本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(438)
- 2023年 12月 1日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
中国共産党の存続可能性
現在の「中国共産党」は、歴史的な転換局面を迎えるとともに、存続可能性が疑問視されている状況、すなわち、「風船の破裂メカニズム」である、「内外の圧力差」が拡大するとともに「内部分裂」が進展している状態とも言えるようである。しかも、今回は、「二重の圧力差」が存在している可能性も想定されるが、実際には、「中国と海外諸国との認識の相違」であり、また、「中国国内における共産党への認識の相違」のことである。
より詳しく申し上げると、「共産主義革命を標榜しながら、資本主義的な発展を目論んできた中国共産党」に関しては、「習近平の登場」により、世界的な評価が激変した状況とも思われるのである。つまり、今までは、「羊の皮を被った狼」、すなわち、「共産主義革命を表に出さない状態」だったものが、最近では、「戦狼外交」という言葉に象徴されるように、「経済的な利益」よりも「共産主義革命の実現」を、より重要視し始めた状況のようにも感じられるのである。
そして、この理由としては、「習近平による独裁化」が、大きな要因とも思われるが、この点を、冒頭の「風船の破裂メカニズム」で判断すると、現在では、前述のとおりに、「二重の意味でのリスク」が存在する可能性も指摘できるのである。つまり、「世界全体における中国の立場」であり、また、「中国国内における中国共産党の立場」のことだが、実際には、「二重の崩壊の力が、急速に働き始めている段階」とも想定されるのである。
具体的には、「西洋諸国と中国との関係性」に関して、現在は、急速に、「資金や人員などが引き上げられている状況」であり、この結果として、「中国国内の経済情勢が、きわめて異常な収縮を始めている可能性」も指摘できるのである。つまり、「海外からの資本投資」や「不動産のバブル」を基にして発展してきた「中国経済」は、現在、大きな「内外からの経済認識の圧力差」に見舞われている状況とも理解できるのである。
その結果として、「中国の国内」においても、「中国共産党の存在意義」に対する圧力差が強くなった段階のようにも感じられるが、実際には、「独裁国家となった習近平の中国」に対して、大きな疑問が出始めた可能性のことである。具体的には、「中国国内に居住する人々」のみならず、「海外に共住する、多くの裕福な華僑」などが、「中国の将来」に危機感を抱き始めた状況であり、この時に大きな意味を持つのが、「中国四千年の歴史」において、頻繁に発生してきた「易姓革命」、すなわち、「徳の無い人が天下を収めた場合に、どのような災害や変化がもたらされるのか?」ということである。(2023.10.30)
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FTX破綻後の一年間
2022年11月9日に発生した「FTXの破綻」からの一年間を振り返ると、まさに、最近、海外で頻繁に使われ始めた「列車の脱線する姿をスローモーション映像で見ているような状況」のようにも感じている。つまり、現在は、「世界的な金融システムが、ゆっくりと崩壊している状態ではないか?」という認識のことだが、この点に関して、「天の警告」の役割を果たしたのが、「2001年の9・11事件」だったものと考えている。
具体的には、「ニューヨークの金融ツインタワーがテロ事件で崩壊した様子」が、結局のところ、「その後、目に見えない金融ツインタワーが形成され、崩壊していく状況」を、事前に示唆していた状況だったようにも思われるのである。つまり、「当時、約100兆ドルの規模だったデリバティブが、その後、2008年前後に約800兆ドルにまで大膨張した状況」や、「2008年のリーマンショック以降、崩壊を始めたデリバティブを救うために、QE(量的緩和)が実施され、中央銀行のバランスシートが大膨張するとともに、世界の債務残高が約330兆ドルにまで膨らんだ状況」などのことである。
そして、このような状況下で発生したのが、「冒頭のFTXの破綻」であり、この時に感じたのは、「この事件が、9・11事件で発生したジェット機の突入ではないか?」ということだったのである。また、その後の「2023年3月に発生した米国やスイスの銀行破綻」に関しては、「もう一機のジェット機が、目に見えない金融ツインタワーに突入した可能性」のようにも思われたのである。
