粉ミルクにセシウム 測定なくして安全なし
- 2011年 12月 8日
- 評論・紹介・意見
- セシウム原発山崎久隆粉ミルク
セシウム137と134が合わせて約30ベクレル検出された明治の粉ミルク。「明治ステップ850g(缶)」という製品で、12月3日と4日に検査で発見されたという。ホームページには測定データも公表している。
明治は、セシウムが検出された製品約40万缶について回収を行うことにした。以前の明治とは大きく違った対応の理由は何だろうか。
粉ミルクのセシウムは乾燥重量でキログラムあたり最大30.8ベクレルであるから、飲む段階で溶かしていることを考えれば、摂取する段階で濃度は薄まることになる。おおむね30グラムを200ミリリットルのお湯に溶かすというから、この状態では1リットルあたり0.8ベクレル程度になる。大量の放射性物質が混入したとは言えないはずだが、明治は粉ミルクの無償交換を始めた。このこと自体は良いことのはずだが、そうなると9月に同じ明治を舞台に起きた給食の牛乳問題は一体どうなるのかという疑問がわく。
10月、東洋経済誌に明治乳業の学校給食用牛乳のセシウム汚染問題が取り上げられた。測定をしたのはたんぽぽ舎にある放射能汚染食品測定室、依頼をしたのは町田市議会議員の吉田つとむ氏だ。このとき町田市の学校給食用牛乳からキログラムあたり6ベクレルのセシウムが検出された。吉田市議は直ちに明治に対し公開質問状を出し、町田市には学校給食の放射能測定を要請した。
明治の回答は「(集荷地域にある)各自治体等の調査結果において、放射性物質は暫定規制値を大きく下回り安定しております。したがいまして、牛乳の安全性は確保できているものと判断しております」という木で鼻をくくる回答。セシウムが入った原因や対応策の説明は全く無かったという。
町田市もまた、まるで人ごとのような対応だったと吉田市議は語っている。
(10月29日週刊東洋経済)
一方、今回の粉ミルク問題では、飲む段階では遙かに低くなるはずの粉ミルクを40万缶も回収するという。この対応の違いは一体何だろうか。
さらに奇妙なのは、今回の粉ミルク問題では汚染原因について説明をし始めていることだ。ではなぜ学校給食用牛乳で説明を拒否し続けたのだろうか。
考えられることは、このときの対応に対して吉田市議のように厳しく追及する人がいたことが明治の対応を変えさせたということであろう。
隣の武蔵野市では同様に5ベクレルのセシウム汚染が見つかった牛乳(明治ではない)を給食に出すことを中止している。町田市と同じ明治の牛乳を使っていた世田谷区などでは自主的に区で検査をする体制を取るという。
すぐに成果が現れないとしても、粘り強く迫り続けることが、企業の態度を変えさせる唯一の道だと言うことを、今回の明治の対応が表しているのではないだろうか。
たまたま粉ミルクを飲んでしまった子どもたちの健康にはおおきな不安が残るかもしれないが、少なくても発見して取り除くことが出来たことで、この明治については汚染粉ミルクが出回る可能性は無くなったのだとしたら、今後の被曝量を低く出来た(残念ながらゼロには出来ないが)と考えるほかは無い。 町田市の吉田市議のような取り組みが日本中で出来れば、明治のように対応を変えさせることが可能だろう。文科省の「キログラムあたり40ベクレル基準」などという恐ろしく高い基準を、自らの手で変えさせることも出来る。
たんぽぽ舎 「地震と原発事故情報 その262」より転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0716:111208〕
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