間も固定された低金利の貸付が増えながら、一方で、負債項目には、短期での資金借り入れが増える状況」が指摘できるのである。つまり、現在の「日銀のバランスシート」では、「約3.5兆円の売現先勘定」、すなわち、「日銀が保有する国債を担保にして、金利を払いながら、数日程度の資金を民間金融機関から借り入れる取引」が実施されている状況であることも見て取れるのである。
より詳しく申し上げると、「日銀が、今後、どのようにして資金繰りの問題を解決するのか?」が喫緊の課題となっていながらも、「一時的、かつ、小手先の手法により、時間稼ぎを目論んでいる状況」とも言えるのである。つまり、「太平洋戦争の末期に、燃料確保のために、国民がマツヤニを集めた状況」が彷彿とされるような展開となっているために、現在は、「日本のみならず、世界的な金融敗戦が近い状況」とも感じられるのである。
より具体的には、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務」という「目に見えない金融ツインタワー」が、間もなく完全崩壊を始める可能性のことであり、今回の「日銀のオペ」は、このことを知らしめる効果があったようにも思われるのである。つまり、「世界的な国債価格の暴落」、そして、「デリバティブのバブル崩壊がもたらすメガバンクの巨額損失」などにより、「世界中の人々が、金融界で、どのようなことが起こっているのか?」を、はっきり認識する可能性のことである。
そのために、これから必要なことは、「お金(マネー)に対する信仰」から解き放たれることであり、実際には、「カール・ポランニー」が指摘する「悪魔のひき臼」により、「人類の行動が、どれほど歪められてきたのか?」を考えることである。つまり、人類に必要なものは「過剰なマネー」ではなく、「持続可能な実体経済に必要な量のマネー」である事実を認識することでもあるが、実際には、間もなく、この事実を認識させられるような「巨大なインフレの大津波」が世界を襲うものと考えている。(2023.1.24)
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共同体の規模と統治の方法
シュペングラーの「西洋の没落」という著書では、「法律」についても、興味深い説明がなされているが、具体的には、「全ての法律が神の権威から生じており、また、都市における法律共同体と、それ以前の信仰共同体が区別されている状況」とも述べられているのである。また、私自身の仮説としては、「共同体の規模により、統治形態の変化が発生する状況」を想定しているが、実際には、「小さな村落」から始まり、最後には、「グローバル共同体」にまで発展した状況下で、「共同体の規模拡大とともに、統治の力が、信仰から法律へと変化していった展開」のことである。
より詳しく申し上げると、「西ローマ帝国の崩壊」により「数多くの小さな共同体」に分裂した社会は、その後、「信用力の増加により、より大きな共同体への結合」へと向かっていったものと想定されるのである。具体的には、「西暦1200年までの東洋の時代」においては、「神の法」を基本とした「信仰共同体」の形成であり、また、その後の「西暦2000年までの西洋の時代」においては、「人の法」を基本とした「大都市の法律共同体」が形成された状況のことである。
そして、このような「人の法」と「神の法」の違いについては、西暦800年前後の「日本」においても、「弘法大師空海」が指摘するとおりに、「国法よりも仏法の方が大切である」と認識されていたことも見て取れるのである。つまり、「時代の経過とともに、神に対する認識が変化した状況」が理解できるが、実際のところ、「100年ほど前の西洋」では、ニーチェが指摘するとおりに、「神は死んだ」と理解されていたのである。
別の言葉では、「西洋文明における唯物論」の象徴とも言える「人間が自然を征服すべきである」というような認識が広がった結果として、「人類が地球の王者となったような状況」が発生したものと考えられるのである。そして、この結果として産み出された現象が、「お金(マネー)が神様の地位にまで上昇した状況」であり、この点については、現時点においても、「世界中の人々が、お金儲けのために、ありとあらゆる手段を行使する状態」となっているようにも感じられるのである。
つまり、「1600年前の西ローマ帝国」と似たような状況とも思われるが、その後の展開としては、「領土の縮小」、そして、「国力の減少」などにより、「通貨の価値」のみならず、「古代ローマ法の役割」までもが、急速な減少に見舞われたことも見て取れるわけだが、現在の世界も、今後、同様の展開が予想されるものと感じている。(2023.1.25)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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