使命感にあふれた「東京電力福島原発事故調査委員会報告書」について ~A君への手紙Ⅱ~
- 2023年 4月 8日
- 評論・紹介・意見
- 有澤ゼミ有志の会椎名鉄雄
前略、A君、お忙しいところ恐縮ですが、再び手紙を書かずにいられなくなりました。それは「福島原発事故調査委員会報告書」の使命感にあふれた文章に感動したからです。この報告書は、法律に基づき国会で任命された日本を代表する学識経験者の調査委員会〈委員長、黒川清・医学博士,元日本学術会議会長〉の皆さんによって作成されたものです。調査委員会は、客観的・実証的手法によりこの報告書を纏めています。そして「この事故は歴史的、構造的なもので根は深い。その根本的原因は、規制する側と東電との関係においては規制する立場と、される立場の「逆転現象」が起き、規制当局は電気事業者の「虜(とりこ)」となっていたことである、と指摘しています。この報告書は2012年7月23日に提出されています。私には今尚、この〔規制の虜〕という言葉は生きているように思えます。以下にその「調査報告」の概要をメモ的に記します。
1、はじめに
調査委員会は「福島原子力発電所事故は、まだ終わっていない」と考えている。福島原発事故は、世界の原子力の歴史に残る大事故である。世界が注目する中、日本政府と東京電力の事故対応の模様は、日本が抱えている根本的な問題を露呈することとなった。日本の原子力平和利用は、1970年代のオイルショックを契機に政・官・財一体となった国策として推進された。日本でも大小さまざまな原発の事故があった。多くの場合、対応は不透明であり組織的な隠蔽も行なわれた。日本政府は、電力会社10社の頂点である東京電力と共に原子力は安全であり、日本では事故など起こらないとして原子力を推進してきた。そして日本の原発はいわば無防備のまま3.11の日を迎えたのである。 想定できた筈の事故がなぜ起きたのか。その根本的な原因は、日本が高度成長を遂げた頃にまで遡る。政・財・官が一体となり、国策として共通の目標に向って進む中、複雑に絡まった〔規制の虜が生まれた。「規制の虜」とは、規制する側が非規制者側に取り込まれることを意味する。そこには、ほぼ50年にわたる一党支配と、新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった官と財の際立った組織構造と、それを当然と考える日本人の〔思い込み〕があった。経済成長に伴い「自信」は次第に「おごり・慢心」に変わり始めた。入社や入省年次で上り詰める「単線路線のエリート」たちにとって、前例を踏襲すること、組織の利益を守ることは重要な使命となった。この使命は、国民の命を守ることよりも優先され、世界の安全に対する動向を知りながらも、それらに目を向けず安全対策は先送りされた。
3.11の日、当時の政府、規制当局そして事業者は、原子力のシビアアクシデント(過酷事故)における心の準備や、各自の地位に伴う責任の重さへの理解、そしてそれを果す覚悟はあったのか。「想定外」「確認していない」などというばかりで危機管理能力を問われ、日本のみならず世界に大きな影響を与えるような被害の拡大を招いた。この事故は、人災であることは明らかで、歴代及び当時の政府規制当局、そして、事業者である東京電力による人々の命と社会を守るという責任感の欠如があった。
この事故から9ヶ月、国民の代表である国会の下に憲政史上初めて政府からも事業者からも独立したこの調査会が、衆参両院において全会一致で議決され、誕生した。今回の事故原因の調査は、過去の規制や事業者との構造といった問題の根幹に触れずに核心にたどり着けない。私達は、委員会の活動のキーワードを「国民」「未来」「世界」とした。そして、委員会の使命を「国民の国民による事故調査」「過ちから学ぶ未来に向けた提言」「世界の中の日本という視点(日本の世界への責任)」とした。この報告書が、日本のこれからのあり方について私たち自身を検証し、変わり始める第一歩となることを期待している。
1、調査の概要
<国会に設置された意味>
この委員会は、事故の当事者や関係者から独立した調査を、国家の三権のひとつである国会のために行なうために設置された。事故の検証にあたり強い調査権限(文書の提出請求権、国政調査権の発動要請権等)を持っている。
