本間宗究の「ちきゅうブッタ斬り」(55)
- 2014年 6月 12日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究
「美味しんぼ」の波紋
最近、「美味しんぼ」という漫画が、政財界 を巻き込んで、世間の話題となっている。具体的には、「数年間の取材」の結果、「福島や大阪で、鼻血を出 す人が増えている」ということであり、このことが、「放射能汚染の結果ではないか?」という問題提起のことである。そして、この点については、「マスコ ミ」も加わり、「事実の真偽」や「風評被害」などの意見が、盛んに戦わされているのだが、この時に重要な点は、「不都合な真実」であろうとも「決して、見 過ごさない」という態度だと考えている。
つまり、「真実」を明らかにすることにより、「問題解決」が早まるとともに、「風評被害」も減少 するものと考えているのだが、実際には、「抽象的な 議論」により、「真実の隠蔽」が行われているようにも感じられるのである。別の言葉では、かつての「企業犯罪」と同様に、「真実が暴露されたら、企業の存 続が危うくなる」という考えのもとに、さまざまな「秘密の隠蔽」や「問題の先送り」が行われ、その結果として、「数多くの大企業が破産し、存在そのものが 無くなった」というような状況のことだが、今回は、この愚が繰り返されないことを願っているのである。
しかも、今回は、「一企業」の問題 ではなく、「日本国家」に関する大問題であるために、一刻も早く、「放射能汚染」や「健康被害」の実情を、具体的 な数値で公表することが、「現在の日本」のみならず、「今後の世界」にとっても、たいへん重要なことだと考えている。しかし、実際には、どうしても、「目 先の利益」を重視しがちになるのが、「人間の性(さが)」とも言えるようである。
また、これから想定される「最悪の事態」としては、「放 射能汚染の実態」が隠されるとともに、「新たな原発事故の発生」だと考えているが、この時に は、「日本に住めなくなるような事態」も想定されるのである。そのために、現時点で必要なことは、「現在の問題点を、すべて明らかにするとともに、国民 が、総動員で、問題解決に努力する」ということだと考えているが、実際には、「集団的自衛権」や「経済の回復」などが、「政府の主な関心事」となっている ようである。
つまり、「臭いものには蓋をする」というような態度が見られるとともに、「海外からの侵略恐怖」を提示することにより「国民 の関心を、他の問題に向 ける」という考えが存在するようにも感じられるのである。そのために、今回の「美味しんぼ」が問題提起した点については、もう一度、真剣に考え直す必要性 があるようにも考えている。(2014.5.16)
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没落する日本
4月30日に「世界銀行」が発表したレポートによると、「2011年に、購買力平価ベースで、インドが世界第三位の経済大国になった」とのことであ る。つまり、「日本は、中国の次に、インドにも抜かれ、実質的に、世界第四位の経済国になった」ということだが、この点については、「購買力平価ベース」 という事実を差し引いても、「日本人には、大きな衝撃をもたらす出来事」とも言えるようである。具体的には、「日本の経済力が、世界的に、徐々に低下して いる」という事実が見て取れるとともに、一方で、「国内外で、さまざまな問題が山積している状況」でもあるからだ。
また、「第一位のアメリカ」と「第二位の中国」との「差」も縮まっており、間もなく、「中国が、世界第一位の経済大国になる日」も近づいているよう だが、このことも、「文明法則史学」が教えるとおりに、「西暦2000年前後を境に、西洋から東洋の時代へ移行する」という事実を象徴しているようであ る。そして、今後は、「東洋の時代が、約800年間にわたり継続する」とも言われているのだが、実際には、「短期的に、これから、大きな波乱が待っている 段階」とも考えられるのである。
つまり、「文明の交代期」に起きることは、最初に「マネーの大膨張」であり、また、その後は、「通貨の堕落」と「インフレ」により、「マネーが、実 質的に、収縮する動き」だと考えている。そして、このことが、「800年前の宋の時代」や「1600年前の西ローマの時代」に起きたのだが、現在も、ほと んど同じパターンで進行していることが理解できるのである。
