本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(460)
- 2024年 5月 10日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
通貨の健全性
100年ほど前の「ロシア革命」の際に、レーニンは、「資本主義を破壊する最善の方法は、通貨を堕落させることだ」と述べ、その後、経済学者のケインズは、「レーニンは確かに正しかった。通貨を堕落させることほど、社会の既存の基盤を覆す巧妙で確実な手段はない。このプロセスは、経済法則の隠れた力をすべて破壊の側に働かせ、百万人に一人も気づかないような方法でそれを行う」と述べたと伝えられている。
つまり、「資本主義」、すなわち、「資本であるマネー(お金)が、主義(最も大切なもの)である」と認識される時代においては、「通貨の堕落」という「通貨の健全性を損なうこと」が。社会基盤を覆す最も巧妙な方法とも理解されていたのである。そして、ロシア革命から100年余り経過した現在、「レーニンの言葉」が実現されようとしているものと思われるが、興味深い事実としては、やはり、ケインズが指摘したとおりに、「100万人に一人も、この事実に気づいていない状況」が指摘できるものと感じている。
具体的には、「100年前の金貨」が、現在では、「デジタル通貨」に変化し、しかも、「人類史上、未曽有の規模で、大量のマネーが創造された状態」のことでもあるが、この結果として発生した現象は、「世界各国で、国家財政が危機的な状態に陥っている状況」ともいえるのである。つまり、「歳入」よりも「歳出」のほうが上回り続けた結果として、「財政赤字が増え続けた状況」のことでもあるが、実際には、「民主主義が衆愚政治に変化した事実」が根本的な原因だったようにも感じている。
また、今回、最も注目すべき点は、「信用の消滅」が、「世界のマネー残高を激減させる可能性」であり、このことは、「1600年前の西ローマ帝国崩壊以来の状態」とも想定されるのである。つまり、現在の「デジタル通貨」に関しては、決して、一朝一夕に創造されたものではなく、実際には、「1600年という時間をかけて、根本の信用が形成されてきた状況」とも想定されるのである。
そのために、これから必要なことは、「歴史のサイクル」を理解しながら、「歴史の全体像」を考えることとも思われるが、具体的には、「シュペングラーの西洋の没落」や「村山節の文明法則史学」などを理解しながら、「今後、どのような時代が訪れるのか?」を考えることでもあるようだ。別の言葉では、「お金が無くなったときに、人々は、どのような行動をとるのか?」について、歴史を尋ねながら、詳しく研究することであり、この時に必要な態度は、過去の常識を拭い去ることのようにも感じている。(2024.3.31)
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尻尾が犬の体を振り回す経済の終焉
日銀から始まり、今後、世界全体に広がっていくものと思われる「中央銀行のバランスシート急拡大」、すなわち、「今後、急速に財政ファイナンスが拡大される可能性」が意味することは、過去40年余りの期間に及んだ「尻尾が犬の体を振り回す経済」の終焉だと考えている。つまり、「実体経済」が「犬の体」、そして、「マネー」が「犬のしっぽ」の状況でありながら、今までは、「実体経済の約10倍の規模にまで膨らんだ世界のマネーが、さまざまな市場価格のコントロールを行いながら、人々の経済活動を支配していた状況」だったものと考えられるのである。
別の言葉では、「1980年代初頭から始まったデリバティブの大膨張」が、世界の経済情勢を本末転倒の状態に導いたものと感じているが、これから予想される展開は、「商品価格の名目的な上昇がもたらす実体経済とマネーとの関係正常化」とも思われるのである。つまり、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」が崩壊することにより、世界の資金が、急速に、実物資産に殺到する可能性が想定されるために、これから予想されることは、世界的な「人々の意識と行動の変化」のようにも感じられるのである。
具体的には、「金の切れ目が縁の切れ目」や「無い袖は振れぬ」などの諺のとおりに、今まで羽振りがよかった「お金のためならどのようなことでもする人々」が排除されたり、あるいは、「マネーの大膨張により産み出された金融商品」などが消滅したりする可能性のことである。つまり、「共同体の規模拡大」が「マネーの大膨張」を生み出したものと考えられるが、最後の段階では、「マネーの大膨張が、さらなる共同体の規模拡大につながった可能性」も想定されるのである。
そのために、これから想定すべき展開としては、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊時」と同様に、「マネーの縮小時に、人々は、どのような行動をとるのか?」を考えることとも思われるのである。つまり、「何が必要で、何が不要なのか?」の選別を厳格にすることでもあるが、実際には、かつての「帝国主義」のような、「武力で他国を侵略する余裕」は、現在、世界的に失われた状況のようにも感じられるのである。
より詳しく申し上げると、「実物資産の価格上昇」がもたらすものは、世界的な食料不足であり、また、「債券」や「不動産」など、既存の金融商品の価格下落とも思われるために、今後は、多くの人々が、「中央銀行のバランスシート」を観察しながら、「自分の生活のために必要な品物」を獲得する行動を始めるものと考えている。(2024.4.1)
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SWIFTとCBDC
先月、銀行間の国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」は、「現在、各国の中央銀行が開発している中央銀行デジタル通貨(CBDC)を既存の金融システムに接続できるようにする新たな仕組みを、今後1、2年で導入することを計画している」と発表した。しかも、「世界の中銀の約9割は何らかの形でCBDCの開発に着手し、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の発展に乗り遅れずに決済取引の中心としての地位を維持したい考えだが、技術的な難しさに苦戦を強いられている」とも述べているのである。
つまり、世界各国は、すでに、「CBDCの導入を急いでいる状況」とも思われるが、この点に関して、最も先導的な役割を果たしているのが「日銀」であり、実際のところ、今回も、「植田日銀総裁」は、「表面上の言葉とは違い、大胆な政策を実施し始めた状況」のようにも感じている。具体的には、最近の「日銀当座預金」と「貸付金」の急激な残高膨張の理由として、「コンピューターネットワークの中を流れることができない紙幣の増刷」ではなく、「デジタル通貨であるCBDC」を実質的に発行しながら、「1945年以降に実施されたインフレ政策と同様の手法により、日本国家の債務残高を減らそうとする動きではないか?」とも思われるからである。
そのために、今後の注目点は、「日銀のバランスシートにおける変化が、国民に、どのように受け止められるのか?」を見守ることであり、実際には、「江戸時代の貨幣改悪」の時に発生した「小判の色が白くなった事実に気づいた庶民が、慌てて、換物運動に走り始めた状況」が、形を変えて再発する可能性のことである。つまり、「政府や日銀に対する信用」が完全消滅したときには、結局のところ、「CBDCを紙幣に交換しながら、多くの人々が、実物資産の購入に殺到する展開」が想定されるのである。
そして、このことが、今までの800年間に継続した「西洋文明」を象徴する「富の時代」の終焉とも思われるが、この時に必要なことは、「富の根底に存在する信用」が、「1600年前に崩壊した西ローマ帝国以降の800年間」に、「東洋文明」を象徴する「神の時代」に醸成された可能性の理解ともいえるのである。つまり、現在の「デジタル革命」については、誕生までに1600年間の時間が必要とされた可能性のことでもあるが、今後の注目点は、「生成AI」は実物に限りなく似たような映像や新たな理論などを作り出すことができるものの、一方で、大自然が生み出すような「実際に食べられる食料」の生産は不可能であり、このことは、現時点で、典型的な「絵に書いた餅」、すなわち、「言葉や映像だけで、人々の食欲を満足させられない学問」のようにも思われるのである。(2024.4.2)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13701:240510〕
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