<党委員会設置の基本的考え方>
①脱原発か原発推進かという結論ありきではなく、専門家による冷静かつ科学的な、独立した徹底検証をすること。②徹底的な情報公開、③世界的視野に立つこと、④原子炉の構造上の問題ではなく、人間の安全保障を重視した調査をおこなうこと、⑤地震大国、津波大国における原発という視点から調査を行なう、⑥提言型且つ未来志向の調査を行なうこと。
<調査の概要>
①徹底した検証の為、延べ1167人、900時間を越えるヒヤリング実施、②東電福島第一原子力発電所、その他の発電所に対して9回に及ぶ視察を行なった。③双葉町他12市町村を委員が訪問しヒヤリング実施、④被災住民や原発の作業従事者を対象としたアンケート実施、⑤計3回の海外視察、⑥東電、規制官庁はじめ関係者に対する資料請求回数は2000件を超えた。⑦19回の委員会は全て公開で行なった。参考人のヒヤリングは世界に対して公開して行なった。その意味は、より立体的にまた客観的に事故の原因を把握し、今後何を成すべきか判断できる材料を提供することにあった。
<当委員会で扱わなかった事項。
①日本の今後のエネルギー政策に関する事項、②使用済み核燃料処理に関する事項、③原子炉の実地検証を要する事項、④個々の賠償、除染などの事故処理費用に関する事項、⑤個々の原子力発電所の再稼働に関する事項等以下省略。
2、調査の結論
<認識の共有>
平成24年(2012年)6月においても依然として事故は収束しておらず被害も継続している。破損した原子炉の現状は詳しくは判明しておらず今後の地震、台風などの自然災害に果たして耐えられるのか分からない。(椎名註:1)今後の環境汚染を何処まで防止できるのかも明確ではない。廃炉までの道のりも長く予測できない。一方、被害を受けた住民の生活基盤の回復は進まず、健康被害への不安も解消できていない。
〈椎名註:1〉2023年3月31日の朝日新聞は次のように報じている、即ち核燃料が溶け落ちる〔メルトダウン〕を起こした東電福島第一原発の1~3号機の内、核燃料の溶融が最も激しいと見られていた1号機。事故から12年が経ちようやく原子炉直下の状況が見えてきた。1号~3号機の「燃料デブリ」は推計880トンだが取り出しに着手できていない。「燃料デブリ」のはいった圧力容器を支えているコンクリート製の台座の損傷も深刻だ。地震等で放射性物質が容器外に出るリスクが懸念される。尚、〔燃料デブリ〕の冷却から生ずる汚染水は今後も永続的に発生する。
当委員会は〔事故は継続しており、被災後の福島第一原発の建物と設備の脆弱性及び被害を受けた住民への対応は急務であると認識する。又この事故報告が出されることで事故が過去のものとされてしまうことに危惧を覚える。そして世界に大きな影響を与え、今尚続いているこの事故は、今後も独立した第三者によって継続して厳しく監視、検証されるべきである。〈椎名註:2〉
(椎名註:2)今尚、第三者による検証はなされていない。
当委員会はこのような認識を共有化し、以下のような調査に当たった。
<事故の根本的原因>
当委員会の調査によれば、3.11時点において福島第一原発は地震にも津波にも耐えられる保証はない、脆弱な状態であったと推定される。地震・津波による被害の可能性、自然現象を起因とするシビアアクシデント(過酷事故)への対策、大量の放射能の放出が考えられる場合の住民の安全保護など、事業者である東電及び規制当局である内閣府原子力安全委員会、経産省原子力安全・保安院、また原子力推進行政当局である経産省がそれまでに当然備えておくべきこと、実施すべきことをしていなかった。
具体的には①平成18年〈2006年〉に、耐震基準について安全委員会が旧指針を改定し、新指針として保安院が全国の原子力事業者に対して、耐震安全性評価(以下耐震バックチェックという)の実施を求めた。東電は最終報告期限を平成21年〈2009年〉6月と届けていたが、耐震バックチェックは進められず、いつしか社内では平成28年〈2016年〉1月と先送りされた。東電及び保安院は、新指針に適合する為には耐震補強工事が必要であることを認識していたにもかかわらず、1~3号機については全く工事を実施していなかった。1~3号機については地震動による損傷がなかったとはいえない。