そして、これから想定されることは、「国債価格暴落のXデー」から始まる「本格的なインフレ(通貨価値の下落)」でもあるようだが、現在では、さす がに、多くの人々が、「これ以上、日米欧の国家財政は持たないのではないか?」と考え始めたようである。つまり、「量的緩和の正体」が「国債の買い支え」 であることに気付き始めるとともに、「これから、誰が、国債の買い手になるのか?」を危惧し始めたようにも思われるのである。
別の言葉では、「世界的な金利上昇」が始まった時に、「どれほどの混乱が起きるのか?」を考え始めたようである。そして、この点については、「過去 100年間」において、「通貨制度」や「金融システム」が、「どのような推移を経て、どのように変化したのか?」を理解することが、必要だと考えている が、実際には、「バブル崩壊」の時と同様に、「実際のインフレが始まった時から、この研究が始まる」とも考えられるようである。(2014.5.16)
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恐怖政治の末路
以前より、「古代ローマ時代のカエサル(紀元前100年―紀元前44年)」と「戦国時代の織田信長(西暦1534年―西暦1582年)」には、一種 の「共通点」があるものと考えていたが、それは、「独裁者であり、また、部下により暗殺された」という事実のことである。別の言葉では、「ブルータスよ、 お前もか?」という言葉のとおりに、「最後に、最愛の部下によって暗殺されたカエサル」と、「部下である石田光成の反乱により、本能寺の変によって亡く なった織田信長」が、「どのような理由で、似たような運命をたどったのか?」という点が、長い間、気にかかっていたのである。
そして、この点については、現在の「軍師 官兵衛」を見ることにより、ある程度の理解ができたようにも感じているのだが、実際には、「強権政治の末 路」とでも呼ぶべき状況となり、最後には、「部下の恐怖心が、反乱を引き起こした」という点が指摘できるようである。つまり、「天下布武」を標榜し、「力 により、天下を統一しようとした織田信長」に対して、「あまりにも激しい性格に、部下が付いていけなくなった可能性」のことである。
別の言葉では、「失敗したら、自分も成敗される」という恐怖心により、部下の「荒木村重」や「明智光秀」が反乱を起こしたようだが、実際には、「組 織の分裂と対立」が起きたことが理解できるようである。また、その後を引き継いだ「豊臣秀吉」は、「百姓から天下人へ」と言われるように、「織田信長の遺 志を継ぎ、天下統一を果たした」という状況でもあったのだが、この時も、やはり、「独裁者の末路」と呼ぶべき状況だったようである。
つまり、「絶対的な権力者」となった「豊臣秀吉」は、「スターリン」などと同様に、「力を持った部下の粛清」を始めたのだが、この結果として起きた ことは、「豊臣軍団における結束力の低下」だった。その結果として、「関ヶ原の決戦」で、「徳川家康の東軍」に大敗を喫し、その後、「大坂の陣」により、 「豊臣家の滅亡」へと繋がったのだが、このことは、「恐怖政治」の危険性を物語っているようにも感じられるのである。
そして、現在に生きる我々としては、「現在の世界においても、形を変えた恐怖政治が存在するのではないか?」という意識を持つことが大切だと考えて いる。つまり、「北朝鮮」の例だけではなく、「絶対的な権力」を持ち、現代の「神様」となった「お金」に対しての「恐怖心」であり、実際には、「お金が無 ければ生きていけない」と考える人々が、「お金の本質」を知った時に、「裏切られた」というような「思い」を持つことだが、最近では、徐々に、この点を理 解する人が増えているようである。(2014.5.7)
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韓国の旅客船沈没事故
今回の「韓国旅客船の沈没事故」については、歴史に残る大参事であり、「利益至上主義」に陥った人々が、「最後の段階で、どのような行為を行ったの か?」を、まざまざと見せつけるような事件だったようである。具体的には、「荷物の過積載」により「バランスを失った船体」が、「漂流」と「迷走」の後に 沈没したのだが、ご存じのとおりに、「船長」を始めとした「乗組員」が逃げ出しながらも、ほとんどの乗客は、最後まで、船内に留まるように指示されていた のである。
