シリア、どうできるんだろう
- 2023年 9月 21日
- 評論・紹介・意見
- 藤澤豊
Die Weltが七月二八日付けで驚く記事を配信してきた。表題は「Disabilities in Syria: A ‘hidden’ crisis」で機械翻訳すると、「シリアの障害 隠された危機」になる。
https://www.dw.com/en/uncertain-futures-syrias-hidden-crisis-of-disabilities/a-66368372?maca=en-newsletter_en_bulletin-2097-xml-newsletter&r=17278611781318981&lid=2617881&pm_ln=212954
シリアは随分前からどうしようもない国だと思ってはきたが、いやまどうできるんだろうという状態に陥ってしまったようにみえる。
記事の要点をまとめると下記になる。
「10年にわたる戦争の後、シリアの人口の約3分の1が何らかの障害を持っているという。最近の地震はこれをさらに悪化させた」
「国連の調査によると、シリア人のほぼ4人に1人が障害を持っている」
「2021年に国連が収集した数字によると、10年以上にわたる内戦の結果、2歳以上のシリア人口の約28%が何らかの障害に苦しんでいる」
「シリア北部の一部――反体制派の戦闘員が支配する地域は、人道援助に大きく依存し、医療施設も不足している。国連によれば、シリア北東部の人口の約37%が何らかの障害を抱えている」
「精神衛生上の問題や心理社会的障害は含まれていません」
「武力紛争は、新たな障害を生み出し、障害者が直面する既存の障壁を悪化させ、コミュニティ全体をより大きな危険にさらす」
10年にわたる戦争が何を指しているのか分かっているつもりだが確認しておこうと、Googleでシリアの10年の戦争と入力したら、下記が出てきた。
「シリアの十年の戦争武力紛争」
「シリア内戦のきっかけはアラブの春と言われていますが、アラブの春の火種となったのがジャスミン革命という民主化運動です。これは2010年12月にチュニジアで起こっており、その波が中東諸国へ波及しました」
「この民主化運動はやがて近隣アラブ諸国へ広がっていき、2011年にアラブの春へと発展。エジプトでは30年続いたムバーラク政権、リビアでは42年続いたカダフィ政権が崩壊します。他にもサウジアラビアやモロッコ、イラク、アルジェリアでも同様の民主化運動が活発化し、この動きはシリアへも広がっていきます」
「シリアではアサド大統領による独裁政権が40年にも渡って続いていたため、国民は長年社会経済への不満を抱いていました。そして2011年、アラブの春を皮切りにシリアでも抗議運動が始まりました」
「この中心となったのが政権から虐げられていたスンニ派の人々です」
「スンニ派を中心とした抗議運動はシリア全土に広がり、シーア派を主とするアサド政権政府とスンニ派を主とする反政府軍との間で内戦へと発展したのです」
三つ巴の戦いとイスラム国の崩壊(2013年ごろ)
「イスラム国が内戦に介入したことで、アサド政権政府軍、反政府軍、イスラム国という三つ巴の戦いが内戦を泥沼化させることとなりました」
「シリア国内は各地で戦火を見ることとなり、抵抗する力を持たない国民は、大量の難民となってあふれ出ることとなったのです」
「しかし内戦の中には長期化する動きもありました。アサド政権政府軍と反政府軍だけでなく、その後ろ盾となっていた欧米諸国やロシアを敵に回してしまったイスラム国は集中的に攻撃を受けることになり、実質的な崩壊へつながったのです」
「イスラム国の崩壊により、勢力図に変化が起こったのです」
「これまで三つ巴だった戦いは再び政府軍と反政府軍の戦いの形になりましたが、同時に政府軍を支持するロシアと反政府軍を支持するアメリカとの対立構図へとシフトしてしまったのです」
アサドによる軍事独裁政治が長く続いてきたところに、アラブの春で民主化を求める人たちの運動が始まった。アサドを支援してきたロシアがテコ入れして激戦になった。イスラム国の関与はあったが、ロシアを後ろ盾にするアサドの軍事政権が復活したところに大地震が起きた。もともとアサドとその取り巻きの特権階級の利権の保持にしか関心のなかった政府が最低限の機能をも失った。軍事独裁政権と疲弊しきった社会で、社会を構成する人たちの身体的、精神的障害を持つ人たちが人口の約三分の一。社会インフラもなにもないところで、二人が一人の障害者を抱えて、それなりにしても機能する社会をつくり得るのか?先進諸国からの援助もアサド政権を強化するツールにされるだけだろうし、根本的な問題がある。何を提供したところで、二人で一人の社会が成り立ち得るのか。慈善でなにがどうなるわけでもないような気がしてならない。
こんなことを言い出すと支援活動に奔走している人たちからお叱りを受けるだろうが、どうすれば二人で一人をどうにかできるのか、どうすればいいのか。
いまさら誰の責任かと言い合ってもしょうがないとは思うが、何とかしていくためには、まず今日の状態に陥った原因となった人や組織を排除しなければならないと思う。立場によって見える景色が違うことはわかるが、出来るだけバイアスを排除して経緯をみれば、アサド政権と政権を支持してきたシリア内外の国や組織を排除しなければならないと、素人目にはみえる。
p.s.
<障害者の割合>
Googleで身体障害者の割合と入力して検索したら、下記が出てきた。日本のと断り書きがないが、日本語で入力したから日本の状況がでてきたのだろう。
「障害者の総数は936.6万人であり、人口の約7.4%に相当。そのうち身体障害者は436.0万人、知的障害者は108.2万人、精神障害者は392.4万人。障害者数全体は増加傾向にあり、また、在宅・通所の障害者は増加傾向となっている」
では世界では?国連のサイトに下記の記述がある。
障害を持つ人々|国連広報センター
https://www.unic.or.jp/activities/humanrights/discrimination/disabled/
障害を持つ人々出典「国連の基礎知識」
「およそ10億の人々が、何らかの形の身体的、精神的もしくは感覚的な障害に苦しんでいる。それは世界人口のおよそ15パーセントにあたる。障害者のおよそ80パーセンの人々は開発途上国に住んでいる。彼らはしばしば社会の主流から取り残される。差別はいろいろな形態を取り、教育や働く機会を拒否することから、もっと巧妙な差別、たとえば物理的、社会的障害を作って隔離と孤立をはかることまでさまざまである。障害についての認識や概念を変えるには、社会のあらゆるレベルで価値観を変え、理解を深めなければならない」
2023/7/30 初稿
2023/9/17 改版
Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13248:230921〕
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