(椎名註3)、東電は1~3号機は津波による損傷と主張している。
平成18年(2006年)には福島第一原発の敷地を越える津波が来た場合に「全電源喪失」にいたること、土木学会評価を上回る津波が到来した場合、海水ポンプが機能喪失し炉心損傷にいたる危険があることは保安院と東電の間で認識が共有されていた。保安院は明確な指示を出さなかった。規制を導入する際に規制当局が事業者に対しその意向を確認していた事実も判明している。安全委員会は平成5年〈1993年〉に全電源喪失の発生の確率が低いこと、原子力プラントの全交流電源喪失に対する耐久性は十分であるとし、それ以降の長時間の全電源喪失は考えなくても良いとの立場をとってきたが、当委員会の調査の中で、安全委員会は、「全電源喪失」の可能性は考えなくても良いとの理由を事業者に作文さていたことが判明した。又、規制当局はシビアアクシデント対策は、地震や津波などの外部事象に起因する事故を取り上げず、内部事象に起因する対策に留まった。米国では、9.11以降テロ対策を含めた新たな対策が講じられていたが、この新たな対策の情報は保安院に留められた。防衛にかかわる機微情報に配慮しつつ必要な部分を電気事業者に伝え対策を要求していれば今回の事故は防げた可能性がある。
このように今回の事故は、これまでに何回も対策を打つ機会があったにもかかわらず歴代の規制当局及び東電経営陣がそれぞれ意図的な先送り、不作為あるいは自己の組織に都合の良い判断を行なうことによって、安全対策がとられないまま3.11を迎えたことで発生したものであった。当委員会の調査によれば、東電は新たな知見に基づく規制が導入されると既設炉の稼働率に深刻な影響が生ずるほか、安全性に関する過去の主張を維持できず、訴訟などで不利になるといったおそれを抱いており、それを回避したいという動機から安全対策の規制化に強く反対し、電気事業連合会を介して規制当局に働きかけていた。
このような事業者側の姿勢に対し、本来国民の安全を守る立場から毅然とした対応をすべき規制当局も専門性において事業者がわに劣後していたこと、過去に自ら安全と認めた原子力発電所に対する訴訟リスクを回避することを重視したこと、また、保安院が原子力推進官庁である経産省の組織の一部であったこと等から、安全について積極的に制度化していくことに否定的であった。
事業者が、規制当局を骨抜きにすることに成功する中で、〔原発は元々安全が確保されている〕という大前提が共有され、既設炉の安全性、過去の規制の正当性を否定するような意見や知見、そしてそれを反映した規制、指針の実施が回避、緩和、先送りされるように落としどころを探り合っていた。
これを構造的にみれば、以下のように整理できる。本来原子力安全規制の対象となるべきであった東電は、市場原理が働かない中で、情報の優位性を武器に電事連等を通じて歴代の規制当局に規制の先送り或いは基準の軟化等に向け強く圧力をかけていた。この圧力の源泉は電気事業の監督官庁である原子力政策推進の経産省との密接な関係であり、経産省の一部である保安院との関係は、その大きな枠組みの中に位置付けられていた。規制当局は事業者への情報の偏在、自身の組織優先姿勢等から事業者の主張する〔既設炉の稼働の維持〕「訴訟対応で求められる無謬性」を後押しすることになった。このように歴代の規制当局と東電との関係においては、規制する立場場と、される立場の「逆転関係」が起き、規制当局は事業者の〔虜(とりこ)〕となっていた。その結果、原子力安全についての監視監督機能が崩壊していたと見ることが出来る。
当委員会は、本事故の根本的原因は歴代の規制当局と東電との関係について、「規制する立場とされる立場が「逆転関係」になることによる原子力安全についての監督・監視機能の崩壊が起きた点に求められると認識する。何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば明らかに〔人災〕である。
尚、委員会はこの分析をうけて次のような個別の分析・指摘を行ない提言をしている。
<事故の直接的原因>
当委員会は、事故の直接的原因について「安全上重要な機器の地震による損傷はないとは確定的にはいえない」。未解明な部分が残っており、これについては引き続き第三者による検証が行なわれることを期待する。