そして、この事件を見た時に感じたことは、現在の「世界金融」に関する「縮図」ではないかということだったが、実際には、「金融商品の過積載」によ り、「世界経済が、バランスを失っている状況」のことである。具体的には、「世界のGDPが約5000兆円」でありながら、「世界の金融資産は約10京 円」という状況のことであり、このことは、「利益至上主義に陥った現代人」が、「デリバティブ(金融派生商品)」を、大量に積み上げたことに原因が存在す るのである。
この結果として、「2007年」と「2008年」に、「金融混乱」が始まったのだが、その後に起きたことは、いわゆる「量的緩和」であり、このこと は、「傾いた船体を維持しながら、全力で航行した状況」とも考えられるようである。しかし、現在では、「イエレン議長が、金融政策の舵を、大きく転換し始 めた」という状況でもあり、今後は、「誰が、国債を買うのか?」が、世界的な大問題になることが予想されるのである。つまり、間もなく、「世界的な国債価 格の暴落(金利の急騰)」が始まることが想定されるのだが、このことは、「世界の金融が、コントロール不能な状態」になることを意味しているようである。
別の言葉では、「国債の買い支え」が継続できなくなった時に、「世界的な金利上昇」が始まり、その時から、本格的な「インフレ」が訪れるものと思わ れるのだが、このことが、今回の「沈没事故」における「漂流状態」、あるいは、「迷走状態」を表しているようである。そして、最後の段階では、「世界の金 融システム」が危機的な状況を迎えることになるものと考えている。
このように、今年になって起きていることは、実に、いろいろな「天からの警告」でもあるようだが、これらの「メッセージ」を、どのように理解し、ど のように行動するかで、我々の「資産」の運命が決定されるようだが、くれぐれも、「韓国旅客船事故」のように、「誤った指示」に従わないようにすべきであ ると考えている。(2014.5.7)
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実体経済への請求権
「日本のマネタリーベース」は、過去20年ほどで、「約50兆円」から「約220兆円」へと、急激な増加をしているが、一方で、「日本のGDP」に ついては、「約500兆円」という水準に留まっている。つまり、「実体経済」が、ほとんど変化していない状況下で、「日銀が供給する資金」が急増している のだが、このことは、「実体経済への請求権」という観点からは、「国民から国家へと、富が移転している状況」を表しているものと考えている。
具体的には、20年前の「国家」と「国民」との関係を考えると、「約500兆円のGDP」に対して、「国民が約450兆円」、そして、「国家が約 50兆円」という「請求権」を持っていたようだが、現在では、この数字が、「国家が約220兆円」にまで増え、そして、「国民が280兆円」にまで減少し たことが見て取れるのである。別の言葉では、「お金」とは「商品との交換価値」を意味しており、「実際に、どれほどの商品と交換できるのか?」を考えた場 合に、現在では、これほどまでの変化が起きているものと考えられるのである。
ただし、この点については、「金融商品の存在」や「金融政策の変化」などを、より深く考慮する必要性があるために、現時点では、「全体像を把握する ための、簡略的な方法」と理解する必要性もあるようだ。しかし、これからの展開を考えると、「国家」と「国民」との関係において、より一層、「富の移転」 が激しくなるものと考えており、実際には、「100年ほど前に、経済学者のケインズが、的確に指摘していた事実」が、まさに、実現しようとしているのであ る。
具体的には、今後、「マネタリーベース」の残高が、「世界的に、大膨張する」、しかも、この方法として、「紙幣の大増刷」が加速した場合には、「ほ とんど全ての富が、国家に移転する」という状況が想定されるのである。つまり、「マネタリーベース」の内容が、大きく変化し、現在のような「当座預金」で はなく、今後は、「日銀券」が大量発行されるものと考えているのだが、この時には、「世の中が、大騒ぎの状態となり、国民が慌てだすような事態」もそうて いされるようである。
そして、このことが、「通貨の堕落」が意味することであり、また、本当の「インフレ」でもあるのだが、このキッカケとなるのが、やはり、「国債価格の暴落」であり、時間的には、たいへん近づいているようにも思われるのである。(2014.4.24)
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学術を以て天下を殺す