しかも、今回は、「1997年8月13日に発生した世界的な信用収縮」から26年後の「2023年8月15日」に、「中国版のリーマンショック」が発生したために、私自身としては、この事件が、「目に見えない金融ツインタワーの崩壊」が始まったことを示唆している状況のようにも感じられたのである。つまり、その後は、「世界的な金利上昇により、債務の金融ツインタワーが、音を立てて崩れ始めた状況」ともいえるために、今後の注目点としては、「もう一つの目に見えない金融ツインタワーである約600兆ドルのデリバティブが、あっという間に崩壊を始める可能性」が危惧される状況とも考えられるのである。
また、このような状況下で、「世界最大の銀行、しかも、大量にデリバティブを保有するJP・モルガンの会長が、自社株の大量売却の予定を発表した」という事実については、きわめて危機的な思いを抱かざるを得ない状況でもあるが、この点については、間もなく、事実が判明するものと考えている。(2023.10.31)
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インフレ税に悩まされ始めた日本人
税金には「見える税金」と「見えない税金」との区別が存在し、また、「見える税金」が「現在と将来の税金」に分かれ、また、「目に見えない税金」が「国民の気付かない段階と気付く段階」とに分かれることは、以前に説明したが、現在の状況としては、「所得税や消費税などの現在の税金」に加えて、「国債の発行という将来の税金」、そして、「目に見えない税金」である「インフレ税」が、国民の気付かない状態で課されていた状況だったものと考えている。つまり、「2%のインフレ目標」や「異次元の金融緩和」などの言葉の裏側で、「日銀がバランスシートを大膨張させながら、国債の大量買いを実施する」という、いわゆる「リフレーション政策」が実施されてきたことも見て取れるのである。
別の言葉では、日本人は、今まで、「現在と将来の目に見える税金」のみならず、「目に見えないインフレ税」という「三種類の税金」を払っていながらも、多くの人々は、「デフレだからゼロ金利は当たり前のことだ」というような認識を持っていたのである。つまり、「政府発表やマスコミの報道」を鵜呑みにしていたわけだが、現時点の変化としては、「インフレ率が、3年連続で2%を上回る可能性」が指摘されているように、「日本人の生活が、インフレで厳しくなり始めた状況」が指摘できるものと考えている。
そして、このことは、「目に見えないインフレ税」が、「国民の気付かなかった段階」から「国民が気付き始めた段階」へ移行を始めた状況を表しており、この結果として予想される事態は、「戦後日本のハイパーインフレが再燃する可能性」ともいえるのである。つまり、「通貨の堕落がもたらすハイパーインフレは、100万人に一人も気付かないうちに発生する」という「ケインズ」などの言葉のとおりに、現在では、「史上最大規模のハイパーインフレが、日本のみならず、世界全体を襲い始めた状況」とも想定されるのである。
より具体的には、「1923年に、ドイツのワイマール共和国で発生したハイパーインフレ」以降、「風船を膨らます」という意味を持っていた「インフレ」という言葉が経済用語として使われるようになったわけだが、それまでは、「一定の金額で、どれほどの商品が買えるのか?」を表す「通貨価値」の下落が、現在の「インフレ」を表していたのである。そのために、今後の注目点は、「生活に必要な商品が、どれほどの金額で購入できるのか?」であり、また、この時に問題となるのが、現在の「デジタル通貨」の有効性とも思われるが、実際には、「政府や中央銀行への信頼感」が失われ、「大量の紙幣」が発行されるような状況下で、「コンピューターネットワークの中を流れることができない紙幣が、世界の金融システムに、どのような影響を及ぼすのか?」ということだと感じている。(2023.11.1)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13406:231201〕
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