<運転上に問題の評価>
当委員会は、〔過酷事故に対する十分な準備、レベルの高い知識と訓練、機材の点検がなされ、また、緊急性について運転員、作業員に対する時間的要件の具体的な指示が出せる準備があれば、より効果的な事後対応できた可能性は否定できない。即ち東電の組織的な問題である。
<緊急時対応の問題>
当委員会は、事故の進展を止められなかった、或いは被害を最小化できなかった最大の原因は「官邸及び規制当局を含めた危機管理体制が機能しなかったこと」、そして緊急対応において事業者の責任、政府の責任の境界があいまいであったことにある」と結論づけた。
<被害拡大の要因>
当委員会は、避難指示が住民に的確に伝わらなかった点について「これまでの規制当局の原子力防災対策への怠慢と、当時の官邸、規制当局の危機管理意識の低さが、今回の住民避難の根底にあり、住民の健康と安全に関して責任を持つべき官邸及び規制当局の危機管理体制は機能しなかった」と結論づけた。
<住民の被害状況>
当委員会は、「被災地の住民にとって事故の状況は続いている。放射線被爆による健康問題、家族、生活基盤の崩壊、そして広大な土地の環境汚染問題は深刻である。先の見えない避難所生活など現在の多くの人が心身共に苦難の生活を強いられている」と認識している。又、その理由として「政府、規制当局の住民の健康と安全を守るいしの欠如と健康を守る対策の遅れ、被害を受けた住民の生活基盤回復の対応の遅れ、さらには受け手の視点を考えない情報公表にある」と結論づけた。
<問題解決に向けて>
当委員会は、事故原因を個々人の資質、能力の問題に帰結させるのではなく、規制される側とする側の〔逆転関係〕を形成した真因である〔組織的、制度的問題〕がこのような〔人災〕を引き起こしたと考える。この根本原因の解決なくして、単に人を入れ替え、或いは組織の名称を変えるだけでは、再発防止は不可能であると認識する。
<事業者>
当委員会は、〔規制された以上の安全対策を行なわず、つねにより高い安全を目指す姿勢に欠け、また、緊急時に発電所の事故対応の支援が出来ない現場軽視の東電経営陣の姿勢は、原子力を扱う事業者としての資格があるのか〕との疑問を呈した。
<規制当局>
当委員会では、「規制当局は、組織の形態或いは位置づけを変えるだけでなく、その実態の抜本的な転換を行なわない限り国民の安全は守られない。国際的な安全基準に背を向ける内向きな態度を改め、国際社会から信頼される規制機関への脱皮が必要である〕と結論づけた。
<法規制>
当委員会では「原子力法規制は、その目的、法体系を含めた法規制全般について抜本的に見直す必要がある。かかる見直しに当たっては、世界の最新の技術的知見を反映し、この反映を担保する為の仕組みを構築すべきである」結論づけた。
4、提言
提言1:規制当局に対する国会の監視
国民の健康と安全を守る為に、規制当局を監視する目的で国会に原子力に関する常設の委員会等を設ける。この委員会はこの事故調査報告について今後の政府による履行状況を監視し、定期的に報告を求める。(椎名註:常設の委員会等は設置されていない。)
提言2:政府の危機管理体制の見直し
緊急時の政府、自治体、及び事業者の役割、責任を明らかにすることを含め、政府の危機管理体制に関する制度(指揮命令系統一本化等)についての抜本的見直しを行なう。
提言3:被災住民に対する政府の対応
被災地の環境を長期的にモニターしながら、住民の健康と安全を守り、生活基盤を回復する為、政府の責任において国の負担による外部、内部被爆の継続的検査と健康診断及び医療提供の制度を設ける。又、更なる汚染拡大防止対策等を実施する。
提言4:電気事業者の監視
東電は電気事業者として経産省との密接な関係を基に電事連をかいして保安院の規制当局の意思決定過程に干渉してきた。国会は提言1に示した規制機関の監視・監督に加えて事業者が規制当局に不当な圧力をかけることのないように厳しく監視する必要がある。
(椎名註4、提言1の国家の原子力に関する常設の委員会は未設置である。従って国会による事業者の直接的監視機能は存在しない。
提言:5新しい規制組織の要件