世界的な金融混乱も、いよいよ、最終局面が見えてきたようだが、この時に、重要な役割を果たすのが、いわゆる「学者」ではないかと考えている。つま り、明治維新の時に、勝海舟が述べた「日本の四殺」のとおりの順番で、現在、「日本の財政破綻」が進行しているようだが、最後の段階である「学術を以て天 下を殺す」というような状況が、間もなく、起きる可能性が出てきたからである。
具体的には、「GPIF(年金積立金管理運用独立法人)」という「年金を運用する政府系機関」の「資産配分見直し」に関して、「実践経験の乏しい学 者を中心にして、国債の部分が削減されようとしている状況」のことである。別の言葉では、今まで、「国債の発行残高を増やしても、問題が無い」と考えてい た人々が、今度は、「債券相場で、大きな影響力を持っているGPIF」の資産から、「国債の配分」を減らそうとしているのである。
そして、この時の「国債の買い手」としては、「日銀」が期待されているようだが、このような行為は、「市場の反乱」を引き起こす恐れが存在するだけ でなく、まさに、「金融システムそのものを崩壊させるような行為」とも思えるのである。つまり、過去数十年にわたり、「年金」を中心にして「国債の買い付 け」が行われ、その結果として、「日本の国家債務」が、歴史上、最大の規模にまで大膨張したのだが、今回は、「国債の買い付け」に関して、「ハシゴを外す ような行為」を実行しようとしているのである。
しかも、この時には、「日銀しか、国債の買い手がいなくなるような事態」も想定されるのだが、このことは、典型的な「財政ファイナンス」とも言える ようであり、また、「日銀の資金手当て」としては、「紙幣の大増刷」しか残されていないような状況にもなっているのである。そのために、今後の「国債価 格」と「金利」の変化には、今まで以上に、大きな注意を払う必要性があるようだが、実際に、これほどまでに大膨張した「国家債務」や、あるいは、「人類史 上最低レベルに位置する日本の金利」については、今後、「予想をはるかに超えた反動」が起きることが想定されるのである。
そして、このことが、「日本発の国家破綻」のことであり、実際には、「国債の入札」が難しくなり、「金利が急騰する局面」を迎えた時に、本当の意味 での「金融混乱」が発生する事態のことである。また、このような展開こそが、私が、今までに訴え続けてきた「本当の金融大混乱」であり、「インフレの正 体」でもあるのだが、残念ながら、現時点でも、ほとんどの人が、無関心の状況とも言えるようである。(2014.4.24)
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お金持ちのスポンサー
「渡辺喜美元代表の資金疑惑」については、表面上、問題が解決したようだが、この出来事には、実にいろいろな「メッセージ」が含まれていたようであ る。つまり、「DHCの吉田会長」という「お金持ちのスポンサー」が、今回、「なぜ、事実を週刊誌に暴露したのか?」ということであり、その結果として、 「渡辺元代表の信用が、ほぼ瞬間的に失墜した」というような展開が、「今後、どのような面に表れるのか?」ということである。
つまり、「内部分裂から対立へ」という構図が、「今年の世界情勢」を見る上での「キーワード」だと考えているのだが、今回の事件は、まさに、この点 に関する「象徴的な事件」だったようである。別の言葉では、「真実の暴露」により「いろいろな膿が出た事件だった」ということだが、現時点での「最大の 膿」としては、やはり、「国家の財政問題」が考えられるようである。そして、「日本の国家債務が、1000兆円を突破した」という状況に関して、「今後、 大きな変化が起きる可能性」も存在するようである。
あるいは、「欧米の国家債務問題」についても、同様の状況だと思われるが、この時に考えなければいけないことが、「誰が、お金持ちのスポンサーなの か?」ということである。つまり、「世界の国家債務は、どのようにして積み上がり、また、これから、どのようにして解決されるのか?」ということだが、実 際に、「お金持ちのスポンサー」の役割を果たしているのは「国民」とも言えるのである。
つまり、「国民からの税金」を基にして、「国家財政」が成り立ち、また、「将来の税金」を基本にして「国家債務の大膨張」が起きたのだが、現在の 「日本国民」には、ほとんど、この認識が欠如しているようである。そして、「ゼロ金利」に我慢し、また、「増税」にも耐えている状況とも思われるのだが、 今後の注目点は、「いつまで、このような状態が継続できるのか?」ということである。具体的には、「日本国民が、国家や通貨への信頼感を喪失するような状 況」が生まれた時には、「国民が、政府に対して、愛想を尽かす事態」も想定されるのである。
