本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(481)
- 2024年 10月 4日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
先祖の遺産を喰い潰した放蕩息子
財務省によると、「2025年度予算案における国債利払い費の要求額が28.9兆円にまで急増した状況」と報道されているが、この点については、「先祖の遺産を喰い潰した放蕩息子」のような状態のようにも感じている。つまり、「日本の国家財政」を「個人」に例えると、「年収700万円程度の人が、年間に1200万円程度の支出を行い、しかも、約1億2000万円程度の借金を背負っている状況」とも理解できるからである。
そして、「なぜ、このような無謀なことが可能なのか?」という理由については、ひとえに、「戦後の日本人が築き上げた貯蓄」の食い潰しが挙げられるが、一方で、「2024年の利上げ」に関しては、「過去の遺産の喰い潰し」と「高利貸しからの新たな借金の始まり」を表しているものと考えている。別の言葉では、「過去20年余りの期間に実施された、デリバティブの利用による超低金利政策」が世界的な転換点を迎えた結果として、日本までもが、金利上昇の波に見舞われた状況のことである。
そのために、これから想定される展開としては、「税収の約4割が利払い費に費やされる状況が、今後、より一層、悪化する可能性」であり、また、「国債の買い手が消滅した時に、財政ファイナンスが実施される可能性」ともいえるようである。つまり、「個人」の場合には、「自己破産」という結果になる場合が多いものの、「国家」の場合には、「最後の手段として、紙幣の増刷が実施される可能性」が残されているのである。
より詳しく申し上げると、「1991年のソ連」では、「最後の段階で、インクが無くなるまで、紙幣の大増刷が実施され、その結果として、ルーブルの価値が、短期間のうちに3000分の1にまで急減した」とも言われているのである。つまり、「国家の財政破綻」については、ほぼ例外なく、「紙幣の大増刷」につながるものと思われるが、実際の状況としては、「ほとんどの国民が、実際のハイパーインフレに遭遇するまで、このような悲惨な事態が発生する可能性を無視する状況」であることも理解できるのである。
別の言葉では、「人生における慣性の法則」ともいえる「今日は昨日の続きであり、また、明日も今日の続きである」というような認識を持つ傾向が強いために、「小学生でも理解できるような国家財政の計算」までもが無視される状況のことである。つまり、「臭いものには蓋」、あるいは、「嫌なものは無視」というような態度が取られた結果として、最後の段階で、もっとも危機的な状態ともいえる「世界的なハイパーインフレの発生」に見舞われる展開のことである。(2024.8.20)
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富の時代と神の時代(3)
「村山節(みさお)の文明法則史学」では、「文明の交代には約100年の時間が必要であり、また、この時に発生するのが民族の大移動である」と言われているが、この点には、補足的な説明が必要だと感じている。つまり、「西暦376年前後から始まったゲルマン民族の大移動」に関しては、「前半の約50年間」に発生した現象が「大都市への人口集中」であり、その結果として、現在と同様に、「パンとサーカスの生活」や「少子高齢化」、あるいは、「財政赤字とインフレ」などの現象が発生したことも見て取れるのである。
しかし、「後半の約50年間」については、「西暦476年に滅んだ西ローマ帝国」という事実からも明らかなように、「前半とは、まったく逆の展開」、すなわち、「大都市における人口急減」や「信用消滅がもたらしたマネーやクレジットの残高急減」に見舞われたことも理解できるのである。つまり、「われわれが、これからの約50年間に、どのような時代を経験するのか?」を考える場合に、「西ローマ帝国の滅亡が、どのような展開を見せたのか?」が、大きな参考になるものと想定されるのである。
別の言葉では、現在、最も大切なこととして、「既存の常識を捨て去りながら、新たな時代への対応を図ること」が挙げられるものと思われるが、実際には、「共同体の規模拡大に伴い増え続けてきた世界のマネーやクレジットの残高」に関して、「今後、どのような変化が発生するのか?」を考えることである。つまり、「人類史上、初めて、単なる数字が貨幣として使われた『デジタル通貨の時代』を、詳しく検証すること」であり、また、一瞬のうちに発生するといわれる「信用の崩壊」に関して、「現在が、どのような位置にあるのか?」を理解することである。
より詳しく申し上げると、「過去100年間に、どのような変化が、世界の通貨制度や金融システムに発生したのか?」を理解することであり、実際には、「氷のような状態の金(ゴールド)から水のような状態の紙幣、そして、その後の水蒸気のような状態となったデジタル通貨への変化」を具体的な数字で捉えながら、今後の展開を考えることである。つまり、「厚い雲に覆われた状態」ともいえる「現在の世界的な金融システム」に関して、「今後、どれほどの紙幣が、雨のような状態で、世界に降り注ぐのか?」に想いを馳せることである。
より具体的には、「西ローマ帝国の滅亡」を参考にしながら、「これから、どのような事件が、世界の金融界で発生するのか?」に注目することでもあるが、現時点では、「どのような大事件が発生しても不思議ではない段階」に差し掛かった状況のようにも感じている。(2024.8.22)
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経済統計数字の信ぴょう性
8月21日に報道されたニュースでは、「米労働省は2024年分の雇用統計について年次改定の推定値を公表し、3月時点の雇用者数は81万8000人程度の下方修正になる可能性が高い」という説明が行われたが、この点については、「ほとんどの金融専門家が予想していたこと」だったものと感じている。つまり、現在では、「世界第二位の経済大国である中国」のみならず、「世界第一の経済大国であるアメリカ」においても、「経済統計数字の信ぴょう性」が疑われるような状況となっているものと想定されるのである。
別の言葉では、「40年ほど前に、私自身が、アメリカのファンドマネージャー達から受けたアドバイス」が思い出された状況でもあったが、実際には、「投資の実践において、経済統計数字は役に立たない」というものだった。つまり、「政府や金融当局者によって、意図的に、統計数字が歪められる可能性」が存在するだけではなく、すでに始まっていた「経済の金融化」、すなわち、「実体経済よりもマネーの残高の方が急拡大している事実」により、40年前のアメリカでも、「マクロの経済統計を頼りにした実践投資」では、良い運用成績が残せなくなり始めていたものと考えられるのである。
そのために、今回の「大幅な統計数字の下方修正」についても、「海外では、誰も、驚かないような状況ではないか?」とも感じているが、同時に脳裏に浮かぶことは、やはり、「フローである実体経済」と「ストックであるマネーやクレジット」との違いである。つまり、「雇用統計」や「GDP」などの「実体経済に関する統計数字」については、基本的に、「今日と明日との継続性が保証されていない状況」であり、その結果として、「数字の連続性」に信頼感が持てない状況のようにも感じられるのである。
しかし、一方で、「ストックであるマネーやクレジット」については、「今日と明日との継続性」を意味する「数字の連続性」が信用できる状況のために、「金融システム」、そして、「マネーやクレジット」の性質を理解することにより、「未来予測」が容易になる可能性も指摘できるのである。つまり、「マネーやクレジットが、今後、どの商品に向かうのか?」を考えることにより、「次の上昇銘柄が予想可能な状況」のことである。
しかも、現在は、「1600年に一度」とでも呼ぶべき「マネーやクレジットの大膨張が終焉の時を迎えている状態」とも思われるために、これからの「世界的な金融大混乱期」に際しては、より一層、「どのような性格の資金が、どのような商品に流れているのか?」の理解が必要とされるものと考えている。(2024.8.26)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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