1)高い独立性:①政府内の推進組織からの独立性、②事業者からの独立性、③政治からの独立性、を実現し、監督機能を強化する為、の指揮命令系統、責任権限及びその業務プロセスを確立する。
2)透明性:意志決定過程を開示し、電気事業者等の利害関係者の関与を排除する。
定期的に国会に対し全ての意思決定過程、施策実施状況について報告する義務を課す。推進組織、事業者、政治との間の交渉折衝等に関しては議事録を残し、原則公開する。委員の選定は国会が決定する。
3)専門能力と職務への責任感
4)自立性
提言:6原子力法規制の見直し(省略)
提言:7独立調査委員会の活用
未解明部分事故原因の追究、事故の収束に向けたプロセス、被害の拡大防止、本報告で今回は扱わなかった廃炉の道筋や、使用済み核燃料問題等国民生活に重大な影響のあるテーマについて調査審議するために、国会に原子力事業者及び行政機関から独立した民間中心の専門家からなる第三者機関として(原子力臨時調査委員会、<仮称>)を設置する。
〈椎名註:5、第三者機関は未設置である。〉
<提言の実現に向けて>
原子力を扱う先進国は、原子力安全確保は第一に国民の安全にある、とし福島原子力発電所事故後は更なる安全水準の向上に向けた取り組みが行なわれている。一方、わが国では従来も、そして今回のような大事故を経ても対症療法的な対策が行なわれているにすぎない。このような小手先の対策を集積しても今回のような事故の根本的な問題は解決しない。
この事故から学び、事故対策を徹底すると同時に日本の原子力対策を国民の安全を第一に考えるものに根本的に変革していくことが必要である
5、感想
私は、この「報告書」を国会がどのように受け止めたのか知りたい。使命感に満ちた「国民による国民の為の調査」結果を尊重しているのか。小手先の対策に終始していないか。原発の規制機関が〔規制の虜〕(規制する側が、される側にとりこまれること)とならないためには、国会の監視システムが必要であるとの調査委員会の指摘に応えているのか。国会の原子力常設委員会は設置されていない。又、原発推進と、原発規制との分離を前提にした原子力規制委員会はその機能を発揮しているのか。
調査委員会による「原発事故はまだ続いている」との指摘は、今も生きているのではないか。汚染水は今も今後も貯まり続けていく。事故で発生した原子炉内の「燃料デプリ」を冷やし続ける為だ。燃料デプリ(炉心溶融物)を取り出す方法は未定である。又、稼働中の原発から発生する核燃料廃棄物の処理方法も未定である。仮に地下に埋めるにしても数万年は放射能を放出し続けるという。このリスク管理を誰がどのように行なうのか。科学者の予測によると、今後30年以内に超大型地震が発生する確率は70%とされている。もしこの地震が発生した場合、国民の安全を保つプランは存在するのか。それとも発生した場合は又、「想定外」というのか。
このような疑問だらけの中で、原発新設、稼働期間の延長を国民に納得のいく説明もせずに何故進めるのか、こんな無責任なことがあっていいのか。更に、私には解らないことがある。それは、「原子力基本法」を変えようとしていることだ。「原子力基本法は」原子力の開発・利用の憲法とされている。この変更は国民に問わなければならない性質のものである、と思う。政府は、「原子力基本法」を変えて原発事業の環境整備を図るという(2023年4月3日、朝日新聞)。そこには、今後永続的に原発を推進するという意図が丸見えではないか。まさにこれは〔規制の虜〕そのものではないか。
私が腑に落ちないことは、国民に納得のいく説明もせずに、どんどん原発政策を改悪しようとしている政府に対して、極めて無関心を装う国民の態度である。今こそ、賛否をはっきりさせるべきではないか。A君、君はどう思いますか。{「原子力基本法」(平和利用と安全管理)の番人だ}と言っておられた有澤先生(初代原子力委員)がもし健在ならば、この現状をどのように見るでしょうか。
以上、長い手紙になり恐縮ですが、私の思いを書いてみました。後で感想を聴かせてください。
早々
2023年4月5日
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12952:230408〕
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