そして、その時には、「金利の上昇局面」を迎えるものと思われるが、その結果として起きることが、「国家財政の、更なる悪化局面」ということであ る。つまり、「国債の発行」が難しくなる状況のことだが、「過去100年間に、30か国以上で発生したハイパーインフレ」についても、実際には、「ほとん ど同じ構図」であり、間もなく、「日本国民」も、この点に気付かざるを得ないような事件が発生するものと考えている。(2014.4.17)
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夜警国家と福祉国家
これから重要な点は、「国家とは、一体、どのようなものなのか?」について熟慮することだと考えている。具体的には、「近代国家が、どのように発生 し、また、発展したのか?」ということであり、また、「中央銀行の役割とは、一体、どのようなものなのか?」ということである。別の言葉では、「国家」と 「国民」との「関係性」を考えることでもあるが、現在では、「国家の力が強くなりすぎた結果として、国民の間に不満が高まっている状況」とも言えるのであ る。
しかも、現在では、「先進各国」が「国家財政問題」に悩まされるとともに、「異常な超低金利政策」を実行しているのだが、この点にも、大きな転換点 が近付いているようにも思われるのである。そして、現在の「ウクライナ」のように、「国民の不満が爆発する」というような状況も想定されるようだが、基本 的に、「近代国家」は、「中世封建国家や近世の絶対主義国家の崩壊後に成立した国家」と定義づけられているようである。
つまり、「1776年に起きたアメリカの独立」や「1789年のフランス革命」以降、「民主主義」を基本にして誕生したのが「近代国家」でもあるよ うだが、この推進力となったのが「産業革命」だったのである。別の言葉では、「実体経済の成長」により、「裕福な個人」が増えたわけだが、当時の人々が考 える「理想的な国家像」としては、いわゆる「夜警国家」が想定されていたようである。
具体的には、「国家の役割は、外的からの防御、国内の治安維持など,必要最小限の公共事業にあるとする国家観」のことであり、実際に、「19世紀の 大英帝国」は、このような状況下で、大きな発展を遂げたことが理解できるのである。しかし、その後に起きた変化としては、「福祉国家」という考え方が広 まったことである。つまり、「20世紀」においては、「社会保障制度の整備を通じて、国民生活の安定を図ること」が、「政府の目的」とされたのである。
そして、「20世紀の半ば」のような「実体経済の急拡大期」においては、この「福祉国家論」が成功したようにも見えたのだが、現在では、反対に、 「年金」や「健康保険」などの負担が、「国家の重い負担」となっているのである。別の言葉では、現在の「国家財政問題」が、より一層、深刻化した時には、 「福祉国家」の体制が維持できなくなるものと思われるが、このことが、現在でも、「ゼロ金利政策」や「超低金利政策」が維持されている理由とも言えるよう だ。(2014.4.16)
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黒田日銀総裁の出口戦略
先日、国会において「金融のプロ」を自認する議員が、「日銀の黒田総裁」に対して、いろいろな質問を投げかけていた。具体的には、「日銀の当座預金 金利を上げると、日銀の収益が厳しくなる可能性」のことであり、また、「日銀の出口戦略は、どのように考えるのか?」という点などだったが、この議員とし ては、「日銀」が長期国債を買い続けることに「大きな不安」を持つとともに、「日銀の出口戦略が思い付かない」ともコメントしていたのである。別の言葉で は、「現在の金融政策では、日銀のバランスシートの正常化や、ゼロ金利政策の解除は不可能だ」と言いたかったようにも思われるのである。
そして、この時の「黒田総裁」の回答としては、「出口戦略を語るのは、時期尚早であり、また、海外と同様に、非伝統的な金融政策を実行している」と いうものだった。つまり、「簡単にあしらわれた」というような状況だったのだが、残念だった点は、「質問の内容」であり、実際には、「もう少し鋭い論点が 必要だった」とも感じた次第である。具体的には、「国債の買い付け資金を、どのように手当てするのか?」ということであり、また、「国債入札に関して、特 別会計が、どのように関与しているのか?」などのことである。
