SJJA& WPO【西サハラ最新情報】601 デ・ミストラ国連特使が西サハラ難民キャンプ訪問
- 2024年 10月 5日
- 時代をみる
- 国連平田伊都子西サハラ難民
2024年9月末日、久しぶりに<西サハラ>という言葉を、国連事務総長報道官が発しました。 が、記者陣の反応はゼロでした。
世界の関心は、イスラエルの暗殺に報復するイランと、お門違いの報復を繰り返すイスラエルに集中しています。
① 国連定例記者会見で半年ぶりに西サハラ登場、が、、:
「西サハラ事務総長個人特使であるスタファン・デ・ミストラは、10月16日に行われる安全保障理事会への隔年ブリーフィングに先立ち、すべての関係者と協議中。彼は現在ニューヨークにおり、モロッコのナセル・ブリタ外務大臣とモーリタニアのモハメド・サレム・ウルド・メルズーク外務大臣と個別に会談した。これは昨日(9月29日)のことだ。今日遅く、彼はアルジェリア外務大臣、アハメド・アタフと会う予定だ。今後、デ・ミストゥラはチンドゥーフでフレンテ・ポリサリオの指導者と会う予定だ。彼は、西サハラの政治プロセスを建設的に進めるという精神で行っている活動を、安全保障理事会、そして彼の上司である事務総長に報告する」と、国連事務総長報道官が発表した。
国連事務総長個人特使という要職に就いて2年間、この国際高級官僚は巧妙に仕事をするふりをしてきたが、実質的な交渉成果を全く上げていない。自分が個別に会っただけだ。
モロッコ国連代表部によると、ブリタ・モロッコ外務大臣とオマル・ヒラール・モロッコ国連大使は、モロッコ・サハラの国連事務総長の個人特使、スタファン・デ・ミストラの要請により会談に臨んだということだ。会談でブリタ・モロッコ外務大臣とヒラール・モロッコ国連大使は、モハメド6世国王陛下―彼に神の助けがありますようにーが推進する現在の国際的なダイナミクスを明らかにした。さらにモロッコ代表団は、国王陛下が定義したモロッコのサハラに対する4つの基本を繰り返した。具体的には、①.事務総長と彼の個人特使による、妥協に基づく現実的、実用的、永続的な政治的解決のための努力への支持。②.モロッコ主権の下で、この地域紛争の唯一の解決策としての自治権。③.2023年10月30日の安全保障理事会決議第2703号に従い、このプロセスの唯一の枠組みとして、アルジェリアを含むすべての当事者が参加する円卓会議。④.政治プロセスの継続の前提条件として他の当事者による停戦作業、以上の4点だとモロッコ代表団は述べた。
② 西サハラ難民キャンプへ、スタファン・デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使:
シディ・オマル西サハラ難民政府国連代表は、「10月3日から始まるスタファン・デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使の訪問は、西サハラ人民の民族自決権と独立に向けての変わらない願いを今一度伝える<絶好の機会>になる」と、10月2日に声明を出した。しかし、デ・ミストラ国連特使の期待に反して、報道陣の反応は全くなかった。
この日、10月2日の国連記者会見室は、カッツ・イスラエル外務大臣がアントニオ・グテーレス国連事務総長に叩きつけた<ペルソナ・ノン・グラータ>で、もちきりだった。
<ペルソナ・ノン・グラータ>はラテン語で、<歓迎されない人>を意味する。外交世界や国境管理局などで、<出入り禁止人物>のレッテルに使われる。つまり、イスラエルはアントニオ・グテーレス国連事務総長をイスラエル出入り禁止処分にしたのだ。
イスラエルの国連事務総長に対する<ペルソナ・ノン・グラータ>に国連安保理メンバー諸国は反発し、事務総長支持を表明した。デジ中国テレビ特派員は同日10月2日の定例記者会見で、「国連がネタニヤフ首相をペルソナ・ノン・グラータに指定する可能性はあるのか? この案は、中国国内のネットで炎上しているのだが、、」と、国連事務総長報道官に質した。報道官は、事務総長を支持する国連安保理メンバー諸国に謝意を述べたうえで、中国特派員の質問への具体的な回答は避けた。
