本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(466)
- 2024年 6月 21日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
激化する米中対立
5月14日に米国が発表した「中国からの輸入品に対する関税の大幅引き上げ」については、「米中の対立激化」を象徴し、また、「ロシアのプーチン大統領の訪中」については、「東西冷戦構造の激化」を表す出来事の一つのようにも感じている。つまり、現在の「世界的な混乱」については、軍事や金融面など、きわめて広範囲にわたっての対立とも言えるために、多くの人々は、「これから、どのような時代が待っているのか?」に関して、大きな不安感を抱いている状況のようにも思われるのである。
別の言葉では、「歴史の全体像」が見失われた状態とも思われるが、私自身としては、反対に、「シュペングラーの西洋の没落」や「村山節の文明法則史学」などにより、「今後、どのような社会が形作られていくのか?」が、ある程度、見えてきたものと考えている。つまり、「日本」を始めとした「国家の過剰債務問題」を直視した時に、現在の「世界的な金融混乱」が、今後、どのような結末を迎えるのかが理解できるものと思われるのである。
具体的には、「マネー理論」が教えるとおりに、「財政ファイナンスにより、国家債務が棒引きにされる可能性」が高まっているために、今後は、「負債のみならず、資産までもが、急激な残高減少に見舞われる展開」を覚悟することが必要だと感じている。つまり、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」の破綻により、「800年間も継続した西洋的な富の時代が終焉する可能性」の認識である。
そして、このような前提条件のもとに、「1600年前の中国は、どのような時代だったのか?」を見直すと、「西暦424年」が「五胡十六国の時代」であり、その後、「西暦439年から南北朝の時代が始まった展開」だったことも理解できるのである。つまり、西洋では、「西ローマ帝国の崩壊」に見舞われるとともに、東洋でも、「小さな国々が対立していた状況」だったことが見て取れるのである。
そのために、現時点で必要なことは、いまだに表面化していない「金融界の大量破壊兵器」と呼ばれる「デリバティブ」の完全崩壊に対する備えであり、実際には、「未曽有の規模での世界的な金融大混乱の発生」に対して、「貴金属や資源株、そして、食料」などを保有し、混乱時期を無事に乗り切ることだと考えている。別の言葉では、「11次元にまで進化した自然科学」に期待しながら、「三次元に留まっている社会科学の進化」を待つことでもあるが、この時に参考になるのが、「1600年前の中国で発展した仏教の研究であり、また、数多くの寺院建立」だと感じている。(2024.5.16)
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農中の資本増強
5月19日の日経新聞に、「農中に対する資本増強の検討」という記事が掲載されたが、この点については、以前から想定していたとおりに、「デリバティブの完全崩壊」を示唆するような出来事のようにも感じている。別の言葉では、「26年前の1998年」が思い出された状況でもあったが、実際のところ、「その当時は、長銀に対する資本注入により、金融システムの崩壊が免れた状況」だった可能性も指摘できるのである。
より詳しく申し上げると、「1997年から始まった世界的な信用収縮」により、当時の世界的な金融システムは、崩壊寸前の状況だったが、前述の通りに、最後の段階で、「長銀に対する資本注入」が実施されるとともに、その後、「デジタル革命」が発展した状況だったことも見て取れるのである。ただし、この点については、その後の検討により、「オフバランス(簿外)におけるデリバティブの大膨張」が、最も重要な役割を果たしていたものの、今回の「農中に対する資本増強の検討」については、「26年前と比べて約30倍の規模での金融大混乱が始まった可能性」を表しているようにも思われるのである。
具体的には、「1971年のニクソンショック」から始まった「マネーの大膨張」は、最初に、「日本の土地バブル」を引き起こし、その結果として、「1997年から1998年にかけての金融大混乱」に繋がったものと想定されるのである。しかし、この時には、「日本の土地バブル」と比較して「約30倍の規模でのデリバティブ大膨張」が発生したために、結果としては、「デジタル通貨の大膨張がもたらしたデジタル革命」へと、人々の興味と関心が移行した展開だったことも見て取れるのである。
つまり、「世界の金融システム」については、「新たな資金が供給される限り、崩壊を免れ、次の成長につながる性質」が存在するものの、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」以降は、「リフレーション政策」の実施、すなわち、「世界各国が、中央銀行のバランスシートを拡大させる方法」により、金融システムの崩壊を先送りさせた状況だったことも理解できるのである。
具体的には、「日本の土地バブルと比較して約30倍の規模で不良債権が積みあがった状況」とも考えられるのである。ただし、この点については、「デリバティブ」が「金融界の大量破壊兵器」といわれるように、これから想定される展開としては、「大量のデジタル通貨が紙幣に転換されるとともに、実物資産へ逃避を始める事態」であり、実際には、「世界的なハイパーインフレの発生」と呼ぶべき状況のようにも感じている。(2024.5.19)
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フィスカルドミナンスと財政ファイナンス
最近、海外のみならず、日本でも、「フィスカルドミナンス(財政従属)」や「財政ファイナンス」などの言葉が頻繁に聞かれるようになったが、この理由としては、やはり、「中央銀行の資金繰り」に問題が発生し始めた点が指摘できるものと感じている。つまり、金融の歴史を遡ると、民間部門で発生した「大量の不良債権」が、その後、「民間銀行」や「中央銀行」などへと移行する過程で、「バランスシートの大膨張」が発生し、最後の段階では、「紙幣の大量発行」が実施されたことも見て取れるのである。
別の言葉では、「マネーの大膨張」の過程で、前半の「民間部門」に続き、後半では、「中央銀行」のバランスシート残高が急拡大するものの、「バランスシートの非対称性」、すなわち、「資産には上下の価格変動がありながら、負債には変動がない状況」のために、「資産価格の下落」が「不良債権の発生」を引き起こすとともに、最後の段階では、国家そのものが「破綻」する可能性も見て取れるのである。
そして、この点については、「共同体の規模拡大」が引き起こす「組織に対する人々の隷従化」が、大きな役割を果たしているものと感じているが、実際には、「全体と個人の関係性」において、「属する社会や共同体の規模が大きくなればなるほど、個人の相対的な力が低下する状況」のことである。つまり、現在のような「2000万人や3000万人規模の大都会」では、「社会の部品となった個人は、マネーの力にひれ伏すとともに、巨大な中央集権政治の言いなりにならざるを得ない状況」のようにも感じられるのである。
その結果として、現在は、冒頭の「フィスカルドミナンス」が発生している状況とも思われるが、興味深い点は、「クラウディングアウト」が引き起こした「金利の上昇」により、「人々の覚醒が、世界的に始まっている可能性」とも言えるようである。つまり、「金融混錬の激化により、多くの人々が、お金の謎や歴史などを考え始めた可能性」であり、また、「政府や通貨への信用が減少することにより、実物資産に対する認識を改め始めた可能性」のことである。
しかも、今回は、「人類史上、初めて、通貨と実物資産の関係性が断たれるとともに、未曽有の規模でデジタル通貨の大膨張が発生した状況」であるために、これから想定される「財政ファイナンス」、すなわち、「債務の貨幣化」についても、世界的な大混乱をもたらす可能性が想定されるが、重要なポイントは、やはり、「歴史を振り返りながら、自分の人生において、何が重要なのか?」を考えることのようにも感じている。(2024.5.21)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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