ただし、「国会において、ようやく、日銀のバランスシートが議論され始めた」という事実には、「時代の変化」を感じるとともに、今後も、より一層、 この点に関する議論が深まっていくことを期待しているのだが、現在の「世界の金融情勢」を見ていると、「日銀の出口戦略」については、「時期尚早」どころ か、反対に、「完全に手詰まりの状態」とも考えられるようである。
つまり、現在、「アメリカ」では、すでに、「量的緩和の終了」や「ゼロ金利政策の解除」までもが議論され始めているのである。そして、この時に、 「GDPの二倍以上もの国家債務」を抱えている「日本」は、「出口戦略」を語れるような状況ではなく、反対に、「市場の反乱」という「国債価格の暴落」 や、あるいは、「入札の失敗」などを考える段階に入っているものと思われるからである。
そして、このことが、私の想定する「金融の大地震」であり、時期的には、たいへん近づいてきたようにも思われるのである。つまり、今年の「6月」か ら「7月頃」を想定しているのだが、「天災」と同様に「人災」も、「人々が忘れた頃に訪れる」という可能性があるとともに、「実際に、事件に遭遇しない限 り、人々は、バブルの存在に気付かない」という状況が、今回も、再現されるものと考えている。(2014.4.7)
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四種類の徳
世の中には、「四種類の徳」が存在するそうだ。具体的には、最初が「人々の苦しみを救う徳」であり、このことは、「飢餓や貧困などの苦しみから、 人々を解放する行為」とも言えるようである。つまり、今から「100年ほど前の世界」では、「先進国の人々」が望んでいたことが「食料不足の解消」であ り、この点については、現在でも、「多くの発展途上国」が悩まされている状況とも言えるのである。
そして、二番目が「人々に喜びを与える徳」であり、実際には、「新たな発明、発見などにより、より快適な人生を送ることを可能にする行為」でもある ようだが、このことは、「さまざまな技術革新により、過去100年間で、世界の生活水準が大きな変化を遂げた」ということが見て取れるのである。また、三 番目が、「人の喜びを、我が喜びとする徳」だそうだが、このことは、「自分の家族が、受験で成功したり、会社で昇進したりした時に、自分のことと同様に喜 ぶ状態」を表しているようである。
別の言葉では、「人類は皆兄弟である」というような「考え」を持つことだと思われるが、具体的には、「自分の息子が結婚し、孫が生まれ、新たな家族 が増えた」というような「喜び」を「他人に対しても抱く」ということである。しかし、現代社会においては、「戦国時代の黒田官兵衛」と同様に、「家族間に おける争い」が起きるとともに、「他人を蹴落としてでも、自分の成功を考える人」が増えているようにも思われるのである。
しかも、現在では、「世界的な金融コントロール」というように「国家が、国民の利益を無視するような状態」までもが発生しており、実際には、「いろ いろな分野で、さまざまな対立関係が起きている状況」とも考えられるのである。別の言葉では、「ほとんどの人が、自分の利益だけを考えるような社会」と なった結果として、「世界全体の金融システム」が崩壊しかかっている可能性のことであある。別の言葉では、「資本主義体制」が極まった状況とも考えられる とともに、間もなく、大きな転換が起きることも予想されるのである。
そして、本格的な「金融大混乱」が発生し、「金融の焼け野原」のような状態になった時に、「対立の恐ろしさ」が理解されるとともに、四番目の「私利 私欲を離れる徳」を持つ人が増えることも想定されるようである。具体的には、「他人からの称賛」や「自分の利益」を忘れて、本当の「忘己利他(もうこり た)」を実践できる人のことだが、これから想定される「金融大混乱」については、「神様」となった「お金」が、「普通の人」になるほどの「意識変化」を引 き起こす可能性があるものと考えている。(2014.4.7)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion4886:140612〕
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