2024年10月3日、デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使はアルジェリアのチンドゥーフにある西サハラ難民キャンプに到着し、西サハラ難民の人道状況を確認するため、施設、事務所、機関を訪問し、女性、若者、難民キャンプで選出された幹部たちに会い、全国評議会や諮問評議会のメンバーとの会合を重ねた。会合には、MINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)のコーディネーターで西サハラ難民政府国連代表のシデイ・オマル博士、報道とアラブ世界を担当する大統領府の顧問、ナナ・ラバット・ラシッド、そしてデ・ミストラの補佐官が出席した。訪問の終わりに、国連西サハラ事務総長個人特使は、共和国大統領でポリサリオ戦線事務総長のブラヒム・ガリと会談した。
西サハラ難民も難民キャンプの大家さんアルジェリアも、デ。ミストラ大歓迎で、モロッコのように国連関係者に<ペルソナ・ノン・グラータ>のレッテルを貼り立ち入りを禁ずるようなことは全くない。
デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使個人特使(左かr2番目)と
ブラヒム・ガリ西サハラ難民大統領(中央)
③ 5年以上、両当事者交渉の場を設定していない国連西サハラ関係者:
2019年3月21日と22日にスイスのバージンズで、西サハラ紛争両当事者のモロッコ代表とポリサリオ西サハラ代表と、オブザーバーのアルジェリア代表とモーリタニア代表が一同に会した。しかし、その年の5月に、前国連西サハラ事務総長個人特使で元ドイツ大統領ホルスト・ケーラーは、突然、辞任し、以来、約5年にわたり両当事者は交渉の席についていない。
以降、モロッコは交渉の場から西サハラを抹殺しアルジェリアと話をつけようと、アルジェリアに強く働きかけてきた。西サハラ民族自決権の国連西サハラ人民投票実現を目指すアルジェリアは、国連憲章も国連安保理決議も国際法も無視して領有権を主張するモロッコの強行策を拒否してきた。モロッコ・ファーストの国策は、モロッコを仕切るイスラエル・スーパーファーストの指導よろしく、ますます露骨になってきた。モロッコは、モロッコ占領地・西サハラのサハラ被占領民の移動を厳しく取り締まり、国連や国際関係の人権調査団に<ペルソナ・ノン・グラータ>のレッテルを貼って、占領地への立ち入りを禁じている。
一方、9月30日、第79回国連総会一般討論でアタフ・アルジェリア外務大臣は、西サハラの脱植民地化に対する自国の確固たる支持を繰り返し述べ、この地域の植民地主義の最終章を終わらなければならないと、強調した。続いて80人目の討論者となったベンジャマ・アルジェリア国連大使も、狡猾なモロッコ外交団につけ込む隙を見せなかった。
アタフ・アルジェリア外務大臣は、10月1日と2日に国連事務総長やローズマリー・ディカルロ国連政治・平和構築担当事務次長などと精力的に会談を重ね、国連安全保障理事会の議題である国際平和と安全保障の問題、特に西サハラ問題、リビア危機、サヘル地域の状況について意見交換した。
10月4日、CJEU(欧州連合司法裁判所) は、EU(欧州連合)理事会と欧州委員会の控訴を却下し、モロッコとEU-間の農業漁業協定を事実上無効とした。EU(欧州連合)の最高司法裁判所は、モロッコ占領地・西サハラの領土と領海における西サハラ天然資源は西サハラ人民のものであることを認めた。やっと、正義が戻ってきたようだ、、
口をとんがらして国連事務総長報道官につっかかってくるマイク・イスラエル国連記者が、報道官の誘導にひっかかり、米国務省の回し者だと自白しました。 9月末のことです。
報道官がスクリーンで質問するマイクに、「マイク、マイク、マイク、マイク、マイク、…ホワイトハウスから私たちに話しかけているのか?」と聞くと、マイクは「いいえ、:国務省だ」と、思わず暴らしてしまいました。 報道官は、「ああ、国務省だね? 了解。 十分に近い。」と、決着をつけました。
報道官の勝ち~~!
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2024年9月5日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye5780:241005〕
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