本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(32)
- 2012年 11月 19日
- 評論・紹介・意見
- 国債本間宗究証券金融
赤字国債発行法案
最近では、「赤字国債発行法案(特例公債法案)」が、マスコミで大騒ぎの状態になっていたが、多くの国民にとっては「対岸の火事」の状態であり、内心では、「それほど大きな問題にはならない」とも考えていたようである。つまり、「自民党の合意により、間もなく、この法案が通る」と考えられていたために、報道されたような「11月末で、国家資金が枯渇する」とか、あるいは、「12月初めから、国債入札が停止する」というような事態には陥らないという理解がなされていたようだが、これからの展開を考えると、「実に、大きな問題が存在する」とも言えるのである。
具体的には、「約90兆円の一般予算」のうち、現在では、「22兆円」が「金利の支払い」や「国債費」に使われており、また、「68兆円」が、「福祉予算」や「地方交付税」、あるいは、「公務員の給料」などに使われているのである。そして、今回、問題となったのは、「90兆円の予算のうち、38兆円の資金が手当てできなくなる」ということだったが、今後、法案が可決されたとしても、「金利の上昇」が起きた場合には、再び、同じような問題が浮上してくるのである。
つまり、「22兆円の金利や国債費が、今後、どのような状況になるのか?」ということだが、かりに、「金利が急騰し、スペインやイタリアのような状況に陥った」とすると、その時には、「金利の支払いだけで、40兆円から50兆円もの金額が必要になる」という状況が想定されるのである。そして、その時には、当然のことながら、「68兆円の部分が削られる」という状況が考えられるのだが、このことは、「赤字国債発行法案が可決されない場合と同様の影響を及ぼす」ということである。
しかも、現在では、「毎月の国債入札」において、「約40兆円もの国債が発行されている」という状況であり、また、「このうち、約30兆円が短期国債の発行である」というような状態にもなっているのである。つまり、資金繰りに窮した場合に見られがちな、「短期資金の導入により、自転車操業の状態になる」ということだが、実は、「1991年のソ連崩壊」の時にも、似たような状況が起きていたのである。
つまり、「長期国債の発行」が難しくなり、「短期国債の発行」に頼ったのだが、すぐに、この方法も行き詰まりを見せ、結局は、「最後の貸し手」である「中央銀行」が、「インクが無くなるまで紙幣の増刷を行った」ということだが、現在の日本も、それほど大きな違いはなくなってきたようである。(2012.11.6)
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株を忘れた証券マン
童謡の「かなりあ」という曲に「歌を忘れたカナリアは、後ろの山に棄てましょか」という文章があるが、どのような人や会社においても、「本来の使命を忘れた時には、世間から、このような目で見られる」ということを象徴した言葉とも言えるようだ。そして、このことは、現在の証券市場にも当てはまるものと思われるが、実際には、「株を忘れた証券マン」が数多く存在し、また、「証券会社自体も、株式ではなく、債券や投信の販売に力を入れている」という状況になっているのである。
このような結果として、「株式市場」には資金が回らず、また、「株価の低迷により、日本全体が苦境に陥っている」ものと考えているが、実際には、「国債にあらずんば、資産にあらず」というように、多くの資金が「国債市場」へと流れているのである。そして、このことが、典型的な「クラウディングアウト」と呼ばれる現象でもあるが、少しだけ視点を変えると、「現在は、またとない日本株投資のチャンスである」とも言えるようだ。
つまり、私が想定する「10年ごとに投資の主役が変化する」という「富の移転ルール」から言えることは、「現在の日本株は、10年前の『金(ゴールド)』と、よく似た環境にある」ということである。具体的には、「1980年から約20年にわたり下げ続けた金が、再び、輝きを取り戻したのが、2002年前後からだった」ということだが、当時は、「ほとんどの専門家が弱気となっており、誰も、金(ゴールド)を勧める人がいなかった」というような状況だったのである。
しかし、その後に起きたことは、「金価格の上昇」であり、また、「世界的な金融混乱」でもあったのだが、この点については、「1971年のニクソンショック以降、世界のマネーが異常な大膨張をした」ということに根本的な原因が存在したのである。つまり、現代の「お金」が信用できなくなっているために、「金(ゴールド)」に対して多くの人が強気になっているのだが、結果として、10年前とは打って変わり、「世界各国の政府や中央銀行までもが、継続して、金を買い増している」ということが見て取れるのである。
ところが、一方で、「日本株に対しては、万人が弱気になっている」という状況であり、歴史的にも、きわめて割安な状態に放置されているのだが、「4%前後の利回り」で「PBRが0.5倍前後」、しかも、「PERが10倍以下」というような割安な銘柄が、再び、脚光を浴びるためには、「象牙の舟に銀のかい、そして、月夜の海に浮かべる」という条件が必要なようである。(2012.11.5)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html を許可を得て転載。
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〔opinion1076:121119〕
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