本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(475)
- 2024年 8月 23日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
ニフティフィフティーとテックバブル後の金価格急騰
米国NASDAQの株価は、現在、「日足と週足、そして、月足の全てにおいて、フラクタル的な三段上げを完成した状態」のために、最近の米国では、「かつてのニフティフィフティーやテックバブル相場などと同様の運命をたどるのではないか?」という意見が頻繁に聞かれる状況となっている。別の言葉では、これほどまでのバブル相場が繰り広げられたことに「驚き」の念を覚えつつも、現在では、さすがに、「全ての上昇エネルギーが使い果たされた可能性」を認識せざるを得ない状況とも思われるのである。
より具体的には、「今回の『マグニフィセント7』と言われた大相場が終了した後に、どのような展開が待っているのか?」について、多くの人が考え始めた状況とも思われるが、この点に関して、今回、私自身が気付かされたことは、「かつてのバブル相場の後に、金価格の急騰が発生した事実」でもあった。具体的には、「1970年代初めの米国で見られた少数優良銘柄中心の上昇相場」を意味する「ニフティフィフティー」の後には、「金価格が35ドルから850ドルまでの急騰を演じた状況」だったことも見て取れるのである。
また、「2000年前後のテックバブル」の後には、「金価格が約250ドルから約1900ドルまでの急騰を演じた」という状況のために、現時点における注目点としては、「今回のMAG7のバブル崩壊後に、以前と同様の金価格急騰が発生するのか?」が挙げられるものと考えている。あるいは、「どこまで金価格が上昇する可能性があるのか?」や「価格が上昇する場合には、どのようなメカニズムが働いているのか?」などの疑問点も、今後、噴出し始める可能性も想定されるのである。
そのために、現時点で必要なことは、「1970年代」と「2000年代初頭の10年間」、そして、「現在の状況」を比較しながら、「現在、どれほどのマネーとクレジットが、株式市場や貴金属市場に流れつつあるのか?」の理解のようにも感じている。つまり、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」に関して、現在は、「金融システムのみならず、通貨制度の崩壊も危惧される状況」とも言えるために、現時点で理解すべき点は、「今後、どのような展開が、世界の金融界で発生するのか?」ということのようにも思われるのである。
具体的には、古典的な「ハイパーインフレの発生」を想定しているが、今回の問題点は、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊」が唯一の参考例となるために、「今後、どれほどの規模で、世界的な金融混乱が発生するのか?」が見えにくい点が挙げられるようである。(2024.7.11)
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1970年代のアメリカと1991年のソ連
現在の世界経済に対する見方としては、「リセッション(景気後退)」や「スタグフレーション(景気悪化とインフレの混在状態)」、あるいは、「ハイパーインフレ(制御不能なインフレ)の発生懸念」などが存在するものと感じている。別の言葉では、「民間の産業部門」や「民間の金融部門」、そして、「中央銀行や国家の資金繰り」に関して、「どの部門を見るかによって、いろいろな意見や見方が出てくる状況」のようにも感じられるのである。
そのために、今回は、「スタグフレーション」を経験した「1970年代のアメリカ」と「ハイパーインフレ」を経験した「1991年のソ連」を比較しながら、「それぞれの時代に、各国で、どのようなことが起きていたのか?」を考察してみたいと思う。具体的に申し上げると、「1970年代のアメリカ」においては、「1971年のニクソンショック」により「通貨や金融システムに関する不安」が存在していた状況下で、「民間の産業部門における景気後退」が始まったものと想定されるのである。
そして、結果としては、「当時のFRB議長だったボルカー氏が、20%前後にまで金利を引き上げる政策を実施したことにより、インフレが収まった」という結果に落ち着いたが、当時の「国家債務のGDP比率」については「約35%」というように、「国家や中央銀行の資金繰り」に関しては、ほとんど問題がなかった状況だったことも見て取れるのである。しかし、一方で、「1991年のソ連」に関しては、「社会主義や共産主義国家の例にもれず、非効率的な生産方式や国民の労働意欲の欠如などにより、民間の産業部門における衰退は、1980年代から明らかな状況」だったことも理解できるのである。
しかも、このような状況下で、「中央銀行や国家の資金繰り」に問題が発生し始めたために、結果としては、「国債の増発」を実施したものの、最後には、「国債の買い手が消滅したために、インクがなくなるまで、紙幣の大増刷が実施された状況」だったのである。つまり、「スタグフレーション」と「ハイパーインフレ」の境目としては、「国債の買い手が存在するか否か?」が挙げられるものと思われる、現在の世界では、いろいろな国々で、「国債の買い手が消滅する可能性」が危惧されている状況ともいえるのである。
このように、現在では、西洋諸国のみならず、かつての共産諸国を含めて、世界全体が、「ハイパーインフレの発生懸念」に悩まされている状況とも思われるが、この点に関する重要なポイントは、やはり、「民間部門だけではなく、中央銀行や国家の資金繰りを確認すること」だと考えている。(2024.7.14)
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投資対象の先鋭化と価格の急騰
「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」以降に発生している現象は、「投資対象の先鋭化と価格の急騰」だと感じているが、実際には、「金融逆ピラミッドの内部において、デリバティブが創り出したデジタル通貨が、徐々に、下部に位置する債券や土地、そして、株式などにメルトダウンしている状況」である。より具体的に申し上げると、最初に、「国債を始めとした債券価格の上昇」が始まったわけだが、最後の段階では、「人類史上初めての、世界的なマイナス金利」が発生したことも見て取れるのである。
そして、結果としては、「債券を購入する主体」と「債券を発行する主体」の両方が、「超低金利状態やマイナス金利の影響を受けた状況」でもあったが、結局は、「投資理論」のとおりに、「上昇エネルギーが使い果たされた時に、価格の下落が始まり、次のバブル形成へとデジタル通貨が流れ始めた状況」だったことも理解できるのである。具体的には、「世界的な土地バブルの発生と崩壊」のことだが、その後の展開としては、ご存じのとおりに、「米国におけるマグニフィセント7の株価急騰」だったことも見て取れるのである。
このように、「2008年からの約15年間」については、「巨大な市場規模の投資対象」から、徐々に、「より小さな市場規模の投資対象」への「先鋭化」が発生するとともに、「個別銘柄の価格急騰」が、より一層、鮮明化している状況のようにも感じられるのである。別の言葉では、「それぞれのバブル発生と崩壊」に関して、いろいろな主体に「不良債権」が発生したものの、結局は、「より巨大な主体による、さらなる資金追加により、金融システムの崩壊が防がれた」という展開だったものと考えられるのである。
そして、現在は、「株式市場のバブル崩壊」が懸念されるとともに、「次の投資主体」ともいえる「金属などの実物資産」に対して、大量の資金が流れ込み始める可能性が想定され始めているのである。別の言葉では、「中央銀行や国家の資金繰りが厳しくなり始めた状況下で、世界的に、大量の紙幣増刷が実施される可能性」が高まっており、そのために、多くの投資家が、「実物資産への資金移動」を考慮し始めた状況のことである。
その結果として、最終段階で発生する現象は、「生活に必要な食料などへの資金移動」であり、この点については、「1923年のドイツのハイパーインフレ」などが参考になるものと考えている。具体的には、「約6ヶ月」という短期間のうちに、それまでに作り上げられた「資産」や「負債」の全てが、劇的な価格変化を見せる展開のことだが、今回の注目点は、やはり、「世界全体で、この変化が発生する可能性」のようにも感じている。(2024.7.16)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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