本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(419)
- 2023年 7月 21日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
植田日銀総裁の苦悩
「火中の栗」を拾った状態となった「植田日銀総裁」にとって、現在の「世界的な金融情勢」は、まさに、「前門の虎、後門の狼」のような状況であり、その結果として、「打つ手が無くなり、苦悩を抱えた状態」のようにも感じている。つまり、他の先進各国のように、「利上げ」を実施すると、「日銀」のみならず、「日本の国家財政」そのものが、破綻の危機を迎える懸念が存在するからである。
具体的には、「約572兆円という日本の名目GDP」と比較して、「1.3倍程度の約774兆円」にまで大膨張した「日銀のバランスシート」、あるいは、「1.86倍程度の約1086兆円」にまで膨らんだ「日本の普通国債残高」に関しては、「通常の手段では返済不可能な状態」であることも理解できるのである。別の言葉では、過去のパターンのとおりに、「紙幣の増刷が引き起こすハイパーインフレにより借金を棒引きにする方法」しか残されていない状況とも言えるのである。
そして、これらの事実については、現在、「世界各国で、大きな注目を浴び始めている段階」に差しかかっており、実際には、「国家の体力」を表す「金利」と「為替」の両面から、「日本の将来」が危惧され始めている状況となっているのである。つまり、「植田日銀総裁が、いつまで、現在の超低金利状態を継続可能なのか?」、あるいは、「キャリートレードの加速が引き起こす円安は、今後、どこまで進展するのか?」という点などである。
しかも、今回は、「日本」のみならず、「西洋の先進各国」や「中露の国々」なども、きわめて厳しい経済情勢に見舞われているために、多くの人々は、「何が何だか、訳が分からない状態に陥っている状況」のようにも感じられるのである。別の言葉では、「現状だけを見がちな三次元の経済学」では正確な現状認識が難しく、「過去の推移を含めた四次元の経済学」が必要な状況とも思われるのである。
より詳しく申し上げると、「過去を遡りながら、現在に匹敵する経済情勢を探す努力」のことでもあるが、実際の状況としては、やはり、「1600年前の西ローマ帝国」まで、時代を遡る必要性があるものと感じている。つまり、「マネーの大膨張が、どのようにして発生したのか?」、あるいは、「パンとサーカス」に象徴される「大都市の生活」が、「どのような推移で実現したのか?」を考えると、結局は、「グローバル共同体」がもたらした「世界的なマネー大膨張」や、その背後に存在する「巨大なデリバティブのバブル」に対する理解が必要なものと考えられるのである。(2023.6.20)
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中国の利下げ
6月20日に実施された「中国の利下げ」に関しては、「焼け石に水」の効果しか持たないものと思われるが、その理由としては、「30年ほど前の日本のバブル崩壊時の状況」が指摘できるものと考えている。つまり、当時の日本では、「不動産や株式の価格下落」が、きわめて巨大な「不良債権」を産み出したことにより、その後、「民間金融機関の破綻」に繋がった状況だったからである。
より具体的には、「日本」のみならず、「米国」においても、「メガバンクの破たん危機」に見舞われたのだが、この時に「救い」となったのが、「メガバンクがオフバランス(簿外)で大膨張させたデリバティブ」だったのである。つまり、「資産価格は変動するものの、負債の残高が一定である」という、「バランスシートの非対称性」が保有する性質により、「1990年代の先進諸国では、きわめて巨額な不良債権が発生した」という状況であり、また、その穴埋めの役割を果たしたのが、「1998年からの10年間で、約8000兆円から約8京円にまで膨らんだデリバティブ」だったのである。
ただし、「バブルの運命」としては、「必ず、破裂の時期を迎える」ということであり、今回の「デリバティブ」についても、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」が、この事実を象徴していたのである。そして、その後は、「リフレーション政策」が実施され、実際には、「バランスシートの大膨張が、民間金融機関から中央銀行へ移行した展開」となったものの、ほとんどの人々は、「GAFAMのバブルに熱中し、実際に、どのようなことが起こっていたのかが理解できない状況」だったものと想定されるのである。
より詳しく申し上げると、「中央銀行が、民間資金を利用して、マイナス金利などの超低金利状態を作り出した状況」のことでもあるが、現在では、すでに、「中央銀行のバランシートを膨張させる方法」が限界点に達したことも見て取れるのである。つまり、「最後の手段」である「紙幣の増刷」、あるいは、「CBDC(中央銀行デジタル通貨) の発行」しか残されていない状況のことである。
このように、今後の世界情勢に関しては、「米国」や「中国」などの「デリバティブ大膨張の恩恵を最も受けた国々」において、きわめて大きな反動が発生するものと想定されるが、具体的には、「1991年のソ連」のように、「国債の買い手」が消滅することにより、一挙に、「ハイパーインフレ」に見舞われる可能性であり、しかも、タイミングとしては、やはり、「2023年8月15日前後の状況」が気に掛る状況とも言えるようである。(2023.6.21)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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