米国で広がる「在沖米海兵隊不要論」を伝える
- 2010年 9月 8日
- 評論・紹介・意見
- 岩垂 弘沖縄米軍
沖縄在住の、知り合いのジャーナリストから手紙をもらった。「琉球新報の記事を読むよう多くの方々に伝えてほしい」という内容だ。そのジャーナリストによれば、在沖米海兵隊の不要論が米国議会内に出ており、琉球新報の特派員がそれを伝えている。が、本土のマスメディアはこのことを報道しない。だから、その特派員の記事を読んでほしいというわけである。
沖縄には、「琉球新報」と「沖縄タイムス」という2つの新聞がある。知り合いのジャーナリストの手紙によれば、「琉球新報」は米国ワシントンに与那嶺路代記者を特派している。
同記者の特派員電が7月16日付の琉球新報に載った。「在沖米海兵隊 広がる不要論」「下院の重鎮『冷戦の遺物』」「財政難など背景に」といった見出しがついており、一面トップ記事だ。
それによると――米民主党の重鎮で、政府に影響力をもつバーニー・フランク下院歳出委員長と野党のロン・ポール下院議員が7月6日、米国の有力サイト「ハフィントン・ポスト」に「なぜわれわれは軍事費を削減しなければならないのか」と題する論文を寄せた。その中で、両氏は、2010年度の軍事費6930億ドル(約61兆円)が歳出全体の42%にも上り、経済活動や国民生活を圧迫していると説明、さらに、米国が超大国として他国に関与することが、逆に反米感情を生み出している側面も指摘。結論として、両氏は「財政再建と雇用創出が国の最優先事項だ。度を越した軍事費問題に取り組まなければならない」と強調した。
この記事は大きな反響を呼び起こした。7月8日には、大手テレビMSNBCやCNNニュースがフランク氏らを招き、論点を取り上げた。同10日には米公共ラジオ局も取り上げ、フランク氏はそこで「1万5千人の在沖海兵隊が中国に上陸し、何百万もの中国軍と戦うなんて誰も思っていない。彼らは65年前に終わった戦争の遺物だ。沖縄に海兵隊は要らない。超党派で協力し、この議論を提示していきたい」と訴えた。
同12日のウォールストリート・ジャーナルは「普天間飛行場の県外・国外移設を望む沖縄に、強力な助っ人が現れた」と書き、今後この動きが加速する可能性に触れたという。
与那嶺路代特派員は書く。
「フランク氏らの意見が反響を呼び、メディアも大々的に取り上げている。背景にあるのは、深刻な財政赤字。リーマン・ショック以降、不況で苦しむ国民の不満が、膨大な軍事費に向き始めている。米軍の戦略見直しと財政再建の必要性が合わさり、海外駐留米軍の撤退を求める声は拡大する様相を見せている」
知り合いのジャーナリストの手紙は言う。
「(米国でのこうした動きを)朝日新聞など本土紙は報道していません。基地政策は国会でも重要視されている問題なのに、なぜ後追い報道をしないのか。不思議でなりません。高知新聞が琉球新報の記事を1ページ潰して転載しただけです」
「インターネットでは高知県の高教組が記事を転載しています。他でも次々と転載されると、大新聞の怠慢が明らかになるでしょう。ぜひ、多くの方々に知っていただきたい。私は、本土の友人たちに与那嶺記者の記事コピーを送っております」
知り合いのジャーナリストによれば、与那嶺路代特派員は同紙に時折、「ワシントン報告」を書いており、そこでは沖縄の基地問題や米海兵隊のことが取り上げられている。本土の大手紙の記者にはない視点が感じられるという。
7月16日付の与那嶺路代特派員の記事は、琉球新報のホームページを開き、「過去記事」のところをクリックすれば閲読することができる。
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