本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(463)
- 2024年 5月 31日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
ゼロ金利からの出口戦略
現在の「植田日銀総裁の目論見」としては、「マイナス金利を解除するとともに、異次元のインフレ政策へ踏み出す覚悟を決めた状況」とも思われるが、この点に関して、最も注目すべきポイントは、「ゼロ金利からの出口戦略」であり、実際には、「どのようにして、金利を上げていくのか?」だと感じている。つまり、「海外との金利差」がもたらす「強烈な円安圧力」により、今後、「通貨防衛のための利上げ」が予想されるものの、「利上げ」を実施した時には、「日銀の赤字決算や債務超過状態に陥る可能性」も想定されるのである。
より詳しく申し上げると、「日銀のバランスシート」における、「約592兆円の保有国債」と「約571兆円の当座預金残高」との関係性のことでもあるが、実際には、「短期資金を借りて、長期投資を実施している状況」であることも見て取れるのである。つまり、「2023年3月に破綻した米国のシリコンバレーバンク」と同様の問題を抱えているために、現在では、「0.25%の利上げ」さえも難しくなっている状況とも言えるのである。
そのために、これから予想される展開は、「利上げ」を加速させながら、「日銀当座預金」と「貸付金」を同時に増額する方法とも思われるが、この時の注目点は、「大量のCBDCが発行される可能性」とも言えるようである。つまり、古典的な「紙幣の増刷」という方法では、「金融界の白血病」とでも呼ぶべき症状、すなわち、「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができず、決済の問題が発生する可能性」も想定されるのである。
別の言葉では、「デジタル通貨の信頼性を保ちながら、日銀のバランスシート残高を急増させる思惑」が模索されるものと思われるが、この時に重要な意味を持つのが、「BRICS諸国の脱ドル化政策」とも考えられるのである。つまり、「ロシア」や「中国」などの国々が、「米国を中心とした西洋諸国」が作り出した「デリバティブのバブル」を崩壊させる目論見であり、実際には、大量の「貴金属」や「原油」、あるいは、「穀物」などの大量買い付けにより、「デジタル通貨への信頼性」を損なおうとする行為のことである。
より具体的には、「国債価格の暴落(金利は上昇)」がもたらす「デリバティブの完全消滅」とも思われるが、実際には、「1991年のソ連」と同様に、「国債の買い手」が消滅し、その結果として、「国債の価格が暴落する可能性」のことである。つまり、「クラウディングアウト」、すなわち、「民間資金が政府により吸い上げられ、金利が上昇する現象」の加速により、「長期国債のみならず、短期国債についても、買い手が消滅し、金利が急騰する可能性」のことである。(2024.4.24)
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目に見えない金融ツインタワーの現状
「目に見えない金融ツインタワー」に関しては、今まで、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界的な債務残高」を想定していたが、実際には、「約300兆ドルの世界的な債務残高の上に、不動産と株式が乗っていた状況」のようにも感じている。つまり、「オンバランスの金融タワー」と「オフバランスの金融タワー」が共存していた状況とも思われるが、現在では、「何でもバブルの崩壊」により、「債券や不動産、そして、株式において、大量の不良資産が発生し始めた段階」とも考えている。
別の言葉では、「オンバランスの不良資産」の存在が、人々の目に明らかになり始めたものの、もう一方の「オフバランスの不良資産」については、いまだに、隠蔽されたままの状態のようにも感じられるのである。つまり、「債券の価格下落(金利の上昇)」が不十分な状態のために、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」の存在が、いまだに、世界的に気付かれていない状態とも考えられるのである。
そのために、今後の注目点は、「米国の30年国債価格が、さらなる暴落を始める状況」であり、実際には、「2023年の10月の価格を下回る時に発生する衝撃」のようにも感じている。つまり、「民間企業と個人」、そして、「民間金融機関」と「中央銀行」のみならず、「国家」のバランスシートまでをも考えると、現在は、「資産と負債の差が産み出す不良資産」の残高が、急速に増加している状況とも想定されるのである。
より具体的には、「債券と不動産」に加えて、現在では、「株式のバブル崩壊」までもが加わり始めた状態であり、そのために、今後は、「債券価格の急落がもたらす世界的な資金の枯渇」が問題視され始める状況も想定されるのである。つまり、「債券と不動産、そして、株式」などの「オンバランス部分の金融タワー」に関しては、現在、人々の注目が集まっているものの、もう一方の「オフバランス部分の金融タワー」に関しては、いまだに、ほとんどの人が存在さえも知らされていない状態とも考えられるのである。
そして、このことが、「金融界の大量破壊兵器」と言われた「デリバティブの破裂」であり、「人類史上、最大のブラックスワン」とも言えるようだが、タイミングとしては、前述のとおりに、「米国の30年国債価格」がカギを握っている状況のようにも感じている。つまり、「世界的な国債の買い支え」が限界点に達する時が、「目に見えない金融ツインタワー」が崩壊する時であり、実際には、「数か月以内に発生する可能性」が高まっている状況のようにも思われるのである。(2024.4.25)
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日銀の利上げ
現在、「日銀の利上げ」に関して、いろいろな議論が述べられているが、この点に関して、決して避けることのできない最も重要なポイントは、やはり、「約25年間に及んだ実質的なゼロ金利政策の行方」だと考えている。つまり、「日本の超低金利状態」については、「人類史上において、例がないほどの異常事態」であり、そのために、今後の利上げについては、きわめて大きな反動が発生するものと想定されるのである。
別の言葉では、「GDP比で約260%にまで大膨張した国家債務残高」の崩壊を防ぐために、今まで、きわめて異常な金融政策が実施されてきたものの、現在では、「大幅な円安」に見舞われ始めたために、「通貨防衛のための利上げ」を実施せざるを得ない状況に追い込まれたものと考えられるのである。つまり、「国家の体力」を図るバロメーターとしては、「為替」と「金利」が挙げられるが、現在では、「急激な円安」の発生により、「超低金利状態の維持」が難しくなっていることも見て取れるのである。
より具体的には、「日銀の財務状況」に関して、「0.3%程度の利上げで、日銀の収益が赤字に陥る可能性」や「短期借り、長期貸しの弊害」などが指摘されているために、実際には、「日銀が身動きが取れなくなっているような状態」とも思われるのである。つまり、「利上げ」を決断した時には、同時に、「財政ファイナンス」も実施せざるを得なくなるために、現時点では、「BISや他国の中央銀行と協調したCBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」を待っている段階とも想定されるのである。
より詳しく申し上げると、現在は、「1971年から始まった『信用本位制』と呼ぶべき通貨制度」の破綻により、「世界全体の金融システムが崩壊を始めている状態」とも理解できるのである。つまり、世界全体が、「1991年のソ連」のような状況となっているために、これから取れる方策は、「最後の貸し手」である「世界各国の中央銀行」が、「大量のCBDCを発行して、デリバティブや国債などを引き受けること」しか残されていない状況のようにも思われるのである。
そして、このことは、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊時」と似たような状況でもあるが、今後、最も注意すべき点は、「金や銀などの貴金属を基にして創られた信用(クレジット)の消滅」や、その結果として予想される「人類史上、未曽有の規模でのハイパーインフレの発生」とも想定されるが、現時点では、「ケインズやレーニンが指摘したとおりに、100万人に一人も気づいていない状況」のようにも感じている。(2024